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2013年7月1日月曜日

キャミソールとタンクトップ


キャミソールとタンクトップは、ともに下着が原型のアイテムです。
しかし、この2つには大きな違いがあります。
それは、キャミソールがフェミニンであるのに対して、
タンクトップはマスキュリンである、ということです。 

同じノースリーブのトップスではありますが、
このフェミニンとマスキュリンという違いによって、
与える印象は違ってきます。
キャミソールを着れば女性的なイメージを、
タンクトップを着れば男性的なイメージを他人に与えることになります。

よく雑誌などにある「甘辛ミックス」のコーディネイトとは、
このフェミニンとマスキュリンを混ぜたもののことを言います。
甘いのはフェミニン、辛いのはマスキュリンというわけです。

もちろん、甘辛をミックスしないで、
甘いものは甘いまま、
辛いものは辛いまま、作り上げるコーディネイトもあります。
特にコンサバ・スタイルは、甘いものの中に辛さは混ぜません。
しかし、フェミニンとマスキュリンを混ぜることにより、
よりモード寄りのコーディネイトができ上がります。
そして、それはもちろんおしゃれ上級者のよくやるコーディネイトでもあります。

たとえば、レースやフリルを多用したフェミニン度合いの高いキャミソールには、
マスキュリンの色合いの強いものを合わせます。
例としては、キャミソールにジーンズや、ペンシルストライプのサマーウールのクロップト・パンツをあわせるなど、です。
そこで上着もテイラード・ジャケットをあわせれば、
マスキュリンの中にインナーだけフェミニンなキャミソールという組み合わせになり、
そのギャップがより女性らしさを強調します。

逆にタンクトップの場合、これにジーンズを合わせると、
ボーイッシュになります。
それは「ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ」のジェーン・バーキンのスタイルです。
マスキュリンの要素に1パーセントもフェミニンの要素を入れない場合、
着る本人がよほど女性らしさにあふれていないと、
単なる男子と同じ格好、となります。
そこで、 男子と同じ格好となるのを避けるため、
フェミニンな要素、いわゆる甘さを付け足します。
たとえば、タンクトップにティアードや白いレースのアンティーク風のスカートをあわせます。
ボトムがパンツの場合だったら、タンクトップの上に着るものをクロッシェ・ニットなどにします。
また、形は男性ものと同じだとしても、素材をシルクにしたり、
色をピンクなど、男性があまり着ないものを合わせてもいいです。
要するに、男子が絶対に着ないものをもってくればいいわけです。
そうすることによって、男子と同じ格好をまぬがれることができます。

レースやフリル、プリーツの飾りのあるキャミソールは、
そのままだと、やはり下着を連想させます。
その下着のようなキャミソールに、同じように甘いフリルやリボンのついたスカートでは、
少々甘すぎます。
「プリティ・ベイビー」のブルック・シールズのようです。
少女性を強調したい場合はそれでもよいですが、
大人というものは、女性性と男性性が統合されていく過程ですので、
すべて甘いと、大人っぽくはありません。
どなたかが、いい年になってもレースだらけの、パステルカラー服を着ている女性のことを、
「レースおばば」と呼んでいましたが、
やはりそれはどこか気味悪いものなのです。

フェミニン100パーセントでも、マスキュリン100パーセントでも、
どちらでも、それは「大人の女性」ではありません。
自分の中にある女性性と男性性の統合が見えなければ、
大人ではありません。

20代の女性と、40代の女性では、その統合具合も違うでしょう。
20代のころ許された、甘いふわふわした洋服は、
まだ統合されていない、大人ではない人たちにこそふさわしいもの。
それをそのまま40代が着たのでは、芸がないのです。

日本の和服も、形は同じでも、色や柄で「大人の女性」を表現してきました。
永遠の少女の痕跡は、ほんの少し見せるだけで十分です。
男性がずっと永遠の少年のままでは頼りなく、信頼できないように、
女性も、永遠の少女のままでは、遠くまでいけません。

かといって、女性性の全否定は、もっと異常でしょう。
女性が男性になることに憧れるなんて、馬鹿げています。
ましてや、少年のようになる必要など、ありません。

キャミソールとタンクトップを着るとき、
自分の中の女性性と男性性について、少しだけ考えてみてください。
自分が無意識に選ぶそのコーディネイトが、あなた自身の女性性と男性性の統合具合です。
それはどこまで達成できたのか、できないのか、
鏡にうつる自分自身の姿を見れば、わかるでしょう。

☆写真:こんなロマンチックなキャミソールには、ジーンズやカーゴパンツが似合います。