ある年齢を超えると、女性ホルモンの減少に伴い、性差がなくなってくると言われています。
若いころは特別に何をしなくても、
存在しているだけで、このホルモンがその人に女性らしさを与えていました。
この年代の女性は、どんなにメンズウエアを着ようとも、やはり女性らしいのです。
人によっては、メンズウエアを着てギャップを作り出し、
女性らしさを強調するという高等テクニックを披露することさえできます。
しかし、いい年の大人になるころ、女性ホルモンは激減し、
ほったらかしでも享受できた天の恵みの「女性物質」は、
残念ながら、だんだんと受け取れなくなるのです。
そうなると、男性と同じデザインのものを着ることで女性らしさを強調できたあの魔法は、
もう使えません。
男性と同じデザインのもの、例えばジーンズ、トレンチコート、Tシャツといったカジュアルな衣装は、ただそのまま着たのでは、性別のあいまいさをより強調するものに早変わりします。
そのため、同じものを着ても20代のころに着たときとは、全く違う印象になるのです。
恐るべし女性ホルモン。
しかし嘆いてみたところで年齢を遡行することはできません。
いい年の大人になったとき、「女性らしさ」を表現したいと思うのなら、
何かしらの工夫が必要になります。
残念ながら、いい年の大人になればなるほど、
参考になる見本は少なくなります。
特に日本では、
ミセスやマダムと銘打った雑誌のモデルの多くは30代から40代。
50代以上のモデルとなると、とんと見当たらず。
美容とファッションに潤沢な予算をかける女優さんたちでは参考にならないでしょう。
それでもできることを考えてみます。
まず一つ目。
昔から「女性らしい」とされているアイテムやスタイルを取り入れて「女性物質」を補う。
全身のルックを「男性も着ている」アイテムだけで構成した状態では、
女性らしく見せるのは至難の業。
ですからそれは避けて、女性しか着用しないアイテムを取り入れましょう。
代表的なものはスカートとワンピース。
現代の男性はスカートとワンピースは着用しませんから、これだけでも女性であるとわかります。
(もちろんジェンダーニュートラルの観点からは、男性がスカートやワンピースを着てもOKです)
そのほかに男性が着用しないものとして、ヒールの靴があります。
また、ジュエリーの多くも男性は着用しないので、
ここぞというときはこれらで「女性物質」を補っていくといいでしょう。
二つ目。
女性しか着用しない素材を選ぶ。
例えばシフォンやオーガンジー、レースやシルクサテンは現代のほとんどの男性は選びません。
男性と同じデザインのものを着るにしても、素材を変えることにより「女性物質」を取り入れることができます。
シャツやブラウスでも、これらの素材で作られているのなら、女性らしさを表現できるでしょう。
三つ目。
引き続き細いウエスト。
細いウエストは、洋服の世界において女性であることの象徴です。
デザイナーのジャンポール・ゴルチエは細いウエストを強調したコルセットについて、
「女性のパワーと解放の象徴」と言っています(※1)
コルセットまではいかなくても、ウエストベルトをと使うことによって、ウエストは細くあるという胴体のバランスは表現されます。
たとえ本当は細いウエストでなくても、シンボリックに細いウエストを作ることで「女性物質」は付け足されますので、適宜この作用を利用しましょう。
そして最後に。
最後にできること。それは「女性」としての意識です。
「女性らしさ」を表現したいときは、自分は女性であるという意識を持つこと。
これなら誰でもできるでしょう。
意識は目には見えませんが、他人には伝わります。
それを意識するのとしないのとでは、他人に与える印象は大違いです。
どんな性別の人でも、「自分が女性である」と意識するならば、他人には女性に見えるのです。
女性ホルモンが減少した暁の、新しく、かつ自分らしい女性らしさの表現について、
上記のポイントを参考にして、
それぞれが新たに創造していくといいでしょう。
自分らしい女性らしさの見本はどこにもありません。
なぜなら、これまで歩んできたあなたの過去は、他人の過去とは違うから。
その過去の堆積の上に今があります。
いい年の大人の女性らしさは、自分で見つけて作っていくものです。
これは挑戦です。
だけれども、この挑戦を楽しいと感じられるならば、
半分は成功したも同然です。
それはきっとうまくいきます。
誰の承認も要りません。
※ジャンポール・ゴルチエ 『ファッション・フリーク・ショー』日本公演パンフレットより引用
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