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2013年8月26日月曜日

試着でのチェックポイント

※YouTubeに試着のチェックポイントの動画をあげました。ぜひごらんください!

オーダーメイドで服を作るという習慣が遠い昔のものになって以降、
わたしたちは、否応なく、プレタポルテ、つまりフランス語ではprêt-à-porter、
そして英語ではready to wearという、すぐに着られるという意味の既製服を着ることになりました。
そのことにより、服を自分のサイズに合わせるのではなく、
自分のほうから服に近づいていかなければならなくなりました。

既製服を選ぶ場合、まずサイズというものを確認します。
日本だったら、7号、9号、11号というような奇数番号のサイズ、
そのほかヨーロッパの36、38、40、
またアメリカの4、6、8などというものなど、
現在、日本で売られている服のサイズはさまざまです。

日本の場合、サイズには基準があって、
たとえば標準の9号では、バストが83、ウエストが64、ヒップが91などと、
決められています。
しかしそのサイズのまま既製服は作られるのかというと、
そういうわけではなく、メーカーはこれらに肉付けをし、
この基準を下回らないように、バスト寸法にゆるみ分を入れて、
服を作ります。
そのことによって、同じ9号でもメーカーやブランドによってばらつきがあり、
必ずしも同じ寸法で作られているわけではありません。
サイズはあくまで目安でしかありませんし、
あくまで標準と考えられる体型なのであって、
誰もが標準のプロポーションではないので、
つまるところ、試着が必要になります。

昔は、見立てのプロとも言える販売員さんたちが数多くいて、
サイズの合わないものを無理に買わせようとはしませんでした。
しかし、最近の傾向は、そもそも服というものに対する知識が乏しく、
とにかく売ればいいという姿勢があからさまの販売員の方々も多く、
そういった方たちに言われるがままに服を買ってしまうと、
とんだ失敗をすることになりかねません。
そうならないためにも、試着をした際に、一体どこをチェックすべきなのか、
それぞれが覚えておいたほうがいいでしょう。

まず、誰もがチェックするのは袖丈、裾丈などの丈でしょう。
袖が長い、裾が長いなどは、
洋服の知識がなくても、誰でも判断できます。
しかし、それでもたとえばパンツ丈を決める場合は、
それにあわせる靴のヒールを考慮しなくてはなりません。
ヒールがフラットなのか、8センチなのかによって、
美しく見えるパンツ丈は変わってきます。
ですから、試着をする際には、そのパンツにあわせる靴をはいていくか、
または同じ高さのヒールの靴をはくべきで、
決して、試着室に備え付けてある、簡単なミュールですませるべきではありません。
ここまでは、洋服の知識がなくても、少し考えればわかることです。

ここからは、洋服を作る側からは当たり前でありながら、
一般の人たちにはあまり知られていないチェックすべきポイントです。

トップスのサイズは、すべてバストサイズで決められています。
ですから、体躯がいくら細い人であっても、
バストが大きいならば、サイズは大きくなっていきます。
よって、まずチェックするのはバスト回りです。
バストから、横に向かってしわが走っているのなら、
それはサイズが合っていないという証拠です。
洋服は、わざと横に入れたタックやギャザーのデザインでない限り、
横じわはすべて、サイズが合っていないという意味です。
たとえば、ブラウスのバスト近くのボタン位置から、水平にしわが走っていたら、
それは選んではいけないブラウスです。
同様に、斜めじわもサイズが合っていないという証拠です。
ニットなどでも、バスト寸法が足りないと、
脇の下からバストにかけて、斜めにしわが寄ります。
それはバスト寸法が足りないという意味です。
袖丈やパンツ丈、スカートの裾丈などは、お直しが可能ですが、
バスト寸法を大きくすることは不可能です。
ですから、これらは選ぶべきではありません。

また、ボトムのスカートやパンツでも、
腰回りに横じわが出てきたら、
それはヒップの寸法が足りないということ。
特にタイトスカートで横にしわが走り、
知らない間に上へずれ上がっているものは、
完全にヒップが足りていません。
ですから、これらもサイズが合っていないということになります。

