ページ

2013年8月19日月曜日

コーディネイトの新しいバランス

2012年以降、ファッションのトレンドは、完全に新しい流れへと入りました。
トレンドが変わるということは、服のシルエットが変わるということです。
当然のことながら、服のシルエットが変われば、
コーディネイト全体のバランスも変わってきます。
この時期、新しいバランスを作ることが、おしゃれに見えることの条件になってきます。

トレンドが変わる時期は、もちろん過去にもありました。
最近では、90年代後半から2000年に入るころ、
それまでのだぶだぶしたシルエットから、
急激にタイトなシルエットになっていった時期です。
おしゃれに敏感な人たちは、流行をいち早くかぎ分け、
ぶかぶかなパンツを捨て、スキニー・ジーンズをはき、
ストレッチの入ったぴったりしたTシャツをトップに持ってきました。
それは今まで見たことがないシルエットで、
大きな服にそろそろうんざりしていた人たちには、
衝撃的なほど、新鮮にうつったのでした。
それと同じ現象が、今、起きています。

今回は、ぴったりタイトが長く続いたせいで、
その反動で、全体のバランスが大きくなります。

服の新しさというのは、ものとしての新しさの問題だけではないのです。
体と布の間にできる空気の分量がどれだけ新しいものなのか、
そちらのほうがより重要です。
そして、明らかに全体のシルエットが変化してしまった今、
古いトレンドを引きずった、ものとして新しい服を買っても、
それは、新しいとは言えません。
問題なのは、その服で、どれだけ新しいバランスのコーディネイトできるか、
ということなのです。

これからは、2000年にはおしゃれに見えたコーディネイトのバランスは、
もうすでにおしゃれには見えません。
あのときはどんなにそれが格好良かったとしても、
今はもうそうではありません。
それがファッションであり、流行です。

コーディネイト・ブックのコーディネイトは、
発売されたときにもっともおしゃれなのであって、
それが永遠に続くわけではありません。
コーディネイトにおいても、シルエットとバランスは、ゆるやかに変化していくからです。

さて、これから約10年は続くであろう新しいバランスは、
体にぴったりフィットしたものでないことは明らかです。
ビッグであることは確かなのですが、
かといって、80年代のビッグ・シルエットとも違います。
80年代のビッグ・シルエットは、マスキュリンの要素が強いものでしたが、
次の10年、強調されるのはフェミニティです。
ですから、必ずしも、ビッグ・シルエットのコートやジャケットに、
マニッシュな靴をあわせるわけではありません。
細いピンヒールは、まだ健在です。


また、50年代から60年代、ディオールに代表される時代のシルエットにも、近いものがあります。
けれども、やはりそれとまったく同じというわけではありません。
あの時代の清楚で、きっちりしたイメージと、
これからのもっとおおらかで、混沌としたイメージでは、
生まれてくるデザインも違うでしょうし、全体のバランスもほんの少しですが、
違ってきます。

これはまだ私もはっきりつかめているわけではありませんが、
たぶん、何か逸脱した要素があると思います。
そして、それは「役に立つ」からは、ほど遠くなります。
ドレープやフレアなど、無駄な要素が多くなります。
トレーナーにフレアスカート、ハイヒールのそのバランスは、
どう考えても、走るのには適しません。
機能と効率、経済性とは逆の方向です。
そしてそれらは、わたしたちが長いこと、価値を認めてこなかったものです。

ここで豊かさは復活します。
そうでなければ、それは嘘です。
機能的でもない、効率も悪い、経済の発展に寄与しない、
その豊かさが、再び見出されるときです。
それを私たちは、無意識にキャッチして、
バランスで表現します。

行き場のない世界で、
絶望の果てに見つけたのは、
長いこと忘れ去られ、見捨てられた、
本当の豊かさです。

本当におしゃれな人とは、それをいち早くキャッチする人たちです。
眠っている人たちを目覚めさせるため、
先駆者は、新しい価値を提示します。
新しいバランスが定着するには、これから何年かかかるでしょう。
しかし、必ずそれは定着するのです。

これから始まる新しい時代のために、
新しいバランスを見つけてください。
自分の心に引っかかる、新しいバランスのコーディネイトを見つけたら、
早速、試してみてください。
その一歩こそが、新しい時代を作ります。