既製服と呼ばれる大量生産品が作られるようになったのは1960年代です。
60年代から70年代にかけて、日本ではアパレル産業が発展しました。
それにより、家庭で、あるいはオーダーにより、個人のために一点ずつ作られていた洋服は、同じものが大量に作られる、いわゆる大量生産品となっていきました。
参照資料はこちら。
セカンドハンドとして手に入れられるものは、
主にこれらの既製服、あるいは大量生産品の靴やバッグとなります。
言うまでもないことですが、年数がたてばたつほど、
セカンドハンド品はふえていきます。
1980年代に、セカンドハンドの古着を買おうとしても、
それほどたくさんの中からは選べなかったでしょう。
また、古着屋といえば、アメリカやヨーロッパから輸入した古着を扱う店がほとんどでした。
しかし2020年代、状況はすっかり変わりました。
日本国内に古着を買い取る店舗もふえ、
手放す人も多くなりました。
その結果、膨大な量のセカンドハンドが売られるようになりました。
古着、あるいはセカンドハンドと聞いて、
それは単に誰かが着たお古であり、
くたくたで、着るのがやっとなほどのものばかりと考えている人も多いかもしれません。
しかし、実際はそんなことはありません。
古着、あるいはセカンドハンドの服や靴、バッグは、
必ずしも、今現在売られている新品のものよりもクオリティが劣っている、
というわけではないのです。
環境省が発表したこのグラフによると、
1990年代、日本では衣服1枚当たりの価格が6,848円だったのに対して、
2021年には2,785円になっています。
一方、2010年以降の供給量は1990年代の1.5倍から2倍です。
これが意味するところは、
ひとり当たりの年間購買枚数はふえているもの、1枚の単価は下がっているということ。
衣服はサービスではなくモノですから、
原材料や工賃その他がかかります。
原材料を下げて、クオリティだけを上げるということは、まずありえません。
クオリティが高いものを作るにはそれに見合った原価が必要です。
このことが意味するのは、今の人たちが買う1枚のクオリティは、
1990年代のそれよりもずっと下がっているということです。
特に下げてきたのは素材です。
1990年代は豊富にあったウール、コットン、リネン、シルクといった天然素材の衣服が、2000年以降、急速にポリエステル、ナイロン、アクリルといった化学繊維にとってかわりました。
化学繊維の素材であれば安く、品質が悪いとは一概に言えません。
もちろん中にはクオリティが高く、高価な化学繊維もあります。
しかし、単価が安く大量に生産される衣服のほとんどは品質の低い化学繊維で作られています。
1990年代の若者は、今よりもずっと単価も高く、かつクオリティの高い服を着ていました。
実はこの傾向は世界的なもので、日本だけのものではありません。
世界的に低いクオリティのアパレル製品が大量に出回っていったのがこの20年余りの出来事です。
しかしだからといって、クオリティの高いアパレル製品が存在しなかったのかといったら、
そんなことはありません。
それらは実際、存在し、売られていました。
しかし徐々にそれらの価格は上がり、
クオリティの低い安い製品との価格差が大きくなっていきました。
例えば、10万円台で買えたトレンチコートが、今では100万円近くになっています。
さて、ここでセカンドハンドです。
現在、出回っているセカンドハンド品は、古いものでは1970年代から、
新しいものでは、それこそ前年のものまでさまざまです。
また、大量に売られたものが大量に出回りますから、
セカンドハンド店によっては、ここ20年ばかりに大量に作られたクオリティの低いアパレル製品ばかりのところもあるでしょう。
私たちが探すべきなのは、そんなクオリティの低いものではありません。
セカンドハンドとして流通しているものの中には、
高価であったもの、大事に着られていたものが多く含まれます。
高かったものほど大事に扱うのは、世界中どこの人も同じです。
これら、そこそこ高価で、大事に扱われていた、クオリティの高いセカンドハンド品こそ、私たちが手に入れるべきものです。
理由は、現在、同じ価格ではそのクオリティのものを手に入れることはできないからです。
それはまさに玉石混交です。
私たちには、玉を見つける識別能力が必要になります。
素材やパターンで見分けるのが基本ですが、
それができないのなら、ブランドタグで識別してしまえばいいでしょう。
現に世界じゅうで、オールドセリーヌを探している人がいるぐらいです。
また、例えばフィービー・ファイロの時代のセリーヌであるとか、
マルタン・マルジェラ時代のエルメスなどというように、
デザイナーのアーカイブを探している人もいます。
セカンドハンドから何か選ぶときに問題があるとすれば、
それが現在のトレンドと離れすぎて、
古臭く見えるのではないか、という点でしょう。
それを克服するには2つの方法があります。
ひとつは、自分のスタイルを確立して、
トレンドとは関係なく、それを貫き、
自分のスタイルに合致したものを選ぶこと。
ふたつ目は、定点観測によりトレンドを把握し、
今のトレンドと変わらぬシルエットを持つアイテムを選ぶことです。
面白いことに、流行は繰り返されます。
定期的に70年代風、90年代風というときがやってきます。
観察していれば、トレンドがどこへ向かうのかわかってきますから、
そのトレンドに沿ったものをセカンドハンドの中から見つけ出せばいいでしょう。
セカンドハンド品だけを身に着けていたら、
誰かに古臭いと思われはしないかと心配している方もいるかもしれません。
古臭く感じるのは、主にシルエットと色の問題なので、
常に今の気分を把握しているか、
あるいは自分のスタイルを貫いていれば、その心配杞憂に終わります。
それよりも、セカンドハンドの中から素材、デザイン、パターン、縫製とも、
クオリティが高いものを着ているほうが、驚くほどに素敵に見えるのです。
これがいかほどのものなのかは、やってみた者でないとわからないでしょう。
まずは、よさそうなものが売っているセカンドハンド店を見つけましょう。
それがないのなら、自分が好きなブランドをフリマアプリなどを通して探してみましょう。
クオリティの低い、けれども価格が高いものにお金を使うぐらいなら、
同じ金額でセカンドハンドから最高のものを選ぶほうが、
ずっとおしゃれで素敵なルックが作れるのが今の時代です。
お金もかからず、サステナビリティに配慮したサーキュラーファッションの実践にもなる。
これほど最高なことはほかにないとは思いませんか?
※写真:1970年代のものと思われるイタリア製のランバンのコート。セカンドストリートで1700円でした。
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