ジャケットやコートになってくると、
袖や丈の長さだけではなく、肩の傾斜をチェックする必要が出てきます。
肩傾斜は、メーカーやブランドによってまちまちで、
傾斜がきついものだと、首元が浮きますが、
逆に傾斜が緩すぎるものだと、肩先があまり、
そのあまり分がだぶつきます。
ジャケットやコートの肩傾斜もお直しの対象にはなりませんので、
肩の傾斜があわないジャケットやコートを選んではいけません。

そしてすべての服でチェックしなければならないのは脇線です。
脇線は垂直に下へ落ちなければなりません。
ブラウスでもスカートでもジャケットでもコートでも、すべてそうです。
もし前へずれていたら、前側が足りないということですし、
後ろへずれていたら、後ろが足りないということです。
ストンとしたドレスなど、横向きをチェックして、脇がまっすぐ下におりているかどうか確認してください。
脇が曲がってしまうと、必ず前、または後ろの裾が上がってしまいます。
つまり、どちらかの寸法が足りないということです。
この前、雑誌のモデルが着ているドレスの前側の裾が5センチほど足りない状態のままのページを見つけて、大変驚きましたが、これは明らかにバスト寸法が足りていないということです。
だから、そのまま着てはいけないし、選んではいけないものです。

また、ドレス、ジャケット、コートなど、どれについても、
パターンが悪いものは、後ろへ抜けていったり、
肩が異常にこったりするということが言えます。
これをチェックするためには、着てみて、2、3回、軽くジャンプするような動作をしてください。
試着室の中では可能だと思いますので、ひざをゆるく曲げたりのばしたりするのです。
そのとき、肩線が前や後ろにずれる服はパターンが悪いです。
着ていると、着物のように後ろへ抜けるか、
着心地が悪くて、途中で脱ぎたくなるような服です。
買ったら、必ず後悔します。

これらすべてチェックしたら、最後はドレープです。
トップスでもボトムでも、流れるような下に落ちるドレープはすべてよいものです。
タックをとった後にできるドレープや、
フレアスカートのような布を多く使うことによるドレープなど、
自然に下に落ちていれば問題ありません。
横に流れるようにできているようなデザインは別ですが、
そうでないもので、不自然にドレープが流れるようでしたら、
それはどこかが合っていない証拠です。
残念ながら、最適なサイズの服ではありません。

以上がひととおりの試着の際のチェックポイントです。
試着でチェックするのは、丈だけでは決してないのです。
特に小さ過ぎるサイズは大きくすることはできないので、
選んではいけません。

ここ10年ぐらい、タイトなシルエットをストレッチ素材で見せてきました。
そのため、ダーツ、タック、ドレープなど、
服としてのテクニックは、あまり使われない傾向にありました。
ストレッチ素材を入れてしまえば、横じわがごまかせます。
しかし、これからは、ストレッチでごまかせない、
ダーツ、タック、ドレープを使った服が多く出てくるでしょう。
また、シルエットも大きくなってくるので、
どのようにドレープが出るのかも、服がきれいに見えるかどうかのポイントになります。

まずは自分の体型の特徴を知る。
それはほとんどの場合、標準ではありません。
実際には、標準の体型の人など、いません。
みな骨格、肉付き、脚や腕の長さが違うのです。
違っているのが当たり前です。
それをあたかも、ほとんどの人が同じであるかのように、
作られた基準のものを着るということが既製服ということです。
ですから、ぴったりの既製服など、ありません。

ぴったりなものなどないのですから、
どこかで妥協は必要です。
だけれども、すべて妥協することはないのです。
絶対にはずせないポイントが誰にとってもあるはずです。
それは自分の長所がよく見えるようになるポイントなのか、
それとも短所が目立たなくなるようなポイントなのか、
それは人それぞれでしょう。
けれども、決して妥協してはいけない一線は、守らなければいけません。
そうしないと、あなたは服に負けます。

服のほうが強いと言ってきます。
あなたは負けなければいけない、
合わせるべきだと、強要されます。
だけれども、それに屈することはありません。
そこで負けたら、美しくありません。

おしゃれであるということは、服との戦いに負けないということです。
負けを強要するような服は、選ばないということなのです。

2013年8月19日月曜日

コーディネイトの新しいバランス

2012年以降、ファッションのトレンドは、完全に新しい流れへと入りました。
トレンドが変わるということは、服のシルエットが変わるということです。
当然のことながら、服のシルエットが変われば、
コーディネイト全体のバランスも変わってきます。
この時期、新しいバランスを作ることが、おしゃれに見えることの条件になってきます。

