一般的に、柄物の服や、
デザイン性の高い服は飽きやすいと言われています。
また、そんな服ではなくても、
あるとき、その服はもう飽きたと感じることがある人は、
多いと思います。
その「あるときは」、必ずしも決まった年数であるとか、
決まった回数を着たからではなく、
ふいにやってきます。
何の前触れもなく。
飽きてしまった服をよみがえらせるためには、
いくつかの方法があります。
まずは、少しその服を着るのをやめて、寝かせておくという方法。
余りにもしょっちゅうある服ばかり着続けると、
確かに飽きがやってきます。
そういうときは、一定期間、その服を着るのをあえてやめます。
そして、忘れたころに取り出してみると、
また新たな気持ちで着ることができます。
次に、その飽きた服をいつもの組み合わせではなく、
違うものと組み合わせて着るという方法。
知らず知らずのうちに、同じ服を同じ組み合わせで着ているものです。
それはその組み合わせが最も自分にしっくりくるからでもあり、
着やすいからでもあるでしょう。
その場合、服に飽きたというよりは、
コーディネイトに飽きたということなので、
そのコーディネイトを変えてみると、
それだけで気分は変わります。
また、流行っているものなどの場合は、見慣れたことが原因で飽きがきます。
私たちは、自分の服だけではなく、
同じ服、靴、バッグを持っている人を見るだけで見飽きていきます。
余りに流行したものが、すぐに嫌になるのはそのためです。
私たちは、ある一定量、目に同じ情報が入ってくると、
それ以上、受け付けなくなる性質を持っています。
ですから、街に出ればすぐ目に入るような、
はやりのものは極力買わないということも、
飽きないための方法です。
しかし、その「飽きた」ということの原因を深く見ていくと、
それは服のせいではないということがわかります。
私たちが本当に飽きているのは、自分たちの単調な生活です。
決まり切った日常で、
ハレとケの区別もなく、
土から離れ自然の変化も感じにくい生活を長く続けると、
私たちは飽きてきます。
子どものころのようにたくさんの行事もなく、
毎日は同じことの繰り返し。
自然のリズムを無視し、
エネルギーの動きが止まったとき、
私たちは何とかしてそれを変えようと、
無意識の領域から突き動かされます。
何も起こらない、変化に乏しい日常の中で、
服を買うという行為は、手軽にエネルギーを動かす方法です。
新しい服を買ってみる、
着てみるという行為は、それだけで小さな変化です。
変化こそが生きることであるにもかかわらず、
その動きを封じ、ゆがみのない毎日の中で、
服を買うという行為が、その代替品として発見されました。
けれども、新しく服を買ったところで、
本当の変化にはなりません。
動いたエネルギーも小さすぎます。
映画を見る、音楽を聞く、本を読むなど、
ほとんどの娯楽が受け身の中で、
服を買うという行為は、少しは自発的な行為ですが、
それだけではやはり足りません。
自分から自分のエネルギーを動かし、
変化を作っていかない限り、
私たちは、ほんの些細なことで、服に飽き続けます。
自分の持っているエネルギーを何かを創造するために使っている人たちは、
飽かずに同じ服を着続けます。
種をまき、球根を植え続ける園芸家も、
まだ見たことのないものを描き続ける画家も、
一瞬の動きの中に永遠を見出すダンサーも、
食材の組み合わせの完璧な味のバランスを探すシェフも、
服をとっかえひっかえ買う必要はありません。
なぜなら彼らは自分のクリエイティビティを発揮し、
服に飽きている暇などないからです。
自分の持っているエネルギーを十分に動かし、
変化のある毎日を送ったならば、
服の飽きにいちいち心を煩わされることはありません。
服に飽きて、
新しい服をまた買って、
そしてそれにまた飽きて、
そんな服ばかりがふえていくのが心底嫌ならば、
自分で自分に対して変化を起こす必要があります。
与えられたスケジュールをこなすだけの、
動きのない日々は人を腐らせます。
変わらないということだけがクリエイティブで、
生きている証です。
それは誰かが与えてくれるものではありません。
受け身の娯楽におぼれているだけでは、
そこからは抜け出せません。
着ている服を忘れるくらい没頭できる何かを、
私たちは探さなくてはなりません。
それができた暁に、
私たちは、カシミアのセーターの肘が破れるほど着続けた自分に気づくでしょう。
ダメージ・ジーンズを買う必要もなく、
はいているうちに、自然とジーンズは擦り切れていきます。
そして、日常から「飽き」はなくなり、
渇望感は消えていきます。
服が飽きたと感じたなら、
それは本当にその服が飽きたのか、
自分が自分に飽きているのか、
自問してみてください。
そのどちらが本当の答えなのかは、
自分のハートに聞けばわかります。
そして、どうすればいいのかも、ハートは知っています。
それに従えばいいだけです。
それは案外、簡単です。
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