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2019年7月30日火曜日

ハートを動かして

おしゃれをしたとき、あなたは他人に対してどのような影響を与えたいと願うでしょうか。
それは人によってさまざまでしょう。

よい印象を与えたい。
覚えておいてほしい。
素敵だと思われたい。
いい人に見られたい。
また会いたいなと思わせたい。

もしくは、
勝ちたい。
負けたくない。
自分のほうが「上」に見られたい。

人それぞれ欲求や要望が違うので、分かれるのは当たり前なことです。そこに問題はありません。

私は人々のニーズは大まかに分けて2つあるのではないかと考えます。
それは、人のマインドに訴えたいおしゃれをしたい人と、
人のハートに訴えたいおしゃれをしたい人です。

マインド、つまり思考に訴えたいおしゃれをしたい人の要望は、
思考の結果、何かを得ることです。
考えた結果ですから、心を動かす、つまり感動させたいというのとも違います。
そのほとんどは計算で、あるいは論理的に理解できる結果、
すなわち高い、安いであったり、早い遅れているであったりします。

高い安いを多くの人が気にしているのは、
最近出てきた「高見せ」という言葉を考えればよくわかります。
高見せとはすなわち、安いものを高く見せたいという要望でしょう。
その結果、何が得られるかというと、
他人のマインドを刺激して、高いものを着用している自分を作り、
他人に対して計算の上で優位に立とうということでしょう。

資本主義社会においては、お金があるということの価値が非常に高く評価されますので、
それに訴えようというわけです。

早いとか、遅れているというのも、
いち早く情報を得て、新しいものを早く取り入れたほうが、この情報社会においては高く評価されますので、それに対する人々のマインドに訴えての行動だと思います。
早いか、遅いかというのはハートの尺度ではありません。
それは情報とデータの分析であり、マインドに訴えるものです。

マインドに訴える場合に必要なのは財力と情報収集能力です。
いち早く新しいもので、最も高いものを買えば、他人のマインドに訴えたいという要望はかないます。
ただ、そこには問題があります。
他人のマインドに訴えるためには、その他人のマインドにも同等レベルの情報の集積がなければなりません。
いくら早いものを見せつけたところで、他人が早いとか遅いとかに全くの無関心で、
そこに価値を見出していないのなら、「だから何?」と思われるだけで終わりです。

またもう一つ、最も高額なものを買える財力を持っているのは、
世界の人々の1パーセントと言われていますので、
その他99%が、お金をどれだけ持っているか競争に参加するのは不毛です。
初めから負けるのがわかっています。

このように、マインドに訴えて、誰かに勝ちたいと願っても、
その要望はなかなかかなえられないでしょう。
いつでもそれ以上が存在するか、または、全く意味をなさないか、
どちらかになりがちです。

一方、ハートに訴えるおしゃれ、つまり他人を感動させるおしゃれは、
財力でも、情報収集能力の問題でもありません。
人の心を動かす技術とは、言うなればアートです。
音楽でも、美術でも、見るもののハートを動かすのは、
マインドによる計算の結果以外のものによってです。
どんなに計算しても、モナリザを解釈することはできません。
しかし、解釈はできなくても、モナリザは人の心を動かし、
また見たい、また会いたいと他人に思わせることができます。

では、人の心を動かすためにはどうしたらいいでしょうか。
残念ながら、どんなに有名な美大に行っても、
それについては教えてくれないでしょう。
教えられるのは、それに近づく技術までです。

絵画だったら、デッサンと色彩について、
音楽だったら、演奏の技法について、
学校では教えてくれます。
それは人の心を動かすための、最低、習得すべき事項です。

その技術を習得したなら、その先はその人の道です。
モナリザが素晴らしいからといって、モナリザと全く同じ絵を描いたところで、
他人の心は動かせません。
それどころか、それは贋作と呼ばれ、評価の対象にはなりません。

技術を習得したら、そこからはその人の個性、すなわちスタイルの構築をする段階になり、そのスタイルが洗練されたころ、多くの人を魅了することができるようになるでしょう。
そこまでたどり着くには、時間がかかるかもしれませんし、それ相応のエネルギーも必要でしょう。
しかし、そこには時間とエネルギーをかけるだけの価値があります。

