ウエストの位置とふつうに聞いたらば、
胴体の一番細いところだと多くの人が思われるでしょう。
しかし、洋服においては、ウエスト位置は必ずしも胴体の一番細いところに設定されているわけではありません。
ハイウエスト、
ジャストウエスト、
ローウエストなど、
大きく分けて3か所に分類されます。
ジャストウエストだけが胴体のちょうど細いところにくるウエストで、
ハイウエストはそれより上に、ローウエストはそれより下になるわけです。
なぜウエスト位置をそのように上下させるのかというと、
全体のシルエットのためと、見せ方を変えるためです。
ここのところ、ジーンズをはじめとするパンツは、ずっとローウエストでした。
なぜならジーンズとパンツのシルエットがタイトだったからです。
なぜタイトだとウエストがローになるのか、
ほとんどの人がわからないと思いますが、
それにはちゃんと理由があります。
ニットではない布帛でパンツを作る場合、
ウエストとヒップの差を何らかの形で解消しなければなりません。
通常は、脇線とダーツまたはタックで、その差を分散させて、カーブを描きます。
しかし、タイトであればタイトであるほど、
ダーツの幅が大きくなり、うまくカーブが描けなくなるのです。
ハイウエストでタイトなパンツというもののほとんどは、
ニット、またはストレッチ素材のもの以外、ないと思います。
ふつうの伸縮性のない布で、あれだけのカーブを出そうとすると、
無理が生じて、きれいなラインが出せません。
そのため、布帛のタイトなパンツは、ウエストを下げることによって、
ウエストとヒップの差を小さくする以外、方法はないのです。
そうすれば、ダーツの必要がなくなります。
しかし、パンツのシルエットがタイトでなくなれば、
ウエスト位置を上にずらすことは可能です。
だんだんと、行きすぎたタイトから戻りつつある今、
パンツのウエスト位置もジャストウエストに戻ってきています。
一方、ハイウエストは何のためにウエストを上部に移動させているのでしょうか。
ここ数年、ガーリーという、少女志向の服が流行していましたが、
ガーリー・テイストの服、特にワンピースは、かなりウエストを通常の位置より上に設定しています。
それは何のためかというと、幼い印象を作るためです。
小さい子供のワンピースを思い浮かべてみてください。
たとえば、「アルプスの少女ハイジ」のハイジのような。
あのワンピースは、かなりウエストが上にありましたね。
子供というのは、ウエストのくびれがないので、スカートが下がっていきます。
ですから、ウエスト位置はかなり上に設定されているのです。
そしてそれが翻って、幼く見える要素になっています。
ガーリー・テイストの意図的なハイウエストは、印象を幼く見せるためのものでした。
しかしここへきて、ガーリー・テイストの流行も終わりつつあります。
上にあがっていたウエスト位置も、だんだんと通常の位置に戻るでしょう。
大人の女性の表現のためには、それが必要です。
たしかに若干のハイウエストは脚が長く見える効果があります。
しかし、行きすぎたハイウエストは、徐々にもとの位置に近づいていくでしょう。
シルエットが変化する今の時期、
ウエスト位置が変わってきています。
ワンピースやコートのかなり上に設定されていたウエストは下に、
そしてタイトだったジーンズやパンツのウエストは上に、です。
そして予想されるのは、ハイウエスト気味のタックパンツや、
ローウエストの1920年代風のワンピースの登場です。
ウエスト位置ひとつをとってみても、流行があらわれています。
これから服を購入する場合、その点もチェックしてみてください。
特に秋冬もののコートはチェックが必要です。
あまりにもジャストウエストから離れたウエストは、
なんとなく時代からずれた感じがすると思います。
流行は適度に取り入れるのが安全です。
そうしないと、それが過ぎ去ったとたん、すべて否定されてしまいます。
今まで白と言っていたものが、黒になります。
そしてそれは単なる気分の問題です。
長く着られるもの、着たいものを選ぶときには、
流行から適度に離れる必要があります。
流行は、あなたを裏切ります。
それがいちばん素敵だと思わせて、
ほんのちょっと後にはしっぺ返しされます。
裏切らない服が必要です。
流行はあなたの上ではなく、下にあるのです。
まちがっても、主導権を握られてはなりません。
ただの情報は、本当のことを教えてはくれません。
それを見抜く目を養いましょう。
いつだって、どこだって、それがなにより重要です。