今日は基本に戻って、襟の形についてです。
すべてのトップスには、襟ぐりがあり、何らかの処理がされています。
それらは大体、以下のように分けられます。
ノ―カラー、
シャツカラー、
テイラードカラー、
フラットカラー、
スタンドカラー、
ロールカラー
などです。
そのほか、ニットの場合はタートルネックが入ってきますし、分類できないデザインされた変形襟もあります。
襟の形によって、与える印象が変わってきます。
まずはシャツカラーです。
台襟があり、その上に襟がついているものをシャツカラーと呼びます。
台襟だけのものをスタンドカラー、
台襟がなくて、身ごろに直接、襟がつくものをフラットカラーと呼びます。
シャツカラーは、その名のとおり、シャツの襟の代表です。
まれに、一重のジャケットなどでもシャツカラーのものもあります。
印象は、かちっとした感じです。
おもに男性がスーツのジャケットの下に着るのが、このシャツカラーのシャツなので、
似たような印象を与えます。
ですから、カジュアルなシャツ、たとえばチェックのフランネルシャツなどにシャツカラーがついている場合も、カジュアルでありながら、どこかきちんとした感じが残ります。
それは一種の固さでもあります。
それに対して、フラットカラーは、台襟がない分、ずっとやわらかく、幼い印象です。
というのも、フラットカラーの代表は、幼稚園児がよく着る白い丸襟のブラウスだからです。
フラットカラーがつくと、シャツというより、ブラウスという感じになり、
フェミニンなイメージになります。
そのため、フラットカラーのシャツというものを、男性はほとんど着ません。
(ごくまれに、受けを狙って着ている人もいます)
台襟のみのスタンドカラーは、どちらとも言えない印象です。
日本でしたら、男子中学生の制服の学ランを思い浮かべるでしょうし、
マオカラーと呼ばれる、アジアン・テイストのジャケットもその代表です。
(マオは毛沢東の毛ですから)
女性がマオカラーのジャケットを着たら、男性っぽいとか、女性っぽいというより、エキゾチックな感じになるでしょう。
また、コック服などもスタンドカラーですから、制服のような感じもします。
ロールカラーという襟は、首のまわりをくるんと巻くように作った襟で、50年代、60年代のコートやジャケットに多くみられました。
そのため、ロールカラーのものを着ると、どことなくレトロな雰囲気をかもしだします。
これももちろん、女性しか着ません。よって、仕事着という感じもしないです。
実用的ではない、おしゃれ用という感じでしょうか。
きちんと見える感じの代表はテイラードカラーです。
ただ、やや仕事向けの印象もあります。
それは男性のスーツ・スタイルのほとんどがテイラードカラーであり、
女性のテイラードカラーのジャケットも、それに模して作られているからでしょう。
これは、男性っぽいスタイルの代表であり、
それを着ることにより、女性の中の男性性が表現されます。
テイラードカラーの前あわせを深くすると、ダブルになり、トレンチコートに多く利用されます。
ダブルにすることによって、襟が大きくなり、よりいっそう行動的な雰囲気になります。
それはやはり、ダブル前のトレンチコートやピーコートがもとは軍服だったことに由来するからでしょう。
最後にノ―カラーのジャケットです。
ノ―カラージャケットは、襟の中で最もノーブルに見えるものだと、わたしは思います。
シャネルジャケットに代表される、襟のない形のジャケットやコートは、
襟がないがために、よりエレガントに見えます。
それはやはり、襟があるために強調される、男性性の部分を取っ払ったからでしょう。
襟をなくしたことにより、攻撃的な感じが一切なくなります。
優雅さとは、攻撃しないということなのです。
ですから、女性ならではの気品と優雅さを表現したいときには、ノ―カラー、つまり襟なしのジャケットやコートがおすすめです。
そのほかに、デザインされた、どれにも分類できない襟もありますが、
それは特殊な例なので、ここでは取り上げません。
それらは、個々によって、印象が変わってくるでしょう。
ジャケットやコート、シャツやブラウスを選ぶとき、
襟の形に注目することで、自分がどういうことを表現したいかを決められます。
案外、無意識に、何となくこれがいい感じという具合に選んでいると思いますが、
もっと意識的に選べば、自分を表現する幅が広がり、与える印象をコントロールできます。
その中でも、襟は特に女性っぽさ、男性っぽさがあらわれるところ。
今の自分は女性性、男性性、どちらを強調したいのか、
また、どちらを補いたいのか、襟を使って演出できます。
今まで男性っぽい襟のみを選んでいたのなら、フェミニンなものにチャレンジしたり、
逆に女性っぽい襟ばかりだとしたら、たまにはテイラードジャケットを選ぶのもいいでしょう。
女性であろうと、男性であろうと、1人の人間の中には男性性、女性性、両方存在しています。
そして、その両方のバランスをとる必要があります。
どちらかに偏ると、支障が生じてきます。
現在、女性たちは、過剰に男性性を要求される社会に生きています。
テイラードジャケットを持っていない女性は、もはや少数派です。
けれども、それはやはり偏っているのです。
偏りによる弊害が、いろいろなところで見受けられます。
いまいちど、自分のワードローブの中で、どういう形の襟が多いのか、チェックしてみてください。
そして、それは何を意味するのか、考えてみてください。
無意識のうちに行った襟の選択が、どんな偏りを生みだしたか、または偏りなどなく、バランスがとれいてるのかわかります。
襟は、そのことを知る、1つの指標なのです。