実際は、今急に始まったことではありません。
それは徐々に、しかし確実に進んできました。
社会保障費や税金はふえるのに、
収入がふえないという状況が進んだ結果、
被服費は大幅に削られました。
そんなことはお構いなしに、
2000年より前の時代に比べて衣料全体の生産量はふえました。
単価の安いものが大幅にふえ、購入枚数も、
1枚の服を着る回数も減りました。
参考はこちら。
もう一つ、2000年より前とは大きく変わったことがあります。
それは情報量です。
インターネットが一般にも広まる前は、
アパレル業界以外の人がファッションに関する情報を得るには、
店舗を見に行くか、雑誌を買うかのどちらかでした。
コレクションを見に行けるのは、バイヤーや得意客、ファッション誌の編集者ぐらいのもので、それ以外の人が見られるのは、テレビ番組で紹介されるほんの数秒程度のものでした。
また、知り合い以外のほかの人が何を着ているかについても、
雑誌の「読者モデル」や「ストリートスナップ」コーナーでしか知ることができませんでした。
しかし誰もがインターネットに接続できるようになった以降は、
誰もが無料でこれらの情報にアクセスできるようになりました。
望みさえすれば。
自分で探すならば。
使えるお金、
買えるものはどんどん減る一方、
売られているもの、それに関するあらゆる情報は増大しました。
情報は触れません。
それは頭の中でイメージや言葉として存在しています。
しかしその触れないもので頭の中がいっぱいになり、
いつ何時もそれから離れられなくなりました。
その結果、起きたのが葛藤です。
私たちの、その頭の中にある情報があらわす服、靴、バッグのほとんどは、
自分では買えないものです。
頭の中は、買えないけれども欲しいものの情報であふれます。
それが日に日にふえていきます。
この葛藤が私たちをどこへ連れていってくれるのでしょうか。
これがドラマであるのなら、
葛藤から始まったドラマは、解決へ向かってエンディングを迎えます。
葛藤は、人生を動かす重要な感情です。
しかし、この情報過多による欲望の刺激、そして満たされない渇望感によって
私たちは創造的な行動ができるようになったでしょうか。
答えは周囲を見渡せばわかります。
行き過ぎた満たされぬ欲望は、私たちに絶望をもたらし、
行動する力を奪いました。
簡単な言い方をすると「どうでもいい」状態になりました。
たくさんの情報、
どんどん生まれる新しいブランド、
誰かがインスタで見せつけるあの服やバッグ、
そのほとんどが手に入らないのなら、
服なんてもうどうでもいい、暑さ寒ささええしのげるならば。
情報でいっぱいの思考には、自分なりの選択をするという小さな行為すら、
難しいものとなりました。
その結果、台頭してきたのが誰かのお勧めを選ぶ、
または誰かと同じものを選ぶという行為でしょう。
多くのショップ、多くのブランド、多くの服が売られれば売られるほど、
人々の着るものが同じようになるという現象が生まれました。
情報過多による葛藤で私たちが失ったのは自分らしい選択をする力です。
選べないので動けなくなりました。
まるでそれは選択する権利があるのに、棄権しているかのようです。
自分で選ばなければ間違いはないと、多くの人が思っているのかもしれません。
それでもその選ばなかった責任をとるのは自分です。
あなたの人生をかわりに演じてくれる人はいません。
選択の結果は回収しなければなりません。
問題は行き過ぎた葛藤です。
私たちはまだ「葛藤」が提示されるドラマの第1回目にいます。
今の状態が嫌ならば、ドラマの最終回を考え、それに向かって行動しなければなりません。
最終回での解決方法はいろいろ考えられます。
別れる(情報を断つ)
宝の地図を手に入れる(自分らしいおしゃれをする方法を習得する)
練習して試合に勝つ(目利きになるための訓練をして、買い物で失敗しない)
自立すると決める(失敗を恐れず自分で選ぶようにする)
などなど。
そうはいっても、今までこうやってきたのだもの、
そう簡単に動けないと思う人もいるでしょう。
それではヒントを差し上げます。
それは感覚です。
服や靴を触ったとき、着てみたとき、着て動いてみたときの感覚です。
感覚が弱まると、思考を正しい方向にコントロールできなくなります。
頭の中であれやこれや考えているだけの人よりも、
自分が好きなものを実際に試着してみる人のほうが夢を実現できるのです。
手を動かせば動かすほど、使えば使うほど、感覚は強化され、
知恵を授けてくれるようになります。
ハッピーエンディングのための最もふさわしい解決方法は、
その感覚が教えてくれるでしょう。
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