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2012年5月28日月曜日

通販で服を買うときのポイント


今回はS様よりご質問いただきました。S様、ご質問ありがとうございました。


通販で服を買うときのポイントと注意点です。

実は私もかなり通販は利用します。
最初に始めたのは、前回の円高のとき。1995年ぐらい、でしょうか。
ファックスで海外の会社にカタログを請求して、それが送られてきて、それを吟味して、吟味して、
まずTシャツなんか買ってみたりしていました。
当時、利用していたのがガーネットヒルやアバクロンビー&フィッチ、それからシリリュスなど。
外国からダンボールが送られてくるのを、どきどきしながら待っていたものです。
あれはあれでとても楽しかったのですが、もちろん失敗もありました。

インターネットの検索サイトYahooを初めて体験したのは、その後、
妹と何かの展示会で幕張メッセへ行ったとき。
まだ利用の仕方や意味すらわからず、2人で展示のパソコンの前に陣取り、
いろいろ検索しまくっていて、ふと気づいたら、後ろにおじさまたちの人だかりが。
なんだか、すごい時代になったね、と思ったものです。

そして現在。通販サイトすべてを把握するのは不可能なくらい数多く、そして身近なものになりました。

洋服の通販サイトには大きく分けて3種類あると思います。
大手メーカーやセレクトショップのサイト、
ギルトやブランズ・フォー・フレンズなど、ブランド品を値下げして売るサイト、
そして、ものすごく小さなメーカーがオリジナルを売ったり、セレクトした商品を売るサイト、
だいたいこの3つのうちの、どれかに分類されると思います。

また利用する側の利点としては、
地方などに住んでいて買い物に行けないときの買い物として
ブランド物の値下げ品を安く手に入れる方法として
すごく小さなブランドのオリジナル品を買うため、
などではないでしょうか。

まずは、自分が何を目的として通販を利用するのか、考えてみましょう。
買い物にいけないからか、ブランドド品を安く手に入れたいからか、とにかくみんなが着ていないようなオリジナル品を探してなのか。

これが決まると、ネットで検索する方法も変わります。
もし決まった商品を、お買いものに行けないという理由で買うのでしたら、その商品だけを検索にかければよいでしょうし、ブランド品を安くという場合には、ギルトなどの会員登録して、定期的にチェックする、また小さい規模のブランドのものが欲しい場合、まずは自分のお気に入りのブランドやメーカーに出会うまでネットサーフィンする、などです。

さて、ここからが注意点です。
・通販の最大の欠点は実物を試着できないこと、です。
まずこの欠点をクリアするために、必ず返品可能なサイトを利用してください。
また、特定のブランドだけをねらうのでしたら、通販で探す前に、実店舗でサイズ感をチェックしておくという方法もあります。同じジャケットでなくても、ブランドでは同一の原型を使うはずですから、
大きくサイズ感が違うということは、日本においては、あまりありません。
(しかし、インポート物は、サイズ感がシーズンによって違うようです)

・サイトをよく吟味する。
これは先日発見したのですが、かなりあおって購買させる通販のサイトがありました。
品ぞろえは悪くはないのですが、とにかく数量限定、何分以内に売り切れなど、買うほうの心理をあおっています。また、ショップの評価を見ると、返品の対応が非常に悪いということもわかります。
冷静にお買いものできないようなところでは、買うのを控えたほうがいいでしょう。
ここでしかない、ということは、めったなことではありません。

・最初は少額の買い物からスタートする。
通販での買い物においては、商品のよしあしだけでなく、ショップの対応のよし悪しも問題になってきます。いくらいい品物を扱っていても、ショップの対応が悪ければ、すべて台無しです。
それを避けるためにも、最初から大物買いはやめておきましょう。
また、ショップの評価など、レビューがある場合は、チェックしておきましょう。

・通販において買う品物の限度額を設定する。
これは人によって違うと思いますが、失敗しても痛くない金額の上限を決めるとよいと思います。
たとえば1万円までとか、2万円までとか。その範囲内で決めて買う。
こうすることで、失敗のダメージも最小限にすませることができます。

