今まで私のファッション・レッスンをたくさんの方が受けてくださいました。
そして、皆さんのワードローブを拝見してきました。
その中で、ほとんどの人の悩みは同じであるとわかりました。
その悩みとは、服はたくさんある、けれども着るものがない、ということです。
ほとんどの人が、たくさん集めた服を前にして、
どうしていいかわからない状態でいます。
捨てるほどはいたんでいない。
もちろん、それほど古くない。
着た回数も少ない。
そんな服がたくさんあります。
しかし、たくさんあるにもかかわらず、着るものがないと感じる。
これは本当の意味で、着るものがないというわけではありません。
正確に言えば、コーディネイトできないということです。
ワードローブは野球のチームに似ています。
アイテムにそれぞれ決まった役割があって、それにふさわしいメンバーを集める必要があります。
ふさわしいメンバーがそろって初めて試合ができるのです。
けれども、皆さんのワードローブを見ていると、
同じような種類のピッチャーをたくさんそろえていたり、
そうかと思うと、キャッチャーがいなかったりと、
チームとして機能できない状態です。
そして、実際には試合に出ない、二軍、三軍の選手ばかりがたまっていきます。
野球のチームと同じように、二軍、三軍の選手も面倒を見なければなりません。
少なくとも、ワードローブの片隅に場所を用意してあげる必要があります。
人間と違ってお給料を出す必要はありませんが、
それでもメンテナンスにはお金がかかります。
二軍、三軍の選手はしょせん、試合には出れません。
持っているだけです。
そして、その持っているだけの二軍、三軍がどんどんふえていきます。
私たちは洋服と契約しているわけではないので、
いらないという決定は自分でくださなければなりません。
洋服と交渉する必要などないのです。
それなのに、なかなか捨てられません。
ここから抜け出すには、まずワードローブをチームとして考えること。
好きだからといって、ピッチャーばかり集めないこと、
どうでもいいからといって、キャッチャーを無視しないこと、
そしてすべての選手が力を発揮できるよう、
相性のいい仲間、つまり、コーディネイトできる仲間をそろえることです。
そのために、アイテムの数、色などを最初から決めて、
そして服を集めます。
野球の選手のスカウトマンも、一目ぼれで選手を選びません。
服も同じです。
一目ぼればかりで選んだ選手は、当たり外れが大きいからです。
(もちろん、すべての一目ぼれを否定はしませんが)
ここまでやるだけでも、ワードローブはかなりすっきりしますし、
無計画に買い物をすることもなくなります。
内野手を探していたのに、外野手を連れて帰ったなどということもなくなります。
けれども、本当はこれだけでは解決しません。
なぜなら、それだけでは持っている二軍、三軍の選手を手放せないからです。
他人の目から見ると、それは明らかにいらないものなのです。
ものとしては、そう見えます。
しかし、持ち主の目からは、そうは見えないようです。
捨てられないものは、単にものではなく、そこに思いや感情がはりついているからです。
そして、本当に捨てられないのは、その思いと感情なのです。
明らかにいらない服がある。
けれども、捨てられない。
もしそうだとしたら、自分自身に問うてみてください。
捨てたくない理由は何なのか。
持っていることのメリットは何なのか。
捨てようとすると込み上げてくる、その痛い思いはどこからやってくるのか。
それを持っていると安心なのか。
それを捨てないという自分は、本当のところ、どうしたいのか。
そして、もしその答えが見つかったとしたら、
その思いを手放しましょう。
胸のあたりにぞわぞわと上がってくる、その気持ちを認めて、
それから、ありがとうとお礼を言い、
さよならしましょう。
もしかして、その服を持っていることで、自分は安心できたのかも、
もしかして、その服を着ていてほめられた思い出が忘れられなかったのかも、
もしかして、両親が買ってくれたものだから、罪悪感で捨てられなかったのかも、
もしかして、初めてもらったお給料で買った服なので、思い入れがあるのかも。
本当に捨てられないのは、服という布ではないのです。
本当に捨てられないのは、その服を見ると胸の中に浮き上がってくる、
ざわざわとした気持ちです。
その気持ちを手放さない限り、捨てられません。
手放せない気持ちはやがて執着となり、
人生を停滞させる原因となります。
それがよい思い出だとしても、同じです。
手放しましょう。
それは自分しかできません。
ほかの人がいくら言っても、その思いを手放せるのは自分だけです。
手放すことに成功したら、
人生が動き始めます。
もうこの先は通行止めだと思っていた道を通り抜けられます。
しまっていると思い込んでいた扉が開きます。
捨てられない服とは、あなたの人生に立ちはだかっていた、
あなたが自分で作った、壁だったのです。
壁は壊せます。
自分で自分にかけた魔法です。
そうであれば、とくことだって、自分でできるのです。
やってみてください。
それは驚くほど簡単なことです。