ページ

2012年4月2日月曜日

シルエットが変わりました



2012年の春を迎えました。
ここへきて、シルエットが変わりました。
ゆるやかな角を完全に曲がり切りました。
曲がりきった先には、新しい道が続いています。
この道は、まっすぐでもないし、横道もたくさんありますが、
決して戻ることはしません。
また、過去の景色と似たように見える箇所もありますが、同じ道ではありません。

ここ2年ぐらい、勘のいいデザイナーたちはずっと、この新しいシルエットを提案してきましたが、なかなか一般の市場はついてきませんでした。
けれども、ここへきて、一気に変えることに成功しました。

これまでの10年から14年間、服と体の間の空気は、どんどん抜かれていって、
スリム、タイトのスタイルが完成しました。
けれども、これからは、この服と体の間の空気の分量が変わります。
どんどんふえていくのです。

これは一見、80年代に流行ったビッグシルエットと似ているのですが、
同じではありません。
あのときは、硬く、四角いビッグシルエットで、大きな肩パットと接着芯の多用が特徴でした。
これから始まるのは、もっと軽やかで、ふんわりした布が、皮膚と距離感を作ります。
その空間は、ドレープ、フリル、ギャザーなどによって生み出されるものです。

この傾向は、おおよそ12年ぐらいは続くと思われます。
12年が過ぎたころ、次のトレンドが少しずつ入ってくるでしょう。
しかし、これから先12年は、このシルエットが主流になることは間違いないと、私は見ています。

さて、前にも書きましたが、一番、流行があらわれるのは、このシルエットです。
ですから、この新しいシルエットをまったく無視したスタイルをすると、
それは今度、流行遅れのスタイルに見えてくるようになります。
そして、この流行遅れのスタイルは、ふけて見えることの一因となります。

2012年になっても、いまだに黒く四角いビッグシルエットの服を着ている人たちを見かけます。私はそういう方々を見ると、ああ、80年代が青春だったのだなと思います。
自分が輝いていたと、自分で思っているその時期の服装を人はなかなか忘れられません。

私は、ファッション関係者でもない限り、すべて流行の服にする必要はないと考えています。
だからといって、余りに流行を無視し過ぎると、やはりそれは昔の人のように見えてしまいます。
これから新しい服を買う場合は、うまくこの次の12年続くシルエットのものを取り入れるようにしましょう。
それは全部そうする必要はありませんが、1点投入するだけでも、かなり見え方が変わります。

また、ここのところ、雑誌の表紙のモデルさん(この場合、日本人です)のヘアスタイルにショートが多くあらわれるようになりました。
思い起こせば、パステルカラーにフリルのドレスを着ていた80年代のアイドルのほとんどはショートカットでしたね。これは、パステルとフリルに重く長い黒髪ではバランスをとりにくいからです。

服のシルエットが変わってしまった今年を境にして、ヘアスタイルもメイクも変化していくでしょう。

過去の自分の栄光を、自慢げに誰かにしゃべったりする自分に気づいたら、要注意です。
その行為は、確実にあなたをふけさせます。
あなたがたとえ30代であっても、年をとった人に見えます。
80年代でも、90年代でも、2000年代でもなく、2012年を生きましょう。
いつも今の一瞬を生きていれば、昔の自分が選んでいたような服を選ぶはずがありません。
若く見えるか、年取って見えるかは、実年齢の問題ではないのです。
過去の自分に戻らない、常に今の自分を生きることが、年齢とは関係のない「若さ」であり、輝きです。

☆写真はボッティチェルリの「春(ラ・プリマべ―ラ)」。ゴッデス・ドレスは次にくるシルエット。