・すぐには買わない。
ギルトなど、すぐに売り切れてしまうところでは無理なのですが、そうでない場合、欲しいと思っても、一晩二晩、考えてからにしましょう。通販のいいところは、衝動買いを防げるというところです。
何日かたったら、結局、どうでもよくなってしまうかもしれません。あせらずゆっくり考えましょう。

・ブランドのもとのサイトもチェックする。
セレクトショップなどで買う場合、そのブランドのオリジナルのサイトもチェックしましょう。今どき、ほとんどのブランドがホームページを作っています。ブランド全体の雰囲気なども、自分に合うものかどうかわかります。またときには、そのブランドのショッピングページで買おうと思ったものがセールになっている場合もあります。必ずチェックしてみてください。

・失敗した場合、あげることができる、または交換できることができる相手を想定しておく。
私の場合ですが、よく姉妹間で洋服の交換をします。着られないわけでも、悪い商品なわけでもないけど、何か違った、これはよくある話です。その場合、あげてもいいという相手を見つけておくといいでしょう。自分が先にあげておけば、それはひょんな形で返ってくることがあります。見返りを期待しないであげられる相手を見つけておきましょう。

以上、基本的な注意点です。

通販もなれてくると、だんだんこつがわかるようになります。
何事も、まずやってみることが大事です。
新しいことには失敗がつきものですので、恐れず利用してみてください。

「人生はかけ」、という映画がありました。(ケイト・ブランシェットがでていた「オスカーとルシンダ」)。
人生がかけなのですから、通販はもっとかけです。
だけれども、かけたから、それが失敗というわけではないのです。
実店舗へ行って、実物を見て、ちゃんと試着して買ったとしても、
着ないものは着なくなります。
1度、袖を通してみたにもかかわらず、自分にぴったりなものかどうか、ちゃんと判断できるわけではないのです。
これが人生の面白いところ。
飛び降りてみたら、そちらのほうがよかった、
やってみたら、簡単だった、
そんなことは、この世にごまんとあります。

このブログを見ているということは、ネットにつながっているということです。
パソコンやスマートフォンのモニターからつながる世界は、想像もできないほど膨大です。
アメリカから送られてくるTシャツの1枚が、あなたの世界観を変えるかもしれません。

通販のかけに失敗したからといって、その損失はしれています。
それよりもっと大きい損失は、1度もやってみることがなかった、ということです。
失敗を過度に叱責する社会にいる私たちですが、私たちには、失敗する権利さえあるのです。

Tシャツ1枚注文して、世界を広げてみましょう。
送られてきた箱を開けるときのわくわくした気持ちも、
思ったものと違ってがっかりした気持ちも、
体験してみましょう。
体験こそが、日々の時をつなぐ宝石たちです。

☆紙のカタログもまた楽し。写真は2000年のアバクロと、2012の春夏、ジョンブルのカタログ。アバクロのカタログの写真はブルース・ウェーバー。写真が素敵なので捨てられません。


2012年5月21日月曜日

アクセサリーが大きくなってきました

2012年に入って、シルエットが大きく変わってきましたと、以前、記事に書きましたが、
その速度は予想以上に早く、2012年5月に発表された、シャネルのクルーズ・コレクションなどを見ても、服のシルエット、靴、メイク(特に眉が太い)、アクセサリーが大きく変化しています。
やはり本当に実力があり、長く活躍するデザイナーというのは、
自分だけの好みやスタイルに固執することなく、この流れの変化を敏感にキャッチし、それを自分のデザインに落とし込むことができる人だと思います。
カール・ラガフェルドや、ミウッチャ・プラダなどは、その代表格だと思いますが、
日本のデザイナーたちが失速していったのは、まさにこの点であるのでしょう。
つまり、自分の固い殻に閉じこもり、それを他人に押し付け、そこから外へ出ようとしなかった、
ということです。

それで、今日はアクセサリーについてですが、
洋服のシルエットが大きくなったのに伴って、アクセサリーも大きくなってきました。
ファッションというのは、いつもバランスです。
今までタイトでミニマムなデザインが主流だったため、
アクセサリーも、どちらかといえば、小ぶりで、目立たないものが主でした。
コスチュームジュエリーと言われるような、大き目で、それ自体、デザイン性をもったアクセサリーは、
もうかなり長い間、たぶん14年ぐらい、ずっとクローゼットの片隅に、
肩身が狭そうにして、押し込まれてきていました。
しかし、今、俄然、その大きなアクセサリーに注目が集まっています。

