真夏の重装備といっても、日焼け対策ではありません。
この暑い季節、なにを足していけばおしゃれになっていくのかの話です。
暑くなるにつれ、着るもの自体はどんどん枚数が減っていきます。
それは日本ほど暑くないと思われる西洋でも同じです。
気温が高いので、冬のように、どんどん上に重ねていくには限度があります。
減らしていくことにより、服装はシンプルになっていきます。
トップス1枚とボトム1枚、またはワンピースといった具合に。
では、そこで終わりにするのが洋服なのかというと、
どうやらそうではなさそうです。
海外のファッション雑誌のサイトや、ストリートスナップのブログを見ていると、
日本に住む人々のごく一般的な真夏の装いとは何か違うと思えます。
彼らの真夏の装いをよく観察すると、
少なくなった服のかわりに、アクセサリー類がどんどん上乗せされているのがわかります。
上からいくと、
帽子、サングラス、イヤリング、ネックレス、ブレス(バングル)、腕時計、指輪などが、
フル装備されているのです。
真夏は真冬と違って、コートで重装備することができません。
しかし、それでは薄い布地だけを身につけることになり、
何か心もとなくなります。
それを補うかのごとく、身につけていくのが、これらのアクセサリーのようです。
そして、それをすることによって初めて、真夏の装いは完成します。
それは、薄い生地の服だけを身に付け、肌の露出がふえて頼りなくなった、
からだと気持ちを強化し、保護するのに役立ちます。
たぶん、この点についての、つまり何をもって装いというものが完成するかという点について、
日本には正確な情報が入ってきていないのでしょう。
日本でこれら全部を身につけていたら、過剰な感じに見えるかもしれません。
それはたぶん、まだまだアクセサリー使いという点において、
洗練されていないということで、これらすべてを身につけても、
過剰さを感じさせることなく、シックに見せるテクニックはあるはずです。
また、だんだんと大人になるにつれ、
重要視されるのも、このアクセサリー使いです。
夏の衣服は、実際のところ、よしあしが見分けにくいものが多いです。
2万円のTシャツと2千円のTシャツの差は、素人ではわからないでしょう。
実際、値段と生地のクオリティは一致しないので、
ある程度以上の高額なTシャツについては、見分けるすべはありません。
そうなったとき、上質な感じを演出することができるのはアクセサリーのみとなり、
その重要性が増すのです。
フェイクやメッキではない、本物のゴールドやプラチナ、
手の込んだ細工のジュエリーなどは、大人だからこそ手に入れることができるものですし、
大人でないと似合わないものです。
そして、それらを重ねていくことによって、子供とは違うTシャツやワンピースの装いが完成します。
それなしで、違いを生み出すのは、逆にかなり難しい技術となります。
日本では、まだこのアクセサリーを重ねていく技術が洗練されていません。
雑誌にある、撮影のための、その場限りのスタイリングも、
実際の装いのためには参考になりません。
また、本物のアクセサリーやジュエリーを集めるのも、一朝一夕ではいきません。
ましてや、それが自分のために作られたものと思えるものを集めるには、
何年もかかります。
簡単ではありません。
しかし、チャレンジする価値はあります。
真夏の平均気温がどんどん高くなる日本では、
ある一定以上の気温になると、一気におしゃれから遠ざかる装いに傾きます。
それはもちろん仕方のないことです。
おしゃれより暑さ対策が重要な時期は、もちろんあります。
それでもなお、たとえば高級なレストランを予約して食事に行くときや、
コンサートや観劇、リゾート地のホテルへ宿泊するときなど、
ワンピースにサンダル、バッグだけで装いを完成させないで、
今まで身につけていなかった、何かを付け足してみてください。
ひとつ付け足したら、またもう一つというふうに、
どんどん付け足していきます。
そして、試行錯誤する中で、自分なりのぴったりのバランスを見つけていきます。
自分らしく、しっくり感じることができるかどうかをチェックするのです。
それらは明らかに不必要なものです。
機能的でもありません。
役にも立ちません。
ときには邪魔にさえなります。
それでもきっと、
それらはあなたの体を守り、心を支えるのです。
こころもとない、ひらひらした薄いシフォンのドレスのすそを、
海風がひるがえしたとしても、
腕に光る、そのシルバーのバングルが、
それでも大丈夫だと思わせてくれるのです。
知らない誰かから、心ない言葉を投げかけられたり、嘲笑されたとしても、
胸に光る、そのターコイズのペンダントが、
それらの言葉を跳ね返すのです。
だから、それらは真夏の重装備なのです。
重装備なしでどこかへ出かけて、疲れて家に帰ってくるよりも、
いつも大丈夫だと思える装備を備えて、お出かけしましょう。
そのほうが、きっと夏の思い出も楽しいものとなるに違いありません。