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2013年1月14日月曜日

光を味方につける

洋服と光、すなわち照明であるとか、太陽光の関係については、
あまり語られることがありません。
しかし実際のところ、洋服と光は、大いに関係があります。

メイクアップ・アーティストや、インテリア・デザイナー、または写真家の方々は、
光について、多くを学んでいらっしゃるでしょうから、
太陽光と人工の照明の違いについて、熟知していらっしゃるでしょう。
そして、それらの光によって、ものが驚くほど違うように見えることも、
心得ていらっしゃると思います。

服も、同じように、光の具合によって、見え方が大きく違ってきます。
服が照らされる光は、大きく分けて太陽光と人工の照明とに分かれます。
そして、人工の照明は、蛍光灯、白色電球、LEDライト、ハロゲンなどに分かれていきます。
どれも、物体の見え方は異なります。

この中で、いわゆる服の素材の質感を最もはっきり見せるのは、太陽光です。
太陽の光にさらされると、素材のよしあしがはっきりします。
特にウールの場合、それは顕著で、いい素材は独特のぬめりをもった質感がはっきりわかりますし、
悪い素材は、ずっとラフな、つやのない感じになります。
また、色としては、太陽光の下の黒も、素材感があらわれやすい色の1つです。
いい素材の黒は、太陽の光の下で、すばらしく光り、しっとりした光沢があります。
服ではありませんが、黒い革靴やバッグも同様に、太陽光の下だと、
素材のよしあしがはっきり見てとれます。
コットンや麻も、やはり太陽光に当たると、素材がよくわかるのですが、
ウールほど顕著ではありません。
近くによればわかる程度で、その道に詳しい人にしか、わからないほどの差の場合もあります。
太陽光の下で、一番みじめに見えるのは、化学繊維でできた、安いベロアやベルベットです。
気をつけないと、その素材を身につけている人のことさえ、安っぽく見せます。
その他、ポリエステルは、あまり見え方の変わらない素材、そしてシルクは、太陽光の下でも、美しく見える素材です。

次に人工の光です。
皆さんもよくご存じのように、蛍光灯の下では、どんなにすばらしい素材を置いても、
さほどよくは見えません。
独特の青白い光が、影を均一にするせいもあり、よいものもよくは見えないかわりに、
悪いものも、その悪さは目立ちにくいです。
すべてのものが均一に見える、それが蛍光灯の光です。

白熱電球は、蛍光灯に比べれば、ずっとすべてのものの、あらを隠す照明です。
こちらは、はっきり言って、どんなものでも、ある程度、美しく見せます。
白熱電球に、部分的にハロゲンランプを使えば、
レストランの照明のようになり、きらきら感が増しますので、
より一層、素材のあらは見えません。
悪い素材でも、それなりにちゃんと見えます。

最近、メインの照明になりつつあるLEDライトは、蛍光灯よりは多少ましではあるものも、
独特の色調の暗さがあり、服ものっぺり見えます。
あらもわからないかわりに、美しくも見えないという感じです。

ここまでで、光と素材の見え方の関係の説明は終わりです。
どんな光で、素材がどのように見えるか把握しておけば、
それを応用することができます。

皆さんの中には、演劇やライブ、コンサートなど、実際の舞台をご覧になったことがある方々が多いと思います。
そんなに大げさなものではなくても、子供のころのピアノの発表会であるとか、
バレエの発表会など、何かしら舞台照明というものを、一度は見たことがあるでしょう。
あれを思い出してみてください。
舞台の上では、あんなに素敵に輝いていた衣装も、
そのまま外に出ると、意外なほど、安っぽく見えます。
さっきまで舞台の上では、あんなにきらきらしていたのに、光が変わった途端、まるで違うもののように見えたことでしょう。
高級なシルクのサテンでできたドレスだとばかり思っていたのに、
太陽の下でよく見たら、化繊の安いサテンだったなんていうことも、あったと思います。
舞台の照明とは、そういうものなのです。
どんなに安い素材でも、どんなにフェイクの宝石でもリアルに見せる、美しく見せる、
それが舞台照明です。
そして、それと同じような照明が使われているところが、レストランや劇場のロビー、バー、
あるいは結婚式場、高級ブティックなどです。
そこでは、どんなものも美しく見せる照明を使っています。
ということは、レストラン、劇場、ライブ、コンサート、バーなどへ、
少しいつもと違うおしゃれをしていきたい場合、
または、少しきらきらさせたい場合、
多少フェイクのものを身に付けたとしても、
それはそれなりに美しく見せることが可能であるということです。

逆に、太陽光の下で、少しいつもよりおしゃれに見せたい場合は、
決して、劇場の照明の下でこそはえる服を着てはいけません。
まさに、白日のもとに照らされて、フェイクであることがばれてしまいます。

ですから、太陽光が美しいレストラン、昼間で太陽光の入る結婚式会場などでは、
本物で、かつ上質なものを身につけるよう、注意しましょう。
そういった上質な素材は、太陽光に負けることなく、
その美しさを発揮します。
もちろん、本物のゴールドや、ダイヤモンドも、最高の輝きを見せ、
それがフェイクではないということがわかるのです。

「すべてこの世は舞台」とは、シェイクスピアのセリフですが、
まさにそのとおりです。
あなたは常に、何かの光に照らされています。
それは太陽のときもあるでしょう、
蛍光灯のときもあるでしょう、
スポットライトのときもあるでしょう、
月光のときもあるでしょう。
「おやすみなさい」と言って、ベッドに入るそのときまで、
何かしらの光が、あなたを照らしています。

そのことを忘れないで、今日着る服を選んでみてください。
あなたは、あなたという人生の主人公なのですから、
主人公が最も輝くように、照明まで考慮しながら服を選ぶ、
それも、あなたがあなたのためにできる、大切な仕事です。
あなたが生きる毎日の、すべての小さなシーンには、
一つ残らず、光が当たっています。
そしてきっとそれを、どこかで誰かが、見守ってくれていることでしょう。
たとえそれに、あなたが気付いていないとしても。