デザインの種類としては、まずトライバルとかエスニックとか呼ばれている民族調のもの、
または1920年代のアールデコ風のものがでてきていますが、
このバリエーションは今後も広がっていくと思われます。

これは体格のいい方々にはビッグニュースです。
当たり前の話ですが、首元に、大ぶりのモチーフのアクセサリーを持ってくれば、
それはもう、あなた、顔は小さく見えます。
ベルトだって、太いほうがウエストはしまって見えます。
ファッションとは、トータルのバランスなので、実寸は関係ないのです。

私も文化服装学院の学生時代に、何度かフィッターという、コレクションの裏方のアルバイトで(学校から派遣され、武道館の楽屋とか行きます。なぜかいつも私はフィッターリーダー)、
たくさんいろいろなモデルさんを見ましたが、中には結構なボリュームの方もいらっしゃるのです。
だけれども、うまいことバランスよく服を着れば、まったくそれは気になりません。

実際の寸法はただの数字、ファッションが作るのは、印象です。

これからは、ゆったりしたドレープや、すそが広がるパンツやスカートに大ぶりのアクセサリーという
ファッションが楽しめる時代です。
私の予想では、これから10年ぐらいは大丈夫です。
ですから、10年の着用を見越して、大ぶりのアクセサリーの購入を検討したらいいのではないかと思います。つまり、少し奮発して高いものを買っても、これから10年ずっと使えるということです。

とりあえず今年、一番簡単に取りいれられるのは幅広のバングルです。
シンプルなTシャツやタンクに、バングルを追加するだけで、もう新しい風が吹きます。
これが今年からの気分です。
1つ注意点は、大ぶりで、デザイン性のあるアクセサリーは、
柄物と組み合わせるのは大変難しいということ。
可能なのは、そのブランドが最初から提案している組み合わせぐらい、と考えたらいいでしょう。
(たとえば、今期のプラダは柄物に大きなラインストーンのコスチュームジュエリーです)

おしゃれに見えるかどうかは、こういうときの対応によって変わります。
自分を中心に据えつつ、ほんの少しのスパイスとして、今の時代の気分を取り入れる。
だから、全部取り換える必要はありませんが、瞬発力は必要です。

新しいものを取り入れるときには、今までの自分に小さなひびを入れなければいけません。
ひびを入れることは、少しばかり怖いようにも思えますが、
その小さなひびによって、
ひよこが卵の殻を割って外へ出てくるように、
蝶がさなぎから出て変身するように、
新しい世界へ出会える可能性が広がります。
本当は、そんな固い殻なんて、ないほうが自由なんです。

☆写真はティファニーのカフブレス。素敵すぎ!

2012年5月14日月曜日

「白いTシャツこそ毎年新しく」とよく言われるわけ

よく雑誌や何かに、「白いTシャツこそ、毎年、新しいものを」などと書かれていますが、その理由については詳しく述べられていません。
今日はそのことについて書いてみたいと思います。

 白Tシャツを毎年買い替えたほうがいい理由は、2つ考えられます。

まず1つ目は物理的な問題。閲覧者
白いTシャツ、特に夏のTシャツはよく洗濯します。
洗濯することにより、生地はくたびれてきます。
また、洗剤による傷みのせいで、生地表面がざらつき、光沢やしなやかさが失われます。
古着のようなくたびれたTシャツが似合うのは、残念ながら、若い人だけです。
若い肌とくたびれた綿のコントラストは、独特の魅力を生みますが、
もう若くない肌に、光沢のなくなった綿では、くたびれ感が助長されるだけ。
これをカバーするためにも、洗濯回数の多い夏のTシャツは、新しいほうがよいのです。
また、白という色の特質上、どうしても前年の黄ばみが残ります。
ブリーチすればよいのですが、やはりこれも生地が傷みます。
どちらにしろ、くたびれた、傷んだ生地のTシャツは、余りお勧めできません。
(しかし逆に言うと、着用回数の少なかった、色もののTシャツなどはこの限りではありません。)

