インドのヴェーダ哲学に、物事を3つに分類する考え方があります。
1つは、サトヴィック、2つ目はラジャシック、そして最後にタマシックです。
サトヴィックなものとは、「真実の」「自然な」「オリジナルな」「シンプルな」「楽しい」「輝きのある」という意味。
ラジャシックとは、「王様のような」「高貴な」「派手な」「きらびやかな」「ぎらぎらしている」「浪費的な無駄遣いをすること」「興奮」「刺激的」などです。
そして、タマシックは、「暗い」「よどんでいる」「抑圧的な」「憂鬱な」「醜い」「恐ろしい」ものに対して使います。
そして、本当の本当に未来的なファッションとは、サトヴィックなものになるだろうというのが、私の予測です。
この考え方は、以前取り上げたウルトラライトにも通じますし、また、ずっとたどっていくと、ガンジーの非暴力という思想につながっていきます。
上の3つの分類で考えると、現代のファッションはラジャシックと、タマシックがあふれています。
ラジャとは王という意味。王様のような、きらびやかで豪華な衣装が掲載されているファッション誌は多くあります。
また、タマシックの代表は、やはりファストファッションでしょう。大量に生産された粗悪な衣服は、必ずしも着る人をハッピーにしませんし、何より、作る過程で何が起こっているのかを考えると、とてもフェアなものとは思えません。その安さは、どこかでだれかの安く不当な労働力によって成り立っていることは明らかだからです。(それはどこかのアジアの国の話ではなく、日本国内でも同様です。)
サトヴィックな衣服とはシンプル、だけれども上質でオリジナル、着る人も、作る人も、売る人も幸せになる服です。将来的には、こういった服は、徐々に増えていくと思われます。
(ただ、マスコミはあまり取り上げないかもしれません。)
と同時に、私たちは、サトヴィックな「気質」も取り入れなければなりません。
すなわち、どういうことかというと、買う前に以下のようなことを考えるのです。
①私はそれを本当に必要としているのか。
②私はそれなしにで生きることはできるか。
③私は今までもそれなしでずっとやってこられたが、なぜ、これからもそれなしで生きられないのか。
④私がほしいものは長持ちするものか。
⑤長持ちするように作られているか。
⑥環境に優しい素材と製造方法でできているか。
⑦見た目にも美しいものか。
このように自分で自分に問いかけます。そして、OKが出て、初めてそのものを手に入れます。
私たちは、ずっとたくさんのものを持つほうが幸せだと思い込まされてきましたが、実際は違います。
多く持てば持つほど、気が滅入り、憂鬱になるのです。
サトヴィックな衣服、そしてサトヴィックな気質が私たちにもたらすものは、幸福です。
このことは、インド人の哲学者、サティシュ・クマールが提唱していることであり、
と同時に、私がファッションとかかわってきた長年の経験によってたどりついた考えなのです。
<参考文献>
「宇宙に融けこむエコ・ハートフルな生き方」サティシュ・クマール エハン・デラヴィ・愛知ソニア訳
2009年 徳間書店