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2015年8月2日日曜日

スタイリングの新しい流れ(トランス、ミックス、レス、フリー)

一昔前のスタイリングの教科書を見てみると、
例えば、エレガンス、スポーティなどというように、
スタイル別に区分けされ、名前がつけられています。
それらのスタイルの境目はかなり厳重で、それらが混じり合ったり、
無視されることはありません。
スタイリングというものは、この区分けされた区分内のルールを守ることであり、
その中での完成を目指すものでした。

男女の境目も厳然と区別され、
それを超える人たちは、エキセントリック、すなわち中心にいない人や、
アバンギャルド、前衛の人、または単なる変人でした。

しかし、ここ数年のファッションの歴史の流れは、
この区分けされた境目を超えたり、
混ぜたりすることに関心を持つようになりました。
フェミニンにはマスキュリンを、
エレガンスにはスポーティをというように、
区分けされたスタイルで100パーセント完成することなく、
何か違う要素をミックスさせるスタイリングがおしゃれであると、
認識されるようになったのです。
その流れは今も続いていて、
そしてさらに進化しています。

実際のところ、男と女の境目は厳然としたものではありません。
特に女性は男性のスタイルを取り入れることに積極的で、
それはココ・シャネルが提案したボーイッシュなルックスや、
イヴ・サンローランのタキシード・スーツなど、
年代が進むごとに、男性が着るべきスタイルを積極的に取り入れてきました。

そのほかにも、
スポーツ・ウエアの日常着化、
エスニックやトライブと呼ばれる、
西洋とは異なった文化圏の装飾要素の取り入れ、
隠されるべきものであったランジェリーのアウター化など、
ファッションが進化するとともに、
今まであった境目を越境することに、
有能なデザイナーたちは腐心してきました。

その結果、当然のことながら、おしゃれに見えるスタイリングも変わってきました。

洋服のアイテムそのものの変化には限度があります。
何年たっても、スカートはスカートであり、
ジャケットはジャケットです。
シルエットの変化があるとはいっても、
それはタイトからビッグへ、ビッグからタイトへの繰り返しです。
いつでも新しいものを志向するファッションは、
その新しさをスタイリングに求めるようになりました。
それが現在です。

ポイントは、とにかく超えていくこと。
ジェンダーを超え、
民族を超え、
日常と非日常の境目を超え、
着られるものなら何でも取り入れ、
全体のスタイリングを刷新していく。

超えていくことは同時に、そこから自由になること。
男性はこうあるべきというスタイルから自由になり、
女性はこうあるべきであるというスタイルから自由になる。
スポーツウエアはスポーツのときだけしか着ないというルールから自由になり、
下着は見せてはいけないというルールを破る。

どんな文化圏に生まれようとも、
どこか遠い国の、見たことも、会ったこともない部族の衣装が好きならば、
それを取り入れ、
スカートの下は脚が出るというルールを無視して、
パンツをはき、
ドレスにウェリントン・フレームのメガネをあわせる。

図書館で見つけた、古臭いスタイリングのルールの本の指導を無視し、
境目を超え、ごちゃまぜにして、自由になる。
その組み合わせが、今まで見たことがないものになったなら、
それがおしゃれに見える。
現在、ファッションの進化はここまでやってきました。

これを普通の人がふだんのスタイリングに取り入れるにはどうしたらいいでしょうか。
まずは今まで、それとそれは合わせないと言われていたものをあえて組み合わせてみること。
見慣れた、その組み合わせから離れること、です。

シルクのドレスにスウェット地のパーカー、
パジャマのようなシャツにタイトスカート、
レースのキャミソールにランニング用のトレーニング・パンツ。
ロングドレスにスニーカーとウェリントン・フレームのメガネ。
真冬にノースリーブニットと肘まであるロングの手袋などなど。
いきなり、唐突に組み合わせられ、
今までのルールから遠ければ遠いほど、
それはおしゃれに見えます。

これらアイテムの組み合わせのほかにも、
例えば、素材とアイテムの意外な組み合わせというのも、
今のトレンドの1つです。
レースのトレンチコートはその代表例。
同様に、レースのスウェットシャツ、
豪華な刺繍やスワロフスキーのクリスタルが縫いつけられたジーンズ、
トートバッグやスニーカーにスパングルなど、
それまでその素材でそのアイテムは作らなかったというものを取り入れるのも、
今の気分を表現するのに最適です。

今の時代が私たちに要求しているのは、
スタイリングでどれだけ冒険できるか、
どれだけ境目を超えられるかということ。
男女の境も、
国の境も、
年齢の境も、
そんなものはしょせん幻。
今、それが着られるということ、
着たいということ、その気持ちがあるならば、
それだけを頼りに、アクロバティックにアイテムを横断的に組み合わせ、
その中でバランスをとってみる、
おしゃれに見えるポイントを見つけてみる。
創意工夫のあらわれこそが、おしゃれですから、
今はまさにその腕が問われるところ。
何も考えてこなかった、
やってこなかったのだったら、
この新しいスタイリングをものにすることはできません。

考えてみる、
試してみる、
実行してみる、
変更してみる、
改良してみる。
新しいスタイリングはこの繰り返しで習得できます。

やるかやらないかは、
もちろん個人の自由です。
けれども、少しでもおしゃれになりたいのなら、
そして、停滞を拒み、進化し続けるほうを選ぶのなら、
新しいスタイリングにチャレンジするといいでしょう。
簡単ではありません。
けれども、やったらやったなりに、
それは誰かの心に届くでしょう。



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