マインドへ訴えるおしゃれと、ハートに訴えるおしゃれ、
どちらでも選べます。
好きなほうを選んでください。

最後に、マインドに刻んだ記憶はその多くがはかなく消える運命にあります。
それは学生時代に読んだ教科書の内容の多くが忘れ去られてしまうのと同じことです。
一方、ハートの記憶は一生残ります。
それは繰り返し、人の脳裏によぎるでしょう。
そして、場合によっては、その記憶は永遠に残るでしょう。




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2019年6月20日木曜日

おしゃれはしょせんローカルルールで遊ぶゲーム

おしゃれなどというものはしょせん、ローカルルールで遊ぶゲームにすぎないので、
それに参加するもしないも自由。
運動会のときあったでしょう?
参加自由の競争。
あれと同じ。
だから、そんな自由競争に参加しないからって批判や非難を受ける筋合いはありません。

ローカルルールなんだから、
知らない人は知らないし、
ゲームなんだから、ゲーマー以外にはどうでもいい話。

あの人のバッグより私のほうが新しくて値段も高いなんて、
ハイブランドの値段が高いバッグを持つ競争に参加する、
そんなゲーマーは、「おしゃれ」とは違うゲームの参加者。
それは20世紀の終わりごろから跋扈し始めた、
新自由主義者でマキャベリストの好んで参加するゲームにすぎない。
勝者はいつだって、お金をたくさん持ってる人。
そのためには誰かが悲しい目にあってもいいんでしょう?
いつでも知らないふりだよね。
そうでしょう?
ある意味、単純で簡単な価値観。

日本では、1868年にこのローカルルールを持つ衣服を着ることを採用してしまったので、
好きだろうが嫌いだろうが、
似合おうが、似合わなかろうが、
死ぬまでこれを着なければならない。
好きとか嫌いの問題じゃなくて、
似合うとか似合わないの問題じゃなくて、
それは制度の問題。

だけれども、それはローカルルール。
ユニバーサルではありません。
それは決して、ユニバーサルな法なんかではない。
私たちは宇宙の太陽系の地球という天体に居住している地球人なのだから、
そのまた狭い地域の狭小なエリアのルールなんて、
そのほかの地球人は知ったこっちゃない。
それなのに、なぜ地球人が地球人に苦痛を強要するのでしょうか?

ローカルルールだということを忘れないで。
もっと大事なことがあるということを。
そんなもので自由な地球人を縛ることは、宇宙の法が許さないでしょう。

おしゃれじゃないからって他人を批判しないで。
おしゃれのために他人を搾取しないで。
そして、おしゃれのために他人の自由と権利を奪わないでください!


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2019年6月18日火曜日

おしゃれで失敗しがちなこと

皆さんのワードローブを何年も拝見してきました。
そして、皆さんの共通のお悩みと疑問もわかりました。
その中で最も多い悩みと疑問はこれではないでしょうか。
つまり、
「おしゃれ」と雑誌に書いてあったもしくは誰かが言ったアイテム、
「最旬」とか「マストハブ」とか言われていたアイテム、
誰かのお勧めアイテム、
販売員さんのお勧めアイテム、
一番売れているアイテム 、
全部、買って、全部着てみたけれども、
おしゃれって言われないし、
なんか変な感じがするのはなぜ?
というものです。

理由は簡単で、最終的におしゃれなルックを作ることを目的にアイテムを集めたわけではないからです。

色とシルエット、素材によって全体のルックはでき上がります。
まず色をコントロールします。
そしてその時代に合ったシルエットを作ります。
ここまでできていれば、おしゃれの8割は完了です。

だけれども、
色を無視する、
無目的にシルエットもいろいろ組み合わせる、
だとすると、土台の8割は出来上がりません。
土台ができていないので、その上に何を付け足しても無駄です。

土台があっての小細工です。
土台があっての個性です。

鳥だって、巣を作るために適した木切れを集めてくるのに、
皆さんの集め方は、最終的にどうしたいかが明確ではありません。

そして最後、それを着てどういう結果が欲しいかも大事です。
キャンプに行くルック、
高級なレストランで食事をするルック、
会社でプレゼンするルック、
それぞれ違うでしょう。
キャンプに行くときは活動的でけががないよう楽しくキャンプするためだし、
レストランで食事するときは、室内のしつらえに合ったエレガントな服で気分よく食事をするためだし、
会社のプレゼンは、見ている人に納得してもらえるために話者に説得力を持たせるために服を選ぶでしょう。

