昔、そうそれは2000年になる前のこと。
夏というものは大体8月いっぱいまでで、
9月になって学校が始まると(地域によりますが)、たまに暑い日があっても、
それは秋の日の気まぐれにすぎなくて、
朝、家を出るときの空は青く、
お昼に天頂を見上げれば、太陽はもう既に少しばかり傾いて、
朝夕に吹く風は涼しく、誰でも秋を感じることができました。
しかしここ2,3年でしょうか。
8月が終わっても一向に秋の気温にはならず。
真昼の太陽が傾きを増しても、
そして昼と夜の長さが同じになってもなお、
夏のように暑い日々が10月を過ぎても続くようになりました。
こうなると、2000年になる前のようには、
秋の服を着ることはできません。
それは暑すぎてもう無理なのです。
気候変動の影響のこの傾向は、今後も続くと予想されます。
場合によっては、今年が最後の涼しい夏の可能性すらあります。
このブログを書き始めた2010年ごろは、
それでも、長く暑い夏なので、形とデザインは夏と同じで色だけ秋色に変えましょう、
と提案しました。
もちろんこのアイデアは今でも使えます。
しかし、いまだ名前のない「新しい秋」とも呼べるシーズンを過ごすには、
これだけでは物足りない。
なぜ物足りないのかというと、
長い夏のかわりに秋がとても短くなったので、
西洋の衣服がその魅力を最も発揮する秋の服を楽しめないからです。
色を変えるだけではなく、
もう少し何かないかと考えたとき、
いいものがあるではないか、と気づきました。
それは、素材は冬っぽいのに、全く暖かくないあのものたち、
みんなにあまり好かれていないので、持っていない人も多い、あのものたちです。
素材は冬っぽいのに全く暖かくない素材とは、
コーデュロイ、別珍、ベルベットです。
これら、素材はコットンやレーヨンであることがほとんどなので、
着てみても、暖かいということはありません。
ただ、陰が深く出る起毛素材のため、私たちはなんとなくそこに秋や冬を感じるのです。
確かにコーデュロイ、別珍、ベルベットの中にはそれなりに厚みがあり、
暖かく感じられるものもあります。
しかし、それは真冬に対応するほどの暖かさではありません。
それゆえに、多くの人にこの素材は好まれませんでした。
しかし今こそ、これらを選ぶときなのです。
選び方のポイントは、まず薄いものを選ぶこと。
幾ら起毛していても、それは単なるコットンやレーヨンです。
薄ければ、着て暑すぎるということはありません。
気温が高い秋でも、薄手のコーデュロイのシャツなら、それほど暑くはないでしょう。
また次のポイントは、
デザイン的には夏と同じものを選ぶこと。
これは実際にそういうものがあれば、ということですが、
ノースリーブや半袖、ネックが広く開いたものを選べば、
より一層涼しく過ごせます。
最後のポイントは自宅で洗えるものを選ぶことです。
まだまだ暑い日が続くということは、汗をかく日が多いということ。
洗えない素材だと困ります。
インナーやトップスであったら、少なくとも手洗い可能なものを選びましょう。
このほかにもまだ考えられるのは、
コットンやシルクのニットです。
日本の場合、コットンやシルクのセーターは、真夏には暑すぎる場合が多く、
買っても着る機会が少ないアイテムの代表でした。
しかし、真夏ほどではない暑さでしたら、これらのニットは快適です。
コットンの場合は家で洗えます。シルクも選べば手洗い可のものもあります。
またその他のものとしては、
シースルー素材やフロッキープリントが施された素材、
薄いウールのもの、サマーウールと呼ばれている梳毛のウールも、
「新しい秋」には着られるでしょう。
これらの素材で作られたアイテムを9月以降、適宜追加していけば、
暑く汗ばむ秋という「新しい秋」のワードローブは完成すると思います。
足元も、秋らしい色や、また秋冬に多用されるエナメルやスエード、フェイクファーを使えば、
たとえサンダル履きであったとしても、「新しい秋」に対応できるでしょう。
残念ですけれども、
もう昔のような秋は戻ってきません。
あの頃の秋は思い出の中だけです。
庭に植える植物の種類も変わりました。
同じように、「新しい秋」に着るワードローブも変えなくてはいけません。
今までの「秋」という概念は捨て去って、
「新しい秋」を新たにインストールして、
この新しい季節を快適に過ごしたり、飽きないためにも、
ワードローブを新しく作り変えていきましょう。
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