サンダルは履物の中では、もっとも原始的なものです。
底と、それをつなげるバンドやひも状のものから成り立ち、
ヨーロッパでは、古くはギリシャ時代の彫像に見られますし、
アジアであるならば、日本のわら草履のようなものがあります。
これら、素材は違いますが、
底と、それをつなぐバンドやひも状なものからなるという構造は同じです。
このサンダルですが、2つの方向へ向かって発展していきました。
実用的なものと、そうでないものです。
実用的なものは、ビーチサンダルや健康サンダルに代表される、
フラットなヒールに簡易なバンドもの、
そして、実用的でないものは、イブニングドレス着用時にはかれる、
ヒールが細く高く、豪華な装飾がなされたものです。
しかし、この2つとも、あまり正統な履物とは認められておらず、
たとえば、スーツにサンダル履きというスタイルは、
特に男性においては、よしとされません。
歴史的に古く、世界中の極寒でないどこの地域にも存在し、
スタイルもさまざまなサンダルですが、
洋服の歴史において、その位置づけは、決して靴の王道ではありませんでした。
しかし現在、服の全体的なカジュアル化が進み、
それに伴って、今まで禁忌とされたサンダルが、
どのようなスタイルにも取り入れられるようになりました。
たとえば、底に太めのバンドが2本わたっただけの健康サンダルスタイルのサンダルですが、
今ではこれをドレスにもスーツにも合わせようという提案が、
デザイナーからなされるようになりました。
また少し前からは、ビーチ・サンダルがビーチではなく、
街用の履物として認められ、簡素なものから、
ビジューがついた少し装飾的なものまで、
どんなスタイルにあわせても、
「おかしくない」とみなされるようになりました。
底が厚かったり、薄かったり、
装飾がされていたり、されていなかったりと、
デザインのディテールに多少の差はありますが、
サンダルのデザイン自体は、昔からそれほど大きく変化していません。
変化したのは、サンダルのデザインではなく、
その位置づけであり、スタイリングの仕方です。
その人のスタイルがおしゃれに見えるかどうかは、
必ずしも、その服や靴、バッグが新しいかどうかで判断されるわけではありません。
それはそのときの新しい時代の雰囲気が、
スタイリングからどれだけ感じられるかにかかっています。
もちろん新しい形やデザインの提案もありますが、
昔からあるもの、目新しくはないものでも、
新しいスタイリングとなって出てきたのなら、
それはおしゃれに見えるのです。
たとえば、ビルケンシュトックの2本のベルトがわたったスタイルのサンダルのデザインは、
もう何年も変わっていません。
もう何年も変わっていないから、これはおしゃれに見えないかというと、
そうではなく、
今ならこれを何と合わせるのか、ドレスなのか、スーツなのか、
靴下をはいて冬にはくのか、その組み合わせをどこに持っていくかが、
おしゃれに見えるポイントなのです。
見慣れない感じや、
目新しさがおしゃれに感じるのは、
スタイリングについても同じです。
まだ多くの人がやっていないときに、
いち早くそのスタイルを取り入れれば、
そのスタイリングはおしゃれに見えます。
それはデザイナー側からの提案のこともあれば、
ストリートから発信されることもあります。
もちろん、個人が自分の考えで、新しくスタイリングをしてもいいわけです。
ビーチサンダルも、ビルケンシュトックのような健康サンダルも、
細いヒールでビジューがついた装飾的なサンダルも、
どれも昔からあるデザインです。
それを今ならどうあわせるのか。
それを見つけて、すぐさま実行するならば、
それだけで新しいおしゃれは完成します。
履物の中では王道ではなかったサンダルですが、
現在、それをもはや邪道とは呼べないほど、
活用範囲は広くなっています。
女性の場合は華奢なサンダルをスーツに合わせてもいいし、
健康サンダルスタイルのサンダルをドレスに合わせてもいいのです。
素足で履くには寒い季節でも、ウールのソックスとあわせたサンダル履きで、
上着はコートにしたり、ダウンジャケットにしたり、
工夫次第で、いかようにもスタイリングできます。
今どんなスタイリングが新しく見えるかを知るにはどうしたらいいか。
それは、常に新しい情報に接することです。
発表されたコレクション、
海外の有名なファッション雑誌のスタイリング、
そのどれもが、ネットにさえつながれば、今は無料で手に入ります。
彼らはアイデアを無料で提供してくれているのです。
(本当はアイデアも、無料ではありません)
ですから、彼らが与えてくれる情報を、ありがたくいただきましょう。
そして、たまにはそんな無料で提供してくれる彼らに、
何か買うことによって恩返ししましょう。
そうでないと、一方的なエネルギーの取り込みでは、
エネルギーの循環は悪くなりますから、
どこかで大きな抜けができてしまいます。
今もうすでに持っているサンダルを見直して、
今年の夏はこれを何とスタイリングしたら素敵なのか、
妄想だけでなく、実際にコーディネイトしてみてください。
そしてそのスタイルで街へ出てみましょう。
必要なのは、自信と勇気だけです。