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2012年3月5日月曜日

日本のパターン・ブック



日本の既製服のパターンの完成度については懐疑的な意見の持ち主である私なのですが、
日本のパターン・ブックは、かなりおしゃれで、使える本が多いのではないかと思っています。
ヨーロッパの本屋さんで、この手の本が並んでいるのを見たことはありませんし、
パターンが売られているとしても、このモデル、いつの時代の人かしら、というような写真がついた、なんとも古めかしい、単純なパターンのドレスなどが袋に入って売っている、あれぐらいしか見当たりません。
(アメリカは行ったことがないので、アメリカのことはわかりません)
日本のパターン・ブックは種類も豊富ですし、毎年どんどん新しいものが出版されて、ちゃんと流行を取り入れています。写真も美しいですし、縫い方も載っていますので、初心者でも作れるものが多いのではないかと思います。

さらに、驚いたことに、この日本製のパターン・ブック、海外でも人気らしいのです。
ヨーロッパやアメリカのネットショップで扱っているところを見つけましたし、
それだけでなく、このパターンを使って作った自作のドレスを、皆さん、ブログで発表しています。
中には、日本語の洋裁用語を自国の言葉に翻訳して説明しているブログもあり、
みなそれぞれが楽しんでいる様子がうかがえます。
昔、日本の女性たちが、ヨーロッパやアメリカのパターンと格闘したように、
今では逆に、ヨーロッパやアメリカの方々が、その同じ努力をしているのです。
パリ・コレクションなどにおいては、もう既にかつてほど、日本人デザイナーの人気はありませんが、とくだん有名ではない、パターン・ブックの作者であるデザイナーたちは、もう既に世界中に散らばる手作り愛好者の間で知れ渡っているのかもしれません。

さて、そんなパターン・ブックを使って、自分で洋服作りをしてみることをぜひお勧めしたいわけですが、では、どういうものから取り組むのがよいのでしょうか。
それはずばり、「開きの処理がないもの」です。
既製品と手作り品で一番大きな差が出る部分は、ボタンホールです。
まず最初に何か作ってみたい方は、ボタンホールの開きのないものを選ぶといいでしょう。
また、ファスナー開きも、なれれば簡単なのですが、なれてないと、頭にくるほどきれいにできないので、最初はやめておいたほうが無難です。

今はネットで生地でも副材料でもなんでも手に入りますから、裏地の必要のない春夏の服が始まるシーズンは、手作りの第一歩にふさわしいのではないかと思います。
またもう一つアドバイスとしては、洋服用のボディを持ってらっしゃらない一般の方は、
作っていく段階で何回か、自分で着てみて、自分のサイズに合うように修正を入れてください。
細すぎたら、少し外側を縫うとか、すそ丈を自分の最も似合うサイズに変更するとか、
その程度のことをするためにも、製作段階のものを途中で着てみることは重要です。

そして何より大事なことは、手を使って何かを作るということです。
アートの語源のarsという言葉には、手仕事という意味が含まれます。
つまり、手を使ってこそアートなわけです。
手を使えば、誰でもアーチストになれるのです。

わたしたちの手は、もともと何かを生みだすためにあります。
パソコンやケータイの文字盤をたたくだけに使ったら、こんなもったいないことはありません。
自分で作ったものが不格好であったとしても、手で作ったその先には、
その人にしか到達できない場所があります。
それは、自分が望みさえすれば、行ける場所なのです。
そして、それは喜び以外、あり得ないのです。

☆写真は、佐藤ヒサコさんの「ドレープドレープ3」文化出版局 (2011/11/18)。
海外でも人気です。自作を紹介したブログがたくさんあります。
また、開きのいらないドレスが多数収録されているので、初心者にもお勧めです。