世界じゅうのおしゃれと呼ばれている人たちには、
それぞれ独自のスタイルがあります。
流行を取り入れつつも、自分のスタイルは貫き通す、
それがほんとうのおしゃれな人たちです。
流行のもので身を固め、いつも違うスタイルであらわれるのは、
単なる自己顕示欲のかたまりの強い、ファッション・ヴィクテムです。
ある程度、おしゃれの基礎がわかって、上達してきたら、
次の段階として、スタイルを模索することをお勧めします。
しかし、自分のスタイルを確立するためには、
一朝一夕にはいきません。
いろいろなスタイルにチャレンジし、
数多くのばかばかしい失敗をし、
何となく違う感じを修正し、
思ったとおりのものがなければ我慢して、
あきらめずにさがしつづける。
それを何年も繰り返して、やっと自分のスタイルを見つけることができます。
スタイルを確立するために必要なのは、
まず第一に自分自身をよく知ること。
それは自分の体型や肌の色といった、物理的な問題もそうですし、
好みや嗜好、目指す方向といった、
目に見えない部分もそうです。
自分自身を理解しないことには、自分のスタイルは確立しません。
無意識に選ぶ色、形、スタイルは、なぜそうなるのか、
そして逆に選ばないのはなぜなのか、
どんな格好をしているときがリラックスできて、自分らしくいられるのか、
または、なにを着るといらいらするのか、
居心地が悪くなるかなど、
一つ一つ自分に聞いて、チェックしていく必要があります。
その答えは、自分にしかわからないので、
誰かに聞くわけにはいきません。
どんなに人に勧められても、だめなものはだめです。
いつも着たいと思えないようなものばかり集めても、
自分のスタイルにはなりません。
これは、ときには自分にとってつらい場面もあるかもしれません。
否が応でも自分に向き合うことで、
自分の欠点にも気づくでしょうし、
見たくなかった面を見ざるを得なくもなるでしょう。
しかし、欠点を長所に、
見たくなかった面を新しい気づきとして受け入れることによって、
より新しい、自由な自分に出会えます。
そして、その自由な自分が、より自分らしく、自由でいられるためにスタイルを確立するのです。
ひとたび、これこそがわたしのスタイルだというものがわかったなら、
そのあとの洋服選びは簡単になります。
どんなに流行していても、自分のスタイルでないものは着ない、
心を動かされないと決めたなら、迷うことはありません。
ただし、同時に注意しておいてほしいことがあります。
何事も変化しないものはありません。
変化こそが、変わらぬ世の中の真理です。
自分の体型や容姿も変わるでしょう。
気持ちも変わるでしょう。
背景としての社会も変わるでしょう。
そして、もちろん流行も変わります。
スタイルの完成は、実は永遠にないのです。
それは、いつでも未完成であることによってしか、
変化には対応できないからです。
90パーセントはスタイルを確立しつつ、
常に10パーセントの余地を残しておく。
そうすることで、自分やファッションの変化に対応していく。
このバランスがちょうどいいところにとれたときに、
そのひとはスタイルがあり、かつ時代と合っているおしゃれな人になることができます。
柔軟性がないことは、やはりおしゃれではありません。
そこには好奇心のかけらが見えません。
変化し続けるものに対する好奇心と、
変わらぬものに対する自信、この2つが必要です。
いつでも変わる準備をしつつ、
永遠に完成しないスタイルを模索する、
かたいようで、しなやかに、
流れにのりつつ、流されず、
最終的な進化の地点まで、
あきらめずにさがし続ける、
そんな姿勢が、そのひとをおしゃれに見せるでしょう。
それはだれもが憧れる境地ではありますが、
たどりつけない場所ではありません。
その地点がはっきりと目に見えるなら、
必ずたどりつけます。
まずは、自分という地図の中をくまなく探検してください。
なによりも、それが最初の一歩です。
さがすのをやめないと決めればいいだけです。
決めさえすえば、実現します。