何事にも基本的なルールというものはあります。
ファッションに関して言えば、それは3色ルールです。
もちろん、すべてのスタイルが3色以内で構成されているわけではありません。
特に、若さ、ポップ、エステニック、ボヘミアンなどが流行っているときは、
多色使いが多く出現します。
若さ、ポップ、エスニック、ボヘミアンとは何か。
それはセンターではないということ。
つまり、エキセントリックということです。
しかし、シック、エレガントと呼ばれるスタイルは、
一時的に世間がポップやエスニックに流れようと、
結局は全体を3色以内で構成する、3色ルールに戻ってきます。
なぜならそれが基本だからです。
スタイルを3色以内で構成するとき、
3色の中の1色は、いわゆるさし色と呼ばれ、
基本的にはその他の2色より、小さい面積を占める色を指します。
それがどれぐらいの割合かと言われれば、
1割程度といったところでしょうか。
しかし、これも確固とした規則というわけではなく、
常に例外や変則が存在します。
それは、さし色にもかかわらず、その1色がより大きな面積を占める場合です。
そういうスタイルはだめなのかと言えば、
全くそういうことはなく、
かえって、ありきたりで、見慣れたスタイルを新鮮に見せ、
大きな効果を与えます。
具体的にどういうことなのか、以下、説明します。
例えば、紺、白、赤のトリコロールのスタイルの場合、
多くは赤がさし色となります。
いまだ、どういう色がさし色なのかわからない方がいらっしゃいますが、
基本的に自分が選んださし色のスーツやコートは買いません。
紺、白、赤の場合、赤のスーツやコートは買わないということです。
さし色として赤を考えるならば、
赤でそろえるのは靴、バッグ、マフラー、帽子、手袋など、
または洋服の一部に、ごく小さい面積、赤が使われいるものなど、です。
しかし、ここで通常のさし色の赤としての使い方を変えることは可能です。
靴、バッグ、帽子などの小さな面積だった赤のニットを着てみる、
もっと大胆な色遣いにしたいのなら、
コートとして持ってきたとしても、実は問題がないのです。
例えば、真冬には多くの人が、それは男女、大人子供問わず、
ネイビーやグレーのコートを着ます。
視界の中にたくさんの人が存在せず、
真冬の美しい街角にネイビーのコートは、決して似合わないということはないのですが、
それが集団となったとき、意味が変わってきます。
街角に一人だったときには素敵に見えたネイビーのコートが、
たくさんの中に入ってしまったら、
それはただ埋もれるだけで、特別おしゃれに見えなくなります。
集団の中にたたずむモデルのファッション写真というものはありません。
それはいつでも1人か2人か、せいぜい数えられる人数でしかありません。
しかし、私たちが住む世界には、それ以上の人たちが存在します。
渋谷の駅前の交差点に立ったならば、そのことがよくわかるでしょう。
その中で、さし色としてふだん使っていた赤をコートとして持ってくることには、
非常に大きな意味があるのです。
それははいわば、集団の中のさし色です。
同じように、ヴィヴィッドなピンクでも、あざやかな黄色でも、
その色のコートやニット、ドレスを着ることは可能です。
ふだんはさし色としてしか使わなかったこれらの色の面積を大きくする。
このことは、私たちが決して1人で生きているわけではないことを思い出させます。
ファッションは、1人では存在しないのです。
シーンがあって、
登場人物がいて、
照明が決まり、
着る人の意図や目的があってこそ、
最終的なスタイルが決定されます。
そのときに、そのさし色を生かしたいと考えたならば、
場合によっては、もっと大きな面積に使っても構わないのです。
おしゃれとは、誰かの間にまぎれて埋没することではありません。
それは、着る人を際立たせ、存在意義を確立する行為です。
大勢の中の1人になりたいのか、
一人の独立した存在として、世界に存在したいのか、
それを考え、選択するとき、
さし色の使い方も変わってきます。
普通でいたい、
常識から外れたくない、
目立たないで、
みんなと同じで、
仲間はずれにならないように、
そんなふうになりたいのなら、
あえて、さし色を大きい面積に持ってくる必要はありません。
しかし、もしそうでないのなら、
この世に自分は1人だけであると、
それを示したいのなら、
集団の中のさし色として、
それはやる意義があるのです。
真冬の東京の
イルミネーションが輝き、
たくさんの人が行きかう街角で、
誰かに見つけて欲しいのなら、
さし色の面積を広くしてみてください。
そうすれば、見つかります。
はぐれることはありません。
通行人の一人ではなく、
名前のある登場人物になりたいのなら、
さし色をさし色ではなく使うことをお勧めします。
そうしたならば、誰かがあなたのことを名前で呼ぶでしょう。
誰がやっても構わない、通行人の一人では、なくなるでしょう。
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