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2016年7月4日月曜日

それでもボーダーを着たいあなたへ――おしゃれとは、芸


数年おきにボーダーが流行します。
私が覚えているところでは、80年代のアニエス・ベーのボーダーシャツ。
渋谷系のミュージシャンであるフリッパーズ・ギターの2人が、
ボーダーシャツにジーンズ、グッチのローファーというルックスで、
当時のおしゃれな若者のシンボル的な存在でした。

さて、このボーダーシャツ、いろいろな要素を含んでいます。
まず、デザインが単純で素材がカットソーのため、安価に大量に出回ること、
幅広い年齢の男女が着用すること、
長袖、半袖、また素材をニットに変えた場合、1年じゅう着用可能であること、などなど。
要するに、いとも簡単に「ありふれた」アイテムになってしまうということです。

では、このボーダーシャツ、おしゃれなのでしょうか、おしゃれではないのでしょうか。

ボーダー・シャツでまず思いだすのは、手足の長いシャルロット・ゲーンズブールの映画「なまいきシャルロット」での姿。
そして、ピエール・エ・ジル撮影のボーダーシャツ姿のジャン・ポール・ゴルチエ。
ボーダーシャツで猫を抱いているピカソの写真。
日本では、そろそろ70歳という栗原はるみさんが一生ボーダーシャツ宣言をしています。

ここに挙げた方々のボーダーシャツ姿がおしゃれかどうか問われたら、
それはそれはおしゃれで素敵です。

彼らの共通点は何でしょうか?
それは、日本語では唯一無二、英語ではユニークである、ということです。
安価に大量に出回るアイテムの場合、必然的に着用する人数もふえます。
そうすると、比べられるのはその着る人自身。
それは、容姿の場合もありますが、
それだけではなく、その人自身の場合もあります。
その点で、彼らがどんなにボーダーシャツを着たところで、
ほかの人とは「かぶらない」のです。
なぜなら、シャルロットはシャルロットだから、
ゴルチエはゴルチエだから、
ピカソはピカソだから、
はるみははるみだから。

例えば、おしゃれなパリジェンヌが持っているアイテムとして、
バイカージャケット、スキニージーンズ、そしてボーダーシャツが挙げられます。
パリジェンヌは、それを着るだけでおしゃれです。
それはなぜでしょうか。
なぜなら、それはパリジェンヌがパリの街角、またはアパルトマン、カフェというシーンで、
ボーダーシャツを着用するからです。
「パリジェンヌ」は、全世界の女性人口のほんの一部です。
それだけで、十分にもうユニークなのです。

このように、ボーダーシャツは、その人自身が誰もが認める唯一無二の存在であるとき、
そのおしゃれの潜在的能力を発揮します。
彼らは、その誰もが着るであろう平凡なボーダーシャツを着ることによって、
逆に輝く存在になるのです。

では、「誰もが認める唯一無二の存在」ではないとき、
ボーダーシャツはおしゃれなのでしょうか。
その答えは、おしゃれに見える場合もあれば、おしゃれに見えない場合もある、です。

よく観察すれば、
シーズンごとにデザインナーたちがボーダーシャツ、またはボーダー柄のおしゃれな提案をしていることがわかります。
グッチの前デザイナーのフリーダ・ジャンニーニは、ボーダーニットに「ビジュー」と呼ばれる、
クリスタルのボタン飾りを数個つけることで、ボーダーを刷新しました。
リビアナ・コンティのボーダーシャツは、ボーダーを途中で斜めに切り替えることによって、
視線をずらし、平凡から脱しました。
ゴルチエは、青白や、赤白ではなく、黄色と黒のボーダーを提案、
シャツではなく、タイツをしましまにしました。
ヴァレンティノは、ボーダーの幅を太くし、上半身はボーダー、スカートはストライプにして組み合わせることによって、カジュアルなイメージのボーダーをシックなドレスへと昇華させました。

このように、デザイナーたちは平凡で、ありふれたボーダーのイメージを工夫を加えることによって、アップデイトし、提案しているのです。

普通の人がただそのまま着たのではつまらないボーダーを、
そのまま出したのでは、芸がないのです。

芸がないものは、おしゃれとみなされません。

「誰もが認める唯一無二」がない私たちが、ボーダーをおしゃれに着たいのならば、
どこかに「芸」を足さなければなりません。
それは装飾の場合や、色の組み合わせの場合もあるでしょう。
あるいはタイツやスカーフといった小物で工夫する場合もあります。

では、その芸は具体的に何なのか、
これを読んでいる皆さんは、その答えをすぐに知りたがるかもしれませんが、
その答えは、皆さんご自身しか知りません。
なぜなら、皆さんは、誰もが知っているわけではないかもしれないけれども、
もうそれだけで十分に唯一無二だからです。
その唯一無二を作りだしているのは何なのか、
何を持って唯一無二なのかを知るのは、自分自身のみです。

自分自身の唯一無二を探してください。
それをボーダーのおしゃれに付け足してください。
それが芸の域に達したならば、
ボーダーを着ておしゃれに見えることは可能でしょう。
おしゃれとは、芸です。

☆シャルロットはシャルロットだからボーダーを着ておしゃれなのです。
「なまいきシャルロット」、何回見ても好きな映画です。


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