2013年の秋冬コレクションで、セリーヌやステラ・マッカートニーが、
大柄チェックで、ビッグ・シルエットのコートを発表しました。
これらのデザインは、
チェックが戻ってきたという意味において、
重要な位置づけになります。
このブログでも、もう何度となく、
シルエットの変化について書いてきました。
私がシルエットの完全なる移行を感じたのは今年の夏です。
このシルエットは今後10年前後、続いていくものと思われます。
大きな柄が復活してきたというのは、
単にデザイナーの好みの問題だけではありません。
大柄のチェックとシルエットの間には、大きな関係があるのです。
大柄のチェックを生かすデザインとは、
その柄が崩れないように見えることが基本です。
そのために、ダーツや曲線が少ないことが理想です。
日本の着物を想像していただければわかると思いますが、
着物は反物をほとんど余計にカットせずに衣服に仕立てます。
そのため、生地の柄を崩すことなく、そのよさを表現することができます。
ビッグ・シルエットのコートにチェックの生地が使われたのは、
まさにこのためです。
ビッグで、しかもダーツや曲線が少ないデザインでなければ、
チェックが生えないのです。
ここに来るまでの約14年間、
服がタイトになるとともに、
大柄のチェックの服は消えていきました。
なぜなら、服の中に多くのダーツ、そして曲線がふえていったからです。
切り刻まれることによって、チェックは崩れていきます。
そのため、この時代、チェック柄はごく小さな柄のもの、
もしくはメンズ・テイストのアイテムに使われるのみになりました。
シルエットというものは、服にとって最も重要です。
色、生地など、ほかにも服にとって重要な要素がありますが、
シルエットこそ流行であり、
その変化は生地も、柄も、たぶん色も変えていくほどの力を持っています。
今回のシルエットの変化により、選ぶ素材、柄の選択肢が大きく増えました。
大柄のチェックはその1例です。
チェックだけではなく、大柄のプリントや、14年春夏コレクションでプラダが発表した大きな模様なども、その例ですし、 フェルトなどの張りのある素材、逆にシフォンやオーガンジーのように、
ダーツや切り込みが不向きな素材もふえてきます。
どんな流行も、行きすぎると不自由になります。
大柄なチェックがなかった時代、私たちはあたかもそれが当たり前のように感じていましたが、
今から考えると、いかに面白みや、選択肢がなかったかがわかります。
その不自由さから抜けるには、前のものからの脱却が必要なのです。
時代遅れということは、
つまり、この前の流行の不自由さを引きずっているということです。
それは、もう進んだ目から見たら、
あまりに古臭く、自由がありません。
昔買った服だから、ものとして古いということだけではなく、
私たちが無意識のうちに察知するのは、
新しいものを受け入れない、柔軟性のない、その姿勢です。
チェックは、これからもいろいろなアイテムとなって登場してくるでしょう。
メンズライクなシャツ、キルトスカートなど、
ダーツや曲線が少ないアイテムの中で、それは見られるはずです。
行きすぎたものは、壊れる運命にあります。
それはあまりに固すぎるからです。
固くなったがために、壊れるのです。
周りの世界がまったく目に入らず、自分の身体の殻の中に閉じこもっているならば、
その人はもうおしゃれではありません。
それは、いい意味での他人の目を気にしないという態度とは、
わけが違います。
人間は、見えないエリアを見抜くアンテナを持っています。
流行は、まさに見えないエリアに流れているエネルギーの動きです。
自分の身体だけを見ていたら、
それを感じることはできません。
ファッションは、時代を流れる見えない情報が具現化されたものです。
ほんの少しでもいいので、流行を取り入れたほうがおしゃれに見えるのはそのためです。
大きなチェックが目にとまったならば、
それはあなたのアンテナが正常に働いているということです。
アンテナを張り巡らせましょう。
そしてキャッチしたものを、自分の中に取り入れましょう。
そのことが、あなたのおしゃれを一歩先へ進ませます。