それがキャンプへ行く服でレストランへ行ってしまったり、
レストランへ行く服で仕事のプレゼンをしてしまったりするから、
望んだ結果が得られないのです。
もちろんその望んだ結果が「嫌な気分」とか「失敗」でなければ、の話ですが。

アイテムを集める順番を見直してみてください。
まずは色、そしてシルエット、最後に目的についてです。

私が使わない言葉に「TPO」という言葉があります。
TIME (時間), PLACE(場所), OCCASION(機会)
でしょうか。
これには「目的」が抜けています。
だから私は使いません。

人が成功したと思えるのは、目的が達成して、
よかった、うれしかった、楽しかったというポジティブな感情を感じられたときです。
 
おしゃれの失敗を防ぐためにも、そして「成功」するためにも、
なんのために着るか、
そしてどういう結果が欲しいかということを忘れないようにしてください。


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2019年6月9日日曜日

梅雨の時期は何を着るか

雨が降り、湿度が高く、肌寒い日もある梅雨。
この時期は何を着たらいいのかよくわからなくなる方も多いでしょう。

そもそも西洋の衣服はこのじめじめした梅雨に適したものではありません。
どちらかというと、乾燥している空気に、
さーっと通り雨のように降る雨に適しているのが西洋の衣服。
それをそのままこの梅雨のある日本で着ようというのですから無理があります。
そこには少し工夫が必要です。

梅雨の時期に必要なのは、
まず、濡れたら乾きやすい、ということです。

濡れたら乾きにくい衣類の筆頭がジーンズです。
コットンは水に濡れると、なかなか乾きません。
特にジーンズほど厚みがあるとなおさらです。

一方、乾きがいいのは麻、シルク、そして速乾性のある特殊な化学繊維です。
特殊なと書いたのは、特殊でもなんでもない、単なるポリエステル、ナイロン等は、
雨に濡れるとすぐに乾くわけではないからです。


また、濡れたら乾かないだけではなく、水に弱い繊維もあります。
その筆頭はレーヨンです。
パルプを原材料とするレーヨン糸は、水に濡れると固くなり、
切れやすくなります。「水洗い可」の表示のないものは、ドライクリーニングしかできません。
もう一つ、水に弱い素材があります。
それはポリウレタンです。
ポリウレタンは光、熱、水、すべてに弱いので、
買ったばかりのころはいいのですが、梅雨と夏の季節の着用、
そして度重なる水洗いにより劣化します。
気を付けないと、ポリウレタン100%のレインコートなどもありますので、
買うときはよく注意してください。
どんなに高価でも、1年から2年で劣化して着られなくなります。

水をはじく代表的な素材はゴアテックスです。
必ず表示、またはタグがついていますから、ゴアテックスであるとすぐにわかります。
ゴアテックスを使ったアイテムは高価ですが、
撥水性はお墨付きです。
梅雨時期のレインコートやレインブーツに適しています。

また、例えばごく普通のトレンチコートを梅雨に着たい場合、
クリーニング店に撥水加工を依頼することもできます。
加工するだけで、水をはじくようになりますので、
撥水素材のものではないトレンチコートも、このようにして梅雨時に着るといいでしょう。

そのほか、最近では透湿性といって、蒸れない素材も出てきています。
梅雨の期間は、乾きが早く、蒸れない、撥水性がある、これらの性質をもった天然素材と化学繊維を取り混ぜて着るのがいいでしょう。

間違っても、Tシャツ、ジーンズ、コットンのスニーカーでは出かけないようにしましょう。
濡れたら最後、乾きにくく、冷たく、重くなる、
梅雨時には最悪の組み合わせです。


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2019年5月18日土曜日

気温の季節と光の季節

衣服を着る第一目的は身体の保護なので、
寒ければ暖かく、暑ければ涼しくなるような衣服を選ぶのが一般的です。
これは気温による季節の衣服選ぶということになるでしょう。
極端な話、寒ければ真冬のセーターを着るのもあり、ということになります。


しかし、おしゃれに見えるかどうかでいったら、
これとは違う選択が必要になります。
では何を基準にその日の着るものを選ぶかというと、
気温ではなく光です。

地球温暖化の影響もあって、毎年、気候は不安定になり、
春なのに雪が降るほど寒かったり、9月の終わりまで暑い日々が続いたりというように、
この季節だから大体この程度の気温というふうには考えられなくなりました。

