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2014年10月20日月曜日

コスチューム・ジュエリー

コスチューム・ジュエリーとは、本物の貴金属や宝石を使ったファイン・ジュエリーに対して、
本物ではない、
たとえばガラス、真鍮、スチール、プラスチック
などで構成されているアクセサリーについての総称です。
もとは、20世紀の初頭、本物のジュエリーの代理品として、
また、舞台や映画で身につける衣装のアクセサリーとして使われたところから始まりました。
コスチューム・ジュエリーで誰もが知っている存在なのはシャネル。
1920年代、シャネルはファイン・ジュエリーのデザインもしましたが、
同時に、偽物の真珠を使ったコスチューム・ジュエリーを発表し、
コスチューム・ジュエリーのモードでの地位を確立しました。
1920年代と言えば、1929年の世界大恐慌。
不況とコスチューム・ジュエリーは大いに関係があります。
つまり、本物に手が届かなくなったとき、
人々はfaux bijoux(偽物の宝石)を愛するようになるのです。

さて、洋服のシルエットが変わってくると、
それにふさわしいアクセサリーのボリュームも変わってきます。
しかもそれは単純に比例します。
タイトなシルエットの服には小さめの、
大きなシルエットの服には大き目のアクセサリーが、
全体のバランスをとるためにも使用されます。

2012年以降、洋服のシルエットは大き目な方向へ動きました。
それに伴って、アクセサリーも大きくなりました。
それまでのタイトな服の時代は、小さめでも偽物ではなく本物、
つまり貴金属や宝石のジュエリーをつけることができました。
ダイヤモンドや24金であったとしても、
小さいものであったら、多くの人が買えました。
しかし、ジュエリーにもボリュームを求められるようになると、
それをすべて本物でまかなうことは不可能です。
また、本物しか使えないとなると、デザイン的な制約も大きい。
ボリューム、そして自由なデザインの表現を追求できるのは、
偽物で作られているコスチューム・ジュエリーならではです。
そして、服のシルエットが大きくなったのと同時に、
にわかにコスチューム・ジュエリーは再び注目されるようになりました。

日本においては、洋服とはまた別のトレンドの中で、
長いことジュエリーについてキャンペーンが行われてきました。
初期は、真珠のジュエリー、
そして、それが行きわたったところで、
一粒ダイヤモンドのジュエリーです。

パールのネックレスを1本は持っているべきです、
どんなときでも使えます、
そして何よりおしゃれに見えますという、
お説教にも近いうたい文句に、
多くの女性は納得し、1本はパールのネックレスを保持するようになりました。
もちろんそれは日本が真珠の生産国であることも関係しています。
そうでなかったら、これほどまでに真珠のネックレスは広まらなかったでしょう。
しかし、それも多くの女性に行きわたったころ、
次のキャンペーンが出現します。
それが、「一粒ダイヤモンドのネックレスこそおしゃれ」キャンペーンです。
ダイヤモンドは宝石の女王、誰にとっても憧れの宝石、
それを自分のものにしようというキャンペーンは、
日本の円が強くなり、
以前よりダイヤモンドが手に入れやすくなった時期あたりから始まったと思います。
かくして、現在、一粒ダイヤモンドはかなり多くの女性が保持するにいたりました。

しかし、ここで思いだしていただきたいのは、
見慣れないものほどおしゃれに見えるという法則です。
多くの人に行きわたれば行きわたるほど、
見慣れれば見慣れるほど、それはもはやおしゃれには見えません。

パールのネックレスも一粒ダイヤモンドも、残念ながら、
今やそのような見慣れた存在になりました。
つまり、それをしているからといって、特別おしゃれには見えなくなったのです。

コスチューム・ジュエリーの特徴は、デザインのバラエティの豊富さです。
似たようなものがあるとしても、多くの人が全く同じものをするという状況にはなり得ません。
また、最近出現してきたコスチューム・ジュエリーは、
以前のものより進化していますから、デザインだけではなく、
使われる素材も、羽や布、リボン、クリスタルなど、より多岐にわたっています。
また、多くの有名、無名の作家がさまざまなものを発表し、
一点ものも多いです。
これをうまく利用すれば、自分にぴったりの好みの、
しかもほかの誰もが持っていないようなものを見つける、
そして手に入れることが可能です。
それはまさに「見慣れない」ものであり、よって、それはおしゃれに見えます。

デザインの点では多くのメリットがあるコスチューム・ジュエリーですが、
もちろん欠点もあります。
それは、あくまで偽物なため、最終的にはごみ、しかも燃えないごみになる可能性が高いということ、
そして、ものによっては非常にチープな質感であることです。

コスチューム・ジュエリーは、チープなファスト・ファッションから、
高価なハイブランドまで、どこでも売られています。
当たり前ですが、安いものはそれなりの質感です。
ただのガラスよりもスワロフスキーのほうが、
そして半貴石やクリスタルのほうが高価なのは当然です。
ある程度の大人であるならば、あまりにチープなものを選ぶべきではありません。
なぜなら、チープなものは、それを身につける人を安っぽく見せるからです。

また、どう考えても1年であきてしまうようなものをいくつも買いこむのも考えものです。
明らかにすぐ燃えないごみになるとわかっているものを買うのは、
21世紀の考え方ではありません。
最終的にはごみになってしまうとしても、
たくさんは持たないか、
分解してリフォームすることが可能なものか、
コットンパールや水牛の角のように燃えるごみになるもの、
もしくはシャネルのコスチューム・ジュエリーのように、
いらなくなったとしても、誰かが欲しがるものを選ぶのがよいでしょう。

コスチューム・ジュリーはいつも流行しているわけではありません。
また、本物のジュエリーは高くて買えないとしても、
コスチューム・ジュエリーなら買えるというものも出てくるでしょう。
何より、唯一無二の自分のために、
ユニークなコスチューム・ジュエリーを探すのは、
楽しい行為になることは、間違いありません。
購買可能な価格での一点ものも、コスチューム・ジュエリーならではです。

どんなものにも旬はあります。
コスチューム・ジュエリーはまさに旬のジュエリーです。
1つ足しただけで、それは今風になり、
自分らしさの表現もできます。

身につける人が本物ならば、
faux bijoux(偽物の宝石)さえ本物に見えてきます。
その逆に、偽物の人物が身につけるならば、
それは偽物のまま。
よって、コスチューム・ジュエリーはリトマス試験紙のような存在でもあります。
いかにも、コスチューム・ジュエリー(衣装宝飾)は、
世界という舞台で物語を演じる主人公に、
ふさわしいジュエリーではあると言えるでしょう。
本物か偽物かは、
そのパフォーマンス(演技)を見ればわかります。


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