トレンドが変わる時期は、もちろん過去にもありました。
最近では、90年代後半から2000年に入るころ、
それまでのだぶだぶしたシルエットから、
急激にタイトなシルエットになっていった時期です。
おしゃれに敏感な人たちは、流行をいち早くかぎ分け、
ぶかぶかなパンツを捨て、スキニー・ジーンズをはき、
ストレッチの入ったぴったりしたTシャツをトップに持ってきました。
それは今まで見たことがないシルエットで、
大きな服にそろそろうんざりしていた人たちには、
衝撃的なほど、新鮮にうつったのでした。
それと同じ現象が、今、起きています。

今回は、ぴったりタイトが長く続いたせいで、
その反動で、全体のバランスが大きくなります。

服の新しさというのは、ものとしての新しさの問題だけではないのです。
体と布の間にできる空気の分量がどれだけ新しいものなのか、
そちらのほうがより重要です。
そして、明らかに全体のシルエットが変化してしまった今、
古いトレンドを引きずった、ものとして新しい服を買っても、
それは、新しいとは言えません。
問題なのは、その服で、どれだけ新しいバランスのコーディネイトできるか、
ということなのです。

これからは、2000年にはおしゃれに見えたコーディネイトのバランスは、
もうすでにおしゃれには見えません。
あのときはどんなにそれが格好良かったとしても、
今はもうそうではありません。
それがファッションであり、流行です。

コーディネイト・ブックのコーディネイトは、
発売されたときにもっともおしゃれなのであって、
それが永遠に続くわけではありません。
コーディネイトにおいても、シルエットとバランスは、ゆるやかに変化していくからです。

さて、これから約10年は続くであろう新しいバランスは、
体にぴったりフィットしたものでないことは明らかです。
ビッグであることは確かなのですが、
かといって、80年代のビッグ・シルエットとも違います。
80年代のビッグ・シルエットは、マスキュリンの要素が強いものでしたが、
次の10年、強調されるのはフェミニティです。
ですから、必ずしも、ビッグ・シルエットのコートやジャケットに、
マニッシュな靴をあわせるわけではありません。
細いピンヒールは、まだ健在です。


また、50年代から60年代、ディオールに代表される時代のシルエットにも、近いものがあります。
けれども、やはりそれとまったく同じというわけではありません。
あの時代の清楚で、きっちりしたイメージと、
これからのもっとおおらかで、混沌としたイメージでは、
生まれてくるデザインも違うでしょうし、全体のバランスもほんの少しですが、
違ってきます。

これはまだ私もはっきりつかめているわけではありませんが、
たぶん、何か逸脱した要素があると思います。
そして、それは「役に立つ」からは、ほど遠くなります。
ドレープやフレアなど、無駄な要素が多くなります。
トレーナーにフレアスカート、ハイヒールのそのバランスは、
どう考えても、走るのには適しません。
機能と効率、経済性とは逆の方向です。
そしてそれらは、わたしたちが長いこと、価値を認めてこなかったものです。

ここで豊かさは復活します。
そうでなければ、それは嘘です。
機能的でもない、効率も悪い、経済の発展に寄与しない、
その豊かさが、再び見出されるときです。
それを私たちは、無意識にキャッチして、
バランスで表現します。

行き場のない世界で、
絶望の果てに見つけたのは、
長いこと忘れ去られ、見捨てられた、
本当の豊かさです。

本当におしゃれな人とは、それをいち早くキャッチする人たちです。
眠っている人たちを目覚めさせるため、
先駆者は、新しい価値を提示します。
新しいバランスが定着するには、これから何年かかかるでしょう。
しかし、必ずそれは定着するのです。

これから始まる新しい時代のために、
新しいバランスを見つけてください。
自分の心に引っかかる、新しいバランスのコーディネイトを見つけたら、
早速、試してみてください。
その一歩こそが、新しい時代を作ります。


2013年8月5日月曜日

パーカー

パーカーは、もっとも多くの人に浸透したスポーツ・ウエアであると同時に、
スポーツ・ウエアの枠をこえて、もっとも進化したアイテムであると言えます。
それはポロシャツの比ではありません。
老若男女、幅広く、誰でも、どんなシチュエーションでも着られる、すぐれたアイテムでしょう。

