思えば、2000年以降、スカートにとっては受難の時代だったのです。
シルエットがタイトだった、2000年以降、
スカートは断然不利な立場に置かれました。
広がり、膨らみ、ボリューム、ひだ、ギャザーなど、
タイトとは反対の方向性を持つシルエットは否定され、
残されたのはタイトスカートや、ミニマムなシルエットのミニや台形スカートのみ。
何度か誰かが広がったスカートを提案しても、
なかなか認められず、結局はスキニーに、タイトに、無駄をはぎ落とし、
効率的に、余計なものは省かれました。
それは確かに時代の気分でした。
人々の無意識を支配した、大きな流れです。
誰も逆らえることができず、ただ、その無意識に、気づかぬままに従うのみ。
その無意識の気分と一致したテイストを持つデザイナーがもてはやされ、
一気に街はタイトシルエットで占領されたのです。
広がってはいけないのでした。
長すぎてもいけないのでした。
ギャザーなんてもってのほか。
プリーツも余計とみなされました。
男女間の性差が少なくなり、
女性のワードローブには、ほぼ男性と同じアイテムがそろうようになった現代においても、
スカートをはく男性は、特別な地域や場所を除いては、存在しません。
(まあね、スコットランドにはいるわよ。見たことあるわ)
しかし、ここで行きすぎたタイトの理想は破たんしたのです。
もうこれ以上、その先はなくなりました。
ぎりぎりにタイトなシルエットに、無理やり詰め込んだ、生身の肉体は、
その窮屈さに耐えられなくなりました。
究極まで短くされた、最小限の生地で作られるミニスカートも、
もうこれ以上、小さくすることはできません。
行きすぎたものが戻ってくる法則は、
ファッションにおいても成立します。
2013年、スカートは完全に復活しました。
長いあいだ、忘れ去られていた、あのボリュームが戻ってきました。
フレア、ギャザー、バルーン、プリーツ、
ふわふわと、ひらひらと、風が吹きつけたら、膨らんで飛ばされそうに、
スカート本来の姿が再び現れ始めました。
鳥かごから出てきた鳥のように、
スカートは羽ばたきます。
当分の間、この飛翔は止められません。
そんなわけで、スカートのバリエーションは復活です。
まず2013年の秋冬はフィット・アンド・フレアのシルエットを作るフレア・スカートが戻ってきました。
フレア・スカートがずっとなかったなんて、
今考えたら、ぞっとします。
女性の服飾の長い歴史を見ても、
ボリュームと長さのスカートがなかった時代など、ないのですから。
スカートのボリュームと長さはいつだって、
女性性の象徴なのです。
なぜなら、それは生み出す力だから。
フレア・スカートが戻ってきたら、
続いてプリーツ・スカートも、ギャザー・スカートも、マーメイド・ライン・スカートも、
次々戻ってきます。
長さも、ボリュームも、もう否定されません。
長いこと、スカートのレッスンは忘れさられてしまったので、
ここで再び勉強のし直しです。
全体で作るバランスとシルエットが変わります。
それは、もちろん、女性的でなければならないのです。
攻撃的ではなく、受容的です。
硬さではなく、やわらかさです。
歩き方も変わります。
優雅さを取り戻さなければなりません。
鏡の前で、一からやり直しです。
英語で言うところの「Lady」にふさわしい身のこなしが必要です。
しとやかで、思いやりがあり、礼儀正しい女性です。
それはこれまでの、粗雑で大雑把な、髪を振り乱して夜遅くまで、
食べず、眠らず、蛍光灯の青白い光の下、
肉体の欲求を無視して働いてきた女性とは違います。
そうです。絶対に違います!
眠り姫のように眠りつづけた、あなたの中の「Lady」が、
今、目覚めます。
新しい目覚めには、新しいスカートが必要です。
今まで忘れていたでしょう。
今まで気づいていなかったでしょう。
新しいスカートをはいて、力を取り戻しましょう。
死んでなどいないのです。
再び、新しい希望を見つけましょう。
それはきっと、見つかるはずです。