気温は変動します。
けれども、光の加減は毎年同じです。
なぜなら地球の自転に変化はないからです。
夏至の日に毎年、太陽は最も天に高いところで輝きます。

おしゃれに見せるためには、
気温の季節ではなく、光の季節で考える必要が出てきます。
寒いから、じゃあセーターではなく、
寒くても、光が夏ならば、夏の装いをする、それがおしゃれに見えるコツです。

では、光の季節とは具体的にいつを目安とすればいいのでしょうか。
それは、春分、夏至、秋分、冬至になります。
それぞれが、それぞれの季節の真ん中です。
夏でいったら、夏至の光がど真ん中の夏の光です。
ですから、夏の光に最もふさわしい色合いの装いをするのに適しているのは、
夏至を頂点にした前後の期間ということになります。

夏至とは大体6月21日前後です。
多分これは皆さんが考える夏よりも少し早い時期ではないかと思います。

季節の先取りがいつでもおしゃれに見えるのはこのためです。
体感の季節感よりも、光の季節のほうが先にやってきます。
そして、この光に合わせたほうが衣服はよりおしゃれに見えます。
逆にこの時期が遅くなってしまうと、同じものを着ても、
さほどおしゃれには見えません。
それは光に合わないばかりではなく、
多くの人が着て見慣れてしまったせいでもあります。

気温による季節ではなく、光の季節を意識してその日に着るものを選びましょう。
目安は春分、夏至、秋分、冬至です。
ここが季節のピークだと覚えておいてください。

ほんのちょっとの気遣いで差が出ます。
それを知っていてやるかどうかが、分かれ目になるでしょう。


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2019年5月14日火曜日

捨てていい服、捨てないでとっておく服

ワードローブを整理するとき、
その服が捨てるべきなのか、捨てないべきなのか、
とっておくべきなのか、とっておかなくていいものなのか、
これらの点について悩む方も多いのではないかと思います。
では、服の捨て時の目安について書きたいと思います。

捨てていい服
1「モノ」として壊れたもの
・切れた、破れたもの、ゴムが伸び切ったもの
・何回も洗濯して退色があるもの
・ボタンが欠けた、ファスナーの破産など、付属品が壊れたもの
・ポリウレタンが含まれた素材を使い、おおよそ3~4年は経過したもの、またはポリウレタン樹脂が溶けてべたべたしてきているもの

2自分に合わないもの
・サイズが合わないもの
・着るとかゆくなるもの

3流行ったもの
・ある年に非常に流行った大量生産品
・流行ったブランドのアイテムのコピー品

上記の3つに当てはまらないけれども、捨てるべきか、捨てないべきかわからないもので、5年以上の年月を経過したものについては以下のとおりです。
1自分の好きなもの
→破損があっても、サイズが合わなくても、好きなものは捨てなくていいでしょう。心の保険です。
2デザイン的にオリジナルな製品

2について説明します。
5年以上古いもの、10年以上古いものはもう着られないかというと、
そういうわけではありません。
着られるものがあるから古着屋が成立します。
では、どんなものが着られるかというと、
ハイブランドのコレクションで発表されたものや、アディダスのスタンスミス、バーバリーのトレンチコートなど、歴史のあるブランドのアイコニックなアイテムです。
バーバリーのトレンチコートは古くても、多少擦り切れていても、古着屋で売られています。

例えばアレッサンドロ・ミケーレのGUCCIのコレクションは、
必ずや服飾博物館に入るでしょう。
もしそういったものを持っているのなら、
5年たったからという単純な理由で捨てる必要はありません。

ただし、とっておいた古いものがいつでも同じように着られるかというと、
そういうわけではありません。
シルエットの変化がありますから、ビッグなのか、タイトなのか、長いほうがいいのか、短いほうがいいのか、そのときのトレンドによって「着てもおかしくないもの」が変わってきます。
ですから、一度そのシルエットが変わってしまったら、少したってから、次に似たようなシルエットがめぐってくるまで、「着てもおかしくない」状態にはならないでしょう。

まれに、シルエットとは関係なく、例えばイッセイのプリーツプリーズのようにオリジナルなスタイルを発表しているブランドがありますが、そういったものは何年でも着用可能でしょう。