モードの世界においても、パーカーはたびたび登場するアイテムですし、
最近は、デザイン、素材ともかなり進化したものが出てきました。
ここまできたなら、これまでそのカジュアルさゆえにパーカーを敬遠していた方たちも、
難なくワードローブに取り入れることができるだろうと思います。

もうすでに何度も書いていますが、
カジュアルなアイテムを大人が取り入れるには、いくつかの方法があります。

たとえば、スポーツ・ウエアのブランドが作る、
従来からある、ごくふつうのデザインのパーカーは、
まさにスポーツをする際に適したものです。
デザインや素材はスポーツ用に考えられています。
こういったものは、まさにスポーツや、それに近いことをする際に着用するか、
または、日常においても、ごくカジュアルな場面での着用がふさわしいでしょう。
ご近所への買い物といった際には、なんら問題ないと思います。

一方、普段着ではなく、少しおしゃれをしたい場合には、
デザインにこるか、素材を上等なものにするか、していけばよいでしょう。

パーカーのデザインも、最近はかなりバラエティが出てきました。
ポンチョ風の袖口が広くなったタイプや、
ファスナーではなくボタン使いのもの、
あきがライダーズ風のもの、
裾をドローストリングスにしたものなど、
オーソドックスなパーカーにひとひねり加えたものが数多くあります。
プラダ・スポーツなどの、ハイブランドのスポーツよりのウエアの中にも、
デザイン性に優れたものがあります。
こういったものは、スポーツのためというよりも、
完全におしゃれのためのものですので、
カジュアルすぎるのを嫌う場合には、
このように何かしらデザインされているパーカーを選ぶとよいと思います。

もう一つは、上質な素材を使ったパーカーです。
代表的なものは、カシミアニットのパーカーでしょう。
パーカーをニット地で作ること自体、おしゃれなわけですが、
それをカシミアにすることによって、大人にふさわしいアイテムにパーカーが変身します。
そのほかにも、素材メーカーとして有名なファリエロ・サルティの生地を使ったものなども、
おしゃれ度は高いです。
これら、高級素材を使用したパーカーは、
形がごくオーソドックスなものであったとしても、
その素材感により、もはや単なるスポーツ・ウエアではなくなります。
そして、そういったものこそが、大人が着るにふさわしいパーカーなのです。

これらをコーディネイトする際に注意すべきなのは、
全体のフェミニンとマスキュリンのバランスです。
パーカーは、決して女性的なアイテムではありません。
それをそのままジーンズにあわせるのでしたら、
インナーはフェミニンな要素の強いものにする必要がありますが、
ワンピースの上に羽織る場合は、甘さの中に適度な辛さがプラスされ、
全体のバランスがちょうどよくなります。

パーカーという、一見、なんの変哲もない、ごくごく平凡なデザインのものを、
おしゃれに着こなすことができたら、それこそが、本当におしゃれであるということです。
全体のボリュームのバランス、
色の組み合わせ、
素材、
デザイン、
アクセサリーや小物との兼ね合いなど、
平凡なアイテムであればあるほど、きっちり詰めて構成していけば、
そのほうが、ごちゃごちゃしたデザイン性のあるものをたくさん着こむよりも、
すっきりおしゃれに見えます。

買う前に、まず色を決めて、素材と形を吟味しましょう。
簡単なものであればあるほど、簡単には買わないこと。
シンプルなデザインであればあるほど、こだわりを持って選ぶこと。
その繰り返しが、おしゃれ上級者への道です。

自分の感覚にぴたっとはまった、
シンプルなデザインのアイテムがワードローブにそろえばそろうほど、
無駄な買い物をする必要がなくなります。
遊ぶのはそのあとで十分、間に合います。

まずは自分の感覚を信じること。
おかしいと思ったら、疑ってみること。
人の意見に惑わされて、失敗する、その前に、
再び自分の中心、すなわちハートへ戻ってみてください。
ハートがどきどきするのなら、
それがときめきのどきどきなのか、
不安のどきどきなのか、よく見定めて、
最後は自分自身で決めましょう。

その感覚は、たぶん、合っています。
もうそろそろ、見えないものを察知する能力も養われたはず。
そうすれば、一目見た瞬間に、膨大な情報がダウンロードされます。
そして、それはいつだって、正しいものなのです。
初めに違和感を感じたならば、一切、拒否しましょう。
パーカー1枚から、それができるようになったなら、
あなたはもう近づいています。
すべてを見通せる目を持つ自分に。


