さて、パターンについていろいろ書いてきましたが、今日で最後です。
前回、日本人の立体感覚について書きました。
いきなり、西洋的な立体感覚を身につけるなど、無理な話だと。
では、と思いますね。
では、学べばいいではないかと。
そのとおりです。明治時代より、西洋画家を目指す若者はパリへ留学しました。
しかも国費で。
わからないなら、学べばいい、そして自分のものにすればいい。
これはまさにそのとおりです。
ではでは、現状はどうでしょうか。
残念な話ですが、日本におけるパターンナー(パターンを作る人です)の地位は、非常に低いです。
私が過去にいた、某一部上場アパレル企業においては、デザイナーこそ、パリへ視察などと称して、行ってましたが、パターンナーは、パリなどもってのほか、就業時間内に、街へ市場調査に行くことさえ許されてませんでした。
そればかりであらず、会社に置いてあるファッション雑誌を見ることさえも!
おまけに労働時間は長いですから、信じられないほど情報にうといです。
え、こんな服着てる人が作ってるの?と思うほど、妙な格好をしている人が会社に長く残っています。
残業しても残業代など出ませんから、着ている服は自分の会社で作った服。
当時はまだインターネットなど、整備されていませんでしたから、雑誌もだめ、外に行ってもだめとなると、こうなるしかありません。しかも、土曜日も休みでなし。日曜日は家で寝てるだけです。
当然のことながら、みんな30歳になる前にはどんどん会社を辞めていきます。
だって、こんな状態では、だれとも結婚できませんから!
まあ、これは大手の企業の話。
では、パリコレに出るレベルだったらどうでしょうか?
私は、ほんの一時期、この間、倒産してしまった某パリコレ参加デザイナーの下でチーフパタンナーとして働いていた人の代官山のオフィスでアルバイトしていたことがあります。
あら、素敵じゃないって、思いますよね。
まあ、確かに代官山のはずれですが、場所はふるーいアパートの一室。
その中に3人のパタンナーと2人のアルバイトがいて、場所がないものだから、アルバイトは部屋を出た外の廊下で仕事をさせられたりもしました。
しかも時期は12月。土曜日も休みではありません。
昼はもちろん、コンビニで買ってきたおにぎりです。
そこで働いているみなさんは、物質的にも、精神的にも貧しい暮らしをしていました。
絵や映画を見に行くとか、音楽を聴きに行くとか、読書とか、そういうものが彼女たちにはないのです。
1か月そこでバイトをしてみて、いただいた給料の額に、私はひっくり返りそうになりました。
たぶんマクドナルドでバイトしたほうが、数倍よい額でしょう。
代官山周辺のワンルームの家賃にさえならない金額です。
このときわかりました。
デザイナーブランドというシステムは、デザイナーにだけお金が集まるシステムなんだなと。
そのデザイナーの下で働いて20年たっても、こんなものなのだなと。
バイト代の安さもさることながら、社員旅行でハワイに行くからバイト代から旅行代を天引きすると、無理やり強要されたので、私は1カ月でそこをやめました。
なぜ、パリやロンドン、ニューヨークやミラノではなくてハワイ?
こんな感じですから、自分で学ぶ余裕もありません。
でもこれは、過去の話ですね。
今はもっとよくなってるかもしれないって、思いますよね。
最近、まだパターンナーとして働いている友達に現状はどうか聞いたところ、
今は企業内からパターンナーがどんどんいなくなっていて、全部下請に発注するそうです。
友達も独立して1人でやっています。
こう聞くと聞こえはいいですが、みんな1人でやってるので、だれかに教わるということは、もうないのです。
同時に、だれかに教えてあげるということもありません。
だれにも教わらない、だれにも教えない、こんな状況で、いいパターンができるわけ、ありません。
いつも言いますが、もちろんこれがすべてではありません。
いいところも、あるのでしょう。
もし、これを読んでいる方で、パターンで体型をカバーしたいわという方がいらっしゃったら、
迷わずインポートを選んでください。
日本の服の中から、そういうものを選ぶということは、砂の中から金を探すのと同等に、
いえ、それ以上に難しいことです。