1年を振り返るにはまだ早いですが、
それでも、ちょっと振り返ってみてください。
1年の間で、どんなシチュエーションが一番長く、そしてそのとき、どんな服装だったでしょうか。
(この場合、パジャマはちょっと脇に置きましょう。もちろん重要ですが)
私たちは、小さいころから、何かの目的達成のためにそのほかのことを犠牲にするのがよいことだと言い聞かされて育てられました。
受験に受かるため。
ピアノの発表会のため。
夢を実現するために。
ダイエットに成功するため。
結婚式のため。
そして、いつも、その目的が達成された、そのときのために用意します。
受験に受かって、入学式に着るための服。
ピアノの発表会のための服。
夢が実現したら買う服。
ダイエットに成功したら、着る服。
結婚式の日のウェディングドレス。
確かにそれは大事です。人生の中の大切な1ページです。
けれども、それらは、どれぐらいの時間なのでしょうか。
例えば、山頂を目指して山登りします。
私たちの人生も、いつでも何かを目指して登っているようです。
結婚式が終了しても、次は一戸建ての家を建てるという、次なる山頂があらわれます。
けれども、その目指した山頂には、一体何分いるのでしょうか?
山を登る、そして下る時間より、はるかに短い時間しか、山頂にはいないのでしょうか。
この季節になると、よくパーティーのための服が売り出されますが、
年に何回パーティーに出席するか数えてみてください。
パーティーは、あなたにとって、日常でしょうか。
もちろんパーティーが日常の特殊な人もいるでしょうが、ほとんどの人にとって、パーティーでない時間のほうがずっと長いはずです。
山頂にだって、そんなに長い時間、いることはありません。
それなのに、ついつい私たちは、その山頂のための服を用意し、
しかもそれを第一に考えて、お金をかけてしまいます。
それに比べたら、その他のずっと長い時間の日常のための服に、特別力を入れません。
けれども、何気ない、そしてずっと続く日常こそが、私たちの人生を作っています。
それをいい加減に扱ったら、人生を雑に扱うことと同じです。
毎日、きちんとした食事をとることが、あなたの健康を維持するように、
毎日、大切に考えられた服を着ることが、あなたの心の健康と、そして満足度を維持します。
それをおざなりにしてしまったら、人生の質が低下するのです。
自分が一番長くいる時間のための服を一番にすることは、つまり、自分を大切にすることであり、自分をケアすることです。
これはあなた以外の人にはできません。
あなたの体は、あなたしか面倒を見ることができません。
あなただけが一生付き合う体です。
その体を守る服を、もっと大切に考えましょう。
日常に着る服を、あなたが粗雑に考えれば、あなたの心と体も粗雑にそれにたえます。
どこへも連れていってはくれません。
あなたの心と体の声を聞けるのは、あなただけです。
心と体を守るために、洋服にもできることがあるのではないかと思います。
その心と体を守り続ける日常の服を、第一に考えてあげましょう。
そうすれば、体は深く安心し、それを根拠として、心に羽が生えるでしょう。
それは、「がんばれ」と自分で自分に言い聞かせることで産み出される力より、
もっと強くしなやかな力で、あなたを遠くまで連れていってくれるでしょう。