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2020年5月18日月曜日

香りをまとえ

 

ローズとジャスミンの香りに有機化合物であるアルデヒドを配合しできたのがシャネル№5です。
「香水を使わない女に未来はない」と言ったのはココ・シャネルであると雑誌などには書いてありますが、ハル・ヴォーン著『誰も知らなかったココ・シャネル』には、これは詩人のポール・ヴァレリーの言葉であるとの記載があります。

一方、香水とファッションを最初に結び付け、1947年にファーストコレクションと同時に初めての香水である「ミス・ディオール」を発表したのはクリスチャン・ディオールです。
一般的には、香水はコスメの部類だと考えられています。けれども、シャネルにしろ、ディオールにしろ、香水とファッションは切り離すことができない存在であることは間違いありません。
オリジナルの香りを作ってこそ、一人前のブランドとして認められる、そんな風潮すらあります。

香りをつけるというとき、英語ではwearを、フランス語ではporterという動詞を使います。
これらは両方とも衣服を着るというときに使われるのと同じ動詞です。
その性質はコスメティックであるにもかかわらず、香水がファッションと深いかかわりを持つのも、こんな言葉の使われ方が理由かもしれません。

さて、私は、香水とは装いの最後の句読点のように感じます。
なくても意味は通じるけれども、文章としては不完全な、そんな印象です。
そしてそれがあるがゆえに、それなしでは装いが美しいとは全面的に賛同することができなくなります。

香りのない装いは、モダンローズに似ています。
遠くから見て完璧な美しさを兼ね備えた高芯咲きのモダンローズの多くは、近づいて花の香りをかいでみると、ほとんど香りがしません。
一方、ふんわり丸く、千もの花弁を持つロサ・センティフォーリアに代表されるオールドローズは、近づくと陶酔するようなミルラやティーの香りがします。
魅力的なのはいい香りのするオールドローズです。
香りがすればするほどに、多くの蜂を引きつけます。
バラがよい香りを放つのはそのためです。

美しさにとって、引き付ける力は重要です。
それなしでは、重力に逆らえません。
見る人の気持ちはたどり着く前に真下へと落下します。

美しい装いに引き付ける力を付加するためには、よい香りが必要です。
見る者の心を動かして、落下させずにこちらへ引き寄せるには、香りは強力な力となり得ます。

そういう意味では、確かに香水をつけない女に未来はないのでしょう。
目の前までおびき寄せても、誰もつかまえることができないのなら、
物語は始まりません。

香水が持つ力は動かす力です。
その力によって、人の心を動かします。
それは多くの人が望むことではないでしょうか?

多くの人がそれを望みながらも、
失敗を恐れて、その力を使わずに過ごしています。
どの香水を使ったらいいかわからない、
いい香水が手に入らない、
香水についてはよく知らないと、
いくらでも言い訳を並べるでしょう。

そうしている間に、その力の使い手だけが魔法を使うのです。
この世で使える数少ないその魔法を。

道は2つに分かれます。
どちらの道を選んでも構いません。
香りという魔法を使うか使わないのか。
どちらを選ぶかによって、その後の人生は変わるでしょう。

力が欲しいのなら、香りの魔術師たちが作った香水を1瓶携えて行きましょう。
その香りは、あなたをいろいろな場面において救ってくれることでしょう。


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