2013年7月29日月曜日

ウエスト位置

ウエストの位置とふつうに聞いたらば、
胴体の一番細いところだと多くの人が思われるでしょう。
しかし、洋服においては、ウエスト位置は必ずしも胴体の一番細いところに設定されているわけではありません。
ハイウエスト、
ジャストウエスト、
ローウエストなど、
大きく分けて3か所に分類されます。
ジャストウエストだけが胴体のちょうど細いところにくるウエストで、
ハイウエストはそれより上に、ローウエストはそれより下になるわけです。

なぜウエスト位置をそのように上下させるのかというと、
全体のシルエットのためと、見せ方を変えるためです。

ここのところ、ジーンズをはじめとするパンツは、ずっとローウエストでした。
なぜならジーンズとパンツのシルエットがタイトだったからです。
なぜタイトだとウエストがローになるのか、
ほとんどの人がわからないと思いますが、
それにはちゃんと理由があります。

ニットではない布帛でパンツを作る場合、
ウエストとヒップの差を何らかの形で解消しなければなりません。
通常は、脇線とダーツまたはタックで、その差を分散させて、カーブを描きます。
しかし、タイトであればタイトであるほど、
ダーツの幅が大きくなり、うまくカーブが描けなくなるのです。
ハイウエストでタイトなパンツというもののほとんどは、
ニット、またはストレッチ素材のもの以外、ないと思います。
ふつうの伸縮性のない布で、あれだけのカーブを出そうとすると、
無理が生じて、きれいなラインが出せません。
そのため、布帛のタイトなパンツは、ウエストを下げることによって、
ウエストとヒップの差を小さくする以外、方法はないのです。
そうすれば、ダーツの必要がなくなります。

しかし、パンツのシルエットがタイトでなくなれば、
ウエスト位置を上にずらすことは可能です。
だんだんと、行きすぎたタイトから戻りつつある今、
パンツのウエスト位置もジャストウエストに戻ってきています。

一方、ハイウエストは何のためにウエストを上部に移動させているのでしょうか。

ここ数年、ガーリーという、少女志向の服が流行していましたが、
ガーリー・テイストの服、特にワンピースは、かなりウエストを通常の位置より上に設定しています。
それは何のためかというと、幼い印象を作るためです。

小さい子供のワンピースを思い浮かべてみてください。
たとえば、「アルプスの少女ハイジ」のハイジのような。
あのワンピースは、かなりウエストが上にありましたね。
子供というのは、ウエストのくびれがないので、スカートが下がっていきます。
ですから、ウエスト位置はかなり上に設定されているのです。
そしてそれが翻って、幼く見える要素になっています。
ガーリー・テイストの意図的なハイウエストは、印象を幼く見せるためのものでした。

しかしここへきて、ガーリー・テイストの流行も終わりつつあります。
上にあがっていたウエスト位置も、だんだんと通常の位置に戻るでしょう。
大人の女性の表現のためには、それが必要です。
たしかに若干のハイウエストは脚が長く見える効果があります。
しかし、行きすぎたハイウエストは、徐々にもとの位置に近づいていくでしょう。

シルエットが変化する今の時期、
ウエスト位置が変わってきています。
ワンピースやコートのかなり上に設定されていたウエストは下に、
そしてタイトだったジーンズやパンツのウエストは上に、です。
そして予想されるのは、ハイウエスト気味のタックパンツや、
ローウエストの1920年代風のワンピースの登場です。

ウエスト位置ひとつをとってみても、流行があらわれています。
これから服を購入する場合、その点もチェックしてみてください。
特に秋冬もののコートはチェックが必要です。
あまりにもジャストウエストから離れたウエストは、
なんとなく時代からずれた感じがすると思います。

流行は適度に取り入れるのが安全です。
そうしないと、それが過ぎ去ったとたん、すべて否定されてしまいます。
今まで白と言っていたものが、黒になります。
そしてそれは単なる気分の問題です。

長く着られるもの、着たいものを選ぶときには、
流行から適度に離れる必要があります。
流行は、あなたを裏切ります。
それがいちばん素敵だと思わせて、
ほんのちょっと後にはしっぺ返しされます。