そして2つ目。
ほとんどの場合、こちらのほうが言われているのだと思います。
それは、「新しさ」の問題です。

Tシャツというごく普通のアイテムを、ハイブランドと言われるブランドでも作られ、売っています。
しかも、高価な値段で。
白いTシャツなんて、どこのスーパーでも売られているのに、なぜハイブランドが、法外な値段の設定をつけてまで作るのでしょう。
それには理由があります。
それは、前身ごろ、後ろ身ごろ、左右の袖だけのパーツでできた、単純なTシャツこそ、
その年の最も新しいトレンドを表現するのにふさわしいアイテムだからです。

私が文化服装学院の学生のとき、どうしてもコム・デ・ギャルソンが着てみたくて、
セールでTシャツを買ったことがあります。
その当時はお金がなかったので、セールと言えども、Tシャツぐらいしか買えませんでした。
見たところ、何の変哲もないTシャツです。
洋服を勉強している私が見ても、何がほかと違うのか、さっぱりわかりません。
しかし、そのTシャツを着て、鏡の前に立ってみたところ、
何とも言えない感動が、心に込み上げてきたのです。
ごく普通に売られているTシャツとの違いは、
それこそ、襟ぐり、袖の長さ、身幅、丈が数ミリしかないでしょう。
しかし、その数ミリの違いのバランスが、今、一番この形が新しい感じなのだということを表現していたのです。
前のものは死んだ、これこそが新しく生まれたもの、
そんな体験を、Tシャツ1枚着ることによって、することができたのです。
ファッションを愛している者たちが追いかけるのは、この「新しさ」の体験です。

ハイブランドで売られる今年一番新しいTシャツには、この要素が入っています。
これは「新しさ」の表現です。
ですから、毎年新しい白いTシャツを買い替えることは、自分がその新しさに入っていくことになり、
一部の人たちにとっては、それこそがおしゃれだと思えるのです。

この2点が、白いTシャツは毎年新しいものをと言われるゆえんです。

物理的な点は、私も賛成です。
やはり年齢とともに、あまりくたびれたTシャツは着ないほうがいいでしょう。
けれども、2番目の新しさについては、半分はそうだけれども、半分はどうでもいいこと、
だとも思います。
なぜかというと、その「新しさ」は、ファッション業界とは無関係な、ごく普通の一般の人たちにとって、
ほとんど意味がないし、その違いがわからないからです。
実際、買って着てみればわかるのですが、その「新しい」感じがわかるのは、全体の1割ほどの人です。
ほとんどの人にとって、その5ミリのネックのあきの違いなど、わかりません。
この5ミリの差をうんぬん言うのは、一種のマニアなのです。
マニア以外、わからないし、意味はありません。

それでも、「新しさ」の体験をしてみたい方は、どうぞ一流ブランドの今年の白いTシャツを買ってみてください。
それこそが、まさに新しいデザインです。
ただし、他人にそれを理解してもらおうとは期待しないこと。
それからもう一つ注意点。
いくら今年の新しいものでも、どこかのブランドのものをサンプルとして買ってきて、
それをそのまま作るような、泥棒デザイナーの作ったTシャツを買っても、まったく意味がありません。
そんなことをしている段階で、もう既に1年遅れています。
買うのなら、ちゃんとオリジナルのデザインを発信しているブランドのものを選んでください。
そうしたら、その年の一番新しい気分を体験することができるでしょう。
そして、もしそういうものを買ったら、
いくら高くても、どんどん着てしまうこと。
今年着ることに意味があるのですから、高いからといって、たまのお出かけだけに着るなんてことはしないでください。
もう来年はみっともなくて着られないわ、というぐらい着てしまいましょう。

「新しい」ということは楽しいです。
確かに1つのエネルギーです。
エネルギーを動かすと、テンションが上がります。
だけれども、「新しい」ものだけで作ったものは疲れます。
基底にずっと流れている音は、もっと静かでゆっくりです。
そして、たぶん、その静かでゆっくりがあるからこそ、「新しい」を楽しめるのです。
新しさのために、静かでゆっくりを壊さないでください。
いつだって、一番大事なのは、静かでゆっくりのほうです。