また、これらについては自分で着用しなくても、リサイクルショップや個人の売買サイトを通して売ることが可能です。

無駄な買い物による使い捨ては環境にも悪影響を与えますし、
自分の時間とエネルギーも奪います。
無駄な買い物をしないように、ワードローブは建設的に構築しましょう。

最後に、
捨てる、捨てないに関する選択は必ず自分で行いましょう。
それをしないでいると、必ずいつか後悔することになります。
そして、その選択の責任は自分でとりましょう。 


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2019年4月18日木曜日

男性のパートナーと出かけるときは「女性装」を楽しもう

第二次世界大戦が終わるころまで、
日本の女性の多くはまだ着物を着ていました。
最近、和服と呼ばれている着物ですが、
少し前までは呉服と言われていました。
着物とは、中国の呉の時代の服だからです。
そういう意味では、着物であっても、日本独特の文化というわけではありません。

漢字は漢の字で、それを長いあいだ使用している日本は、
中国文化の影響が強く、
衣服においても、それは例外ではありませんでした。

そんな中国文化に影響された時代から数百年が過ぎ、
明治になって、こんどは急激な文化の西欧化が始まります。

明治時代、鹿鳴館では津田梅子を含む、多くの女性たちが西洋のドレスを着て踊っていました。
今では想像することしかできないその様子ですが、
少し想像力を働かせてみると、今まで呉服を着ていた人たちが、
いきなり全員、燕尾服だの、ドレスだので慣れないダンスに興じるわけですから、
それは一種の見世物や芝居のようであったのではないかと推測されます。
似合うとか、似合わないとか、そんなことは言っていられません。
その決定は覆されません。

日本の人たちは、明治以降、自分たちの住む土地の気候風土など無視して、
もっと涼しく湿度の低いヨーロッパの衣装を採用したのです。
そのころから、私たちの日常着は仮装になったのだと思います。

舞踏会ではこのドレス、
働くときはこのスーツ、
眠るときはこのパジャマというように、
今まで着物というスタイルだけで過ごしてきた日本の人も、
それぞれのシチュエーションやシーンにおいてふさわしい装いを採用してきました。
これを仮装と言わずとしてなんと言ったらよいでしょう。

私たちはいまだ仮装として洋服を着ています。

なぜドレスにはヒールのある靴なのか、そんなことはわかりません。
仕事へ行くときはスーツとか、そんなルールはこちらが決めたものではありません。
私たちは西洋の衣服を採用したのと同時にそのよく意味のわからない、謎のルールも採用したのです。
つべこべ言わず、そのルールに従うこと。
これは明治時代のある一部の日本の人によって決められたことです。

ほとんどの衣服には着こなしのルールがあります。
それは着物でも同じことです。
細かいルールの一部は合理的な意味があるかもしれませんが、
説明しようのない意味不明なルールも数多く存在します。
けれども、着物を着る際は、そのルールに従わなければならないのです。
ルールを破って、着物にハイヒールを合わせると格好いいと言ってみたところで、
それは邪道であり、ある人のほんの一時の気の迷いでしかありません。

西洋の衣服には独自のルールがある。
女性はドレスにハイヒール、男性はスーツにネクタイ。
どんなにコレクションを通じて、ルールの破壊がされても、
再び女性はドレスにハイヒール、男性はスーツにネクタイは戻ってきます。
それは、着物にハイヒールが採用されないことと同じです。
ルールとはそういうものです。

であるならば、そのルールを楽しもうではないですか。
どうせ私たちにとっては、洋服は仮装です。
ものすごく似合うなんてことはめったにありません。
似合わないとわかっていても、着なくてはならないので着ているだけです。

であるならば、この仮装を楽しもうではないですか。
それは女性装であり、男性装です。

男性のパートナーと出かけるときには「女性装」をするというゲームを
誰かが決めたルールにのっとって 楽しんだほうが、
結局は毎日の生活が豊かで、ハッピーなものになるのではないでしょうか。
そのルールを守ることによって得られるものもあります。
それは、丁寧な扱いだったり、敬われることだったりするのです。
そうして欲しいのなら、私たちはルールを守った上でゲームに参加したほうがいいでしょう。
ルール無視で、それが得られないからといって文句を言うのはお門違いです。

私たちが思う以上に、
このルールは厳然と存在し、壊れることはありません。
ヨーロッパの文化の厚みが、そんなに簡単に崩れ落ちることはないのです。

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