最近、私の周囲でもにわかに古着がブームです。
理由はいろいろ考えられますが、
推察するに、最近の似たようなデザインで、かつ決して高いとは言えないクオリティの服の氾濫と、それらに満足できない人たちの要望、そして古着を扱うショップの増加、ネットを通した古着の売買が可能になったことなどが考えられると思います。
しかし多くの人が漏らすのが、
古着選びの難しさです。
古着をどうやって選べばいいのか、そして買えばいいのか、
考えてみたいと思います。
かくいう私も、昔からヨーロッパへ行った折には、必ず古着屋をのぞいていました。
単純に古いものをいろいろ見るのが楽しいからではあるのですが、
いつも見ているだけで、ヨーロッパで古着を買ったことは一度もありませんでした。
理由は、選ぶのも買うのも難しいからです。
では、そんな選ぶのも買うのも難しい古着と向き合うにはどうしたらよいでしょうか。
まず古着を選ぶ際にはよいものを選ぶ鑑識眼と
衣服の素材、構造、ブランドなどに関する知識が必要です。
何の知識もなく古着を見ても、何がいいものなのか、自分で見分けることは困難でしょう。
最低限、素材の知識は持っておく必要があります。
大まかに言えば、それが自然由来の素材なのか、化学繊維なのかということです。
古着の場合、タグがない場合もありますので、
さわってみて、大体それが自然由来の素材なのか、化学繊維なのかがわかればベストです。
また、膨大な中から自分が探す1枚を見つけるためには、
自分はどんなものを探しているのか、
どういう基準をクリアしたら買うのかというポイントをはっきりさせておかないと
何も決断することができません。
自分が具体的にそのときに何を探しているのか、
例えばトレンチコートを探しているのか、アランニットを探しているのか、
色はネイビーなのかベージュなのかなど、
そしてどのレベル、つまり傷み具合はどれぐらいまでで、
価格は幾らまでなら買うということを細かに事前に決めておかないと、
結局は見ているだけで選べないことになります。
そうならないためにも、古着は目的を持って探したほうがよいでしょう。
ほとんどの古着を扱うショップでは膨大な量の衣服を販売していますから、
ただ漫然と一点ずつ見ていったのでは、いつまでたっても望みのものを見つけることができません。
ただ見て楽しむために古着屋へ行くのでなければ、
事前に自分が探しているもの、欲しいものの条件を決めておくとよいでしょう。
次はどこの古着屋で買うかについてです。
古着屋にも種類がいろいろあり、ヨーロッパのものを扱うところ、アメリカのものを扱うところ、日本の古着など地域ごとの違い、
また、60年代から70年代といったヴィンテージのものを扱うところと、
ごく直近の2000年代以降のものを扱うところなどさまざまです。
これも事前にショップの情報を調べて、自分が探しているものがありそうなところへ行くとよいでしょう。
傾向としては、特定のブランドのヴィンテージを扱うところは状態もよく、価格も高めです。
日本の古着については、80年代、90年代の日本の古着はクオリティが高い傾向にあります。理由はその時代の日本で売られていた服そのもののクオリティが今よりずっと高かったからです。ですから、これら80年代、90年代の日本の古着を扱うショップも価格は高めの傾向にあるでしょう。
一方、同じ日本でも2000年代以降を扱うショップの古着は、総じて全体のクオリティは低く、安い傾向にあります。そのようなショップはショッピングセンターなど、気軽に行けるところにありますが、あの中から掘り出し物を見つけるのは、かなり難しいでしょう。
例えば最初からヴィンテージのバーバリーのコートが欲しいのなら、
ネットで検索して、それらを扱っている店舗へ行くとよいでしょう。
そういったものはどこでも扱っているわけではありませんので、事前のリサーチが必要です。
鑑識眼はさておき、自分である程度の知識を身につけておく、
どういうものが欲しいのか決めておく、
行くショップを限定する、そこまでできたら実際にショップへ行きます。
ショップへ行ったら、まずは探している形のものだけを見ていきましょう。
ピーコートを探しているのなら、ピーコートだけをチェックします。
古着屋は、一般のショップと違って、扱う衣服の色も形もばらばらで、
一点一点すべて違うわけですから、 探しているものを見ていくのがベストです。
あまりほかのものに目移りしていると、集中力も途切れ、
何が欲しかったのか、どういうものがよいのかだんだん自分でもわからなくなりますから、
膨大な点数が並んでいたとしても、目当てのものだけをさっとチェックして、
買えそうなものがあれば即座に試着しましょう。
そして試着して少しでも納得いかない点があるなら、
次のショップへ行きましょう。
また、買うと決めてショップへ行ったとしても、必ずしも望みのものがあるとは限りません。気に入ったものがないのなら無理して買うのはやめましょう。
そこでぴんとくるかどうかは、自分の感覚だけが頼りとなります。
古着の場合、ほんの少しでも違和感があると、その後、着なくなる可能性が新品のものより高いです。
やはりそれは古着なので、よほど気に入ったものでなければ、外へ着ていくことはないでしょう。
ちょっとでも気に入らない、何か変だと感じたら、買わないに限ります。
古着を選ぶのも訓練です。
初めて行ったショップで、望みどおりの自分にぴったりの一着が見つかる確率は低いでしょう。
何となく違うと感じながらも、
あきらめず、根気良く見ていけば、
そのうち目が慣れてきて、膨大な中から必要な1枚が見つかるようになります。
それは新しい知覚の開発です。
今まで使っていなかった能力の一部です。
訓練して初めて使えるようになるものですので、
興味があるのでしたら、見る訓練を続けてください。
古着選びは、いわばテストみたいなものです。
今までどれだけ自分で鑑識眼を養ってきたか、
どれだけブランドや素材についての知識があるかが試されます。
またもう一方で、ぶれない自分があるのかどうかもそこでは要求されます。
誰かがお勧めしてくれるわけでも、
誰かがお墨付きを与えてくれるわけでもありません。
必要なのは、自分自身への信頼です。
信頼しないことには、何も選ぶことができません。
自分を信じて今まで育ててきた人は、
ぜひ古着屋をのぞいてみましょう。
あなたに選ばれるための素敵な一着が、
あなたとの出会いを待っていることでしょう。