2012年5月7日月曜日

シンプル・ワードローブが与えてくれるもの





シンプル・ワードローブでも、ミニマム・ワードローブでも、どんな呼び方でも構いません。

つまり、数少ない厳選されたアイテムでワードローブを構築するということです。
当初の目的は節約ということでしたが、それ以外にも、
大変たくさんのものを私に与えてくれました。

私はこのやり方を、主義主張から始めたわけではありません。
最初から、少ないほうがよい、という考えで始めたわけではありませんでした。
ただ単に、経済的な理由からです。
たくさん買うことは、できないからです。

「チープ・シック」など、数冊の参考となりそうな本はありましたが、
どうやって少ないワードローブを構築するか、そしてそれをおしゃれに見せるかが書いてある参考書は、日本にはありませんでした。
ですから、仕方がないので、自分で工夫に工夫を重ねて作り上げて、今のやり方にたどりつきました。
(詳しい方法はラベルの「おしゃれのルール」部分をお読みください)

当初、お金がないから買えない、そのために始めたこの方法ですが、
振り返ってみれば、それ以上に多くのものを私にもたらしてくれました。

私はもう何年も、シーズンごとのセールというものに行っていません。
まだ学生のときや、アパレル会社に勤めているときは、
ここで買わなければ損とばかりに、セールに行っては買い物をし、結果的に、あまり役に立たないものを買ってしまったりもしましたが、今ではそういうこともありません。
(といっても、決してすべてのものを定価で買っているわけでもありません)
あのセールのときに感じる、妙な焦燥感というものが、今は全くないのです。

また、流行のものに、すぐ飛びつくということもありません。
自分のワードローブを見極めたら、流行だから着たいという気持ちは、まったく起きません。
流行よりも、自分らしいと思えることのほうが大事なので、これが流行だからといって、
安易にそれを自分のワードローブに取りいれたいなと思わないからです。
ですから、雑誌を見るときも、適度な距離感を持って見ることができ、
これはこれ、私は私と、別に考えることができます。

同時に、いわゆる「安物買いの銭失い」をすることがなくなりました。
長く着るものはそれなりの品質のものを買うので、長持ちすると同時に、心が満足します。
自分の本当に満足しているものばかりがそろっているので、
常に何かが足りない、何かが欲しいという状態にはなりません。

そして、自分の目の届く範囲、手入れできる範囲の枚数しかもたないので、
たくさん持ちたいという気さえ、起こりません。
セーターなども、全部、自分で洗うので、逆に、これ以上、枚数を増やすのは嫌なのです。

しかし、ただ枚数を少なくするのではなく、おしゃれに見える勘所はおさえるようにしているので、
私のことをよく知らない人から、「洋服、たくさん買うんでしょう。」と言われます。
これを言われるたびに思うのが、他人というのは印象しか見ていないということです。
よく観察すれば私が1年間を通じて同じものを着ているとわかるはずなのに、そのことに気付く人は、ほとんどいません。
おしゃれに見えるかどうかということと、枚数をたくさん持っているかどうかということは、明らかに別問題です。

欲望をコントロールしているつもりはありません。
けれども、結果的に、いつも何か足りない、何か欲しい、これでは満足できない、ほかにもっとよいものがあるかもしれないという欲望に振り回されることが、こと服に関しては、まったくありません。
いつかとか、どこかとか、ほかの何かとか、
ここにはないものを求めても得られない苦しみからは、遠く離れた場所にいます。

少ない枚数しかもちませんから、絶対妥協はしません。
妥協した選択の結果は必ず不満が残るということは、経験から知っています。

一枚一枚の妥協しない選択の結果、組み立てられたシンプルなワードローブが与えてくれるのは、いつも心が満たされない飢餓感ではなく、自由と安心でした。
自由と安心があれば、人は好きなところへ行けるのではないでしょうか。

スーツケース1つで自由に旅する旅人のように、多額な保険はかけなくても、
日常を旅するように過ごせる、
そんな自由は、 案外、簡単に手に入るのかもしれません。
そう、あなたが望みさえすれば。


☆写真はアメリカの現代美術家ジェニー・ホルツァーのTシャツ。あなたの欲望からあなたを守れるのは、たぶん、あなただけです。