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2013年11月12日火曜日

チェック

2013年の秋冬コレクションで、セリーヌやステラ・マッカートニーが、
大柄チェックで、ビッグ・シルエットのコートを発表しました。
これらのデザインは、
チェックが戻ってきたという意味において、
重要な位置づけになります。

このブログでも、もう何度となく、
シルエットの変化について書いてきました。
私がシルエットの完全なる移行を感じたのは今年の夏です。
このシルエットは今後10年前後、続いていくものと思われます。

大きな柄が復活してきたというのは、
単にデザイナーの好みの問題だけではありません。
大柄のチェックとシルエットの間には、大きな関係があるのです。

大柄のチェックを生かすデザインとは、
その柄が崩れないように見えることが基本です。
そのために、ダーツや曲線が少ないことが理想です。

日本の着物を想像していただければわかると思いますが、
着物は反物をほとんど余計にカットせずに衣服に仕立てます。
そのため、生地の柄を崩すことなく、そのよさを表現することができます。

ビッグ・シルエットのコートにチェックの生地が使われたのは、
まさにこのためです。
ビッグで、しかもダーツや曲線が少ないデザインでなければ、
チェックが生えないのです。

ここに来るまでの約14年間、
服がタイトになるとともに、
大柄のチェックの服は消えていきました。
なぜなら、服の中に多くのダーツ、そして曲線がふえていったからです。
切り刻まれることによって、チェックは崩れていきます。
そのため、この時代、チェック柄はごく小さな柄のもの、
もしくはメンズ・テイストのアイテムに使われるのみになりました。

シルエットというものは、服にとって最も重要です。
色、生地など、ほかにも服にとって重要な要素がありますが、
シルエットこそ流行であり、
その変化は生地も、柄も、たぶん色も変えていくほどの力を持っています。

今回のシルエットの変化により、選ぶ素材、柄の選択肢が大きく増えました。
大柄のチェックはその1例です。
チェックだけではなく、大柄のプリントや、14年春夏コレクションでプラダが発表した大きな模様なども、その例ですし、 フェルトなどの張りのある素材、逆にシフォンやオーガンジーのように、
ダーツや切り込みが不向きな素材もふえてきます。

どんな流行も、行きすぎると不自由になります。
大柄なチェックがなかった時代、私たちはあたかもそれが当たり前のように感じていましたが、
今から考えると、いかに面白みや、選択肢がなかったかがわかります。
その不自由さから抜けるには、前のものからの脱却が必要なのです。

時代遅れということは、
つまり、この前の流行の不自由さを引きずっているということです。
それは、もう進んだ目から見たら、
あまりに古臭く、自由がありません。
昔買った服だから、ものとして古いということだけではなく、
私たちが無意識のうちに察知するのは、
新しいものを受け入れない、柔軟性のない、その姿勢です。

チェックは、これからもいろいろなアイテムとなって登場してくるでしょう。
メンズライクなシャツ、キルトスカートなど、
ダーツや曲線が少ないアイテムの中で、それは見られるはずです。

行きすぎたものは、壊れる運命にあります。
それはあまりに固すぎるからです。
固くなったがために、壊れるのです。
周りの世界がまったく目に入らず、自分の身体の殻の中に閉じこもっているならば、
その人はもうおしゃれではありません。
それは、いい意味での他人の目を気にしないという態度とは、
わけが違います。

人間は、見えないエリアを見抜くアンテナを持っています。
流行は、まさに見えないエリアに流れているエネルギーの動きです。
自分の身体だけを見ていたら、
それを感じることはできません。
ファッションは、時代を流れる見えない情報が具現化されたものです。
ほんの少しでもいいので、流行を取り入れたほうがおしゃれに見えるのはそのためです。

大きなチェックが目にとまったならば、
それはあなたのアンテナが正常に働いているということです。
アンテナを張り巡らせましょう。
そしてキャッチしたものを、自分の中に取り入れましょう。
そのことが、あなたのおしゃれを一歩先へ進ませます。