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2022年5月29日日曜日

あなたが買えなくなったときは

日本語では、生活全般についてあらわすときに「衣食住」という言葉を使います。
衣は衣服の衣、
食は食べ物の食、
住は、家全体を含めた住環境の住です。

この言葉を聞くと、衣食住の中では衣服の衣が最も重要性があるように思えますが、
実際に、そんなことはありません。
たぶん多くの人にとって、衣は生活の中で最も大事なもの、価値があるもの、お金をかけるべきものではないでしょう。

生活に最低限必要なのは、衣や食だけではなく、水道やガス、電気といったエネルギー、
そして移動のためのガソリン代や交通にかかる費用などがあります。

食べるものや、水道や電気、ガス、そして交通費は削りたくても削れないものであり、
それなしには生きていけません。

生活費が家計を圧迫するとき、手っ取り早く削ることができるのは被服費でしょう。
理由は、赤ちゃんでもない限り、もう既にある程度の服、靴、バッグを持っているからです。

さて、私は今まで書籍その他を通じて、お金をかけないおしゃれの方法についてシェアしてきました。

具体的にできることは以下のとおりです。

・セカンドハンドや古着を買う。
・誰かと服、靴、バッグをシェアする。
・誰かと服を交換する。
・リメイクする。

さまざまなモノの値段が値上がり、
可処分所得がふえないのなら、私たちは何か対処しなければなりません。
しかもかなりの本気具合で。

ここで浮上してくるのが「買わない」という選択肢です。
誰かから借りる、交換する、リメイクするの3点がそれに当たります。

同じものをいつも着ていると飽きてしまうのは人間の性なので仕方ありません。
飽きるあなたを誰も責めることはできません。
以前はその飽きを新しく何か購入することで解消してきた人も多いでしょう。
しかし、それができなくなった今、ほかの方法を考える必要があります。

誰かから借りる、あるいは交換するためには、
それができる相手が必要になります。
多くは家族、あるいは仲のいい友達がその相手になり得るでしょう。
サイズや好みが同じで、シェア、あるいは交換できそうな相手がいる場合、
まずは自分から提案してみてはいかがでしょうか。

もう一つのリメイクは、例えば丈を短くする、あるいは何か付け足すなど、
いろいろ考えられますが、普段から縫物をしない方にとっては、
少々ハードルが高いものになります。
それでも、家庭科の時間を思い出して、できる範囲で何かしらしてみるのは価値があることです。
幸い、洋裁に必要な道具も、材料も通販で簡単に手に入りますから、
どうせ捨てるしかないものがあるのなら、
長袖を半袖にとか、ワンピースをスカートになど、
長かったものを短くする、のように、
簡単なリメイクを試してみるといいでしょう。
短くするだけなら、接着テープで貼るだけでもできるので、縫物が苦手でもできます。

そうする過程で、多くの人が気づくでしょう。
たくさんあるように見えた服なのに、
新しいものを買えなくなったとき、何も着るものがないと感じるようになるのか、と。

それは、新しさだけに価値がある、
生鮮食料品のようなものを買い続けてきたからです。
トマトやりんご、お刺身は数日たてば、腐って「食べられない」ものになります。
それと同じように、新しさだけに価値がある服、靴、バッグは、
ほんの半年、あるいは1年で、鮮度がなくなり、
気分的に「着られない」ものになります。

結局のところ、
最もお金がかからないのは、
長く着られるいいものです。

いいものとは素材、縫製、パターンがよく、
年月に耐えることができるデザインのものです。
それは雑誌に載っている「今年のマストアイテム」のように、新しさにだけ価値があるようなものではありません。

何回もの洗濯に耐え、
着ていてほつれることなく、中から見ても丁寧な始末がされていて、
着ていると、自分のスタイルがよくなったのかと錯覚するほどのパターンで、
もう何年も着ているのに古臭さを感じないデザインのもの、
そういうものを常日頃から探し出して、集めていくこと。
そういったあなたのチームのような服、靴、バッグがあれば、
買えない時期も乗り越えることができます。

いいものは、買う当初は少々お値段が高い可能性はありますが、
最終的には、こちらのほうがお金がかからないのは、
私が長年、観察をしてわかった結論です。
この結論は、それに気づいて何年もたった今でも変わりません。

同じ失敗を繰り返さないために今できるのは、
工夫をして、買えない時期を乗り越えつつ、
未来の自分のために、
 困ったときにあなたを助けてくれる、信頼できるバディのような、ワードローブを構築することです。

※お金をかけないでおしゃれをする詳しい方法については拙著『お金をかけずにシックなおしゃれ 21世紀のチープシック』KADOKAWAをごらんください。