裏切らない服が必要です。
流行はあなたの上ではなく、下にあるのです。
まちがっても、主導権を握られてはなりません。
ただの情報は、本当のことを教えてはくれません。
それを見抜く目を養いましょう。
いつだって、どこだって、それがなにより重要です。



2013年7月23日火曜日

マキシ丈ドレス

マキシ丈、つまり、す裾がくるぶしまであるドレスが復活してきました。
2013年現在、まだまだデザインという部分では洗練されていませんが、
これから徐々に進化していくでしょう。

言うまでもなく、マキシ丈のドレスは、フェミニティの象徴です。
2012年から始まった、女性性復活の動きは、
だんだんと人々の心の奥底に浸透し、
無意識にそういったものを選択します。
(もちろん、それに抵抗する方たちもいらっしゃいますが)

マキシ丈のドレスが想起させるものは、
当然ながら、女神です。
古代から、女神は長く揺れる裾と、布をたっぷり使ったドレープを多用した、
薄地のドレスをまとってきました。
そのやわらかさは、女性の肉体を決して縛ることなく、
自由に解放させます。
そして、無防備なまでの繊細さが、実は強さのあらわれとして表現されています。
誰も女神を攻撃することはできないのです。

最近、多く登場してきたマキシ丈ドレスは、
まだ女神の領域まではいたっていません。
多くは、Tシャツをそのままただ長くしたような、
単純な形です。
素材も、コットンやレーヨンの天竺が多いです。
ただし、これまでの流行とは違って、
タイトではありません。
体につかず離れずのラインで、体の線をゆるくなぞります。

さて、このマキシ丈ドレス、どのように着こなすのが今の気分なのでしょうか。
ここでも何度か書いていますが、
通常、ファッションは、「100パーセント同じ」というのを嫌がります。
よく雑誌などで使われる「甘辛ミックス」というものは、
フェミニンとマスキュリンをほどよく混ぜたコーディネイトのことです。
もちろん、その手法も有効です。
古くからあるのは、ドレスにマスキュリン、または性別と関係のないアイテムを加える方法。
ドレスにライダーズ・ジャケットやGジャンなどは、そのいい例です。

しかし、本気で今の気分を表現するなら、
フェミニン100パーセントが適しているのではないかと思います。
なぜなら、時代が変わったからです。

いつもだったら、ドレスにパーカを羽織るところを、
あえてフェミニンなレースのカーディガンにしてみる。
または、薄いオーガンジーのブラウスを羽織るなど、
徹底的にマスキュリン要素を排除します。

それは確かに甘いです。
しかし、明らかに「ガーリー」とは違います。
「ガーリー」は、幼く、弱く見せる女性性でした。
しかし、女神は、同じ甘さでも、弱くも幼くもないのです。
それは威厳があり、尊敬される存在で、そのやわらかさゆえに、強いのです。

男性性を身につけることによる強さの表現という時代もありました。
思えば、近代、現代の服の歴史というものは、
女性がどのように男性の服を身につけるかというものであったと思います。
それは何のためでしょう?


1つは男性と同等の権利の獲得のためです。男性と同じようになるためです。

男女同権は女性に幸せをもたらします。しかし、それはいまだ達成されていません。
では、男性と同じようになることはどうでしょうか?

「男性のように」なっても、女性は幸せになれないでしょう。
なぜなら、自分以外のものになったとしても、決して幸せにはなれないからです。
しかも、それが決してなりえない誰かであったら、なおさらです。

今このとき、行きすぎたものの揺り戻しが起こります。
それは人々、特に女性の深層心理を突き動かします。
なぜかわからないけれども、ドレスが着たくなる。
それは似あうからとか、売っていたからとかのレベルの話ではありません。

女性が長いドレスをまとっていた歴史は長く、
それに比べてミニスカートやショートパンツなどは、
歴史の中ではまばたきするほどの時間でしかありません。
死んだ女神を黄泉の国から連れ戻すために、
わたしたちは、知らぬうちに長い丈のドレスを選ぶのです。

まだこの流れは始まったばかりです。
全体像は見えません。
しかし、確実に動き始めています。
見えないからないのではなく、
小さいから無力なのではなく、
少しずつ、けれども確実に、
このやわらかな力は浸透します。
冷たく固まった、コンクリートの塊を壊すことができるのは、
このかよわき小さな力です。
マキシ丈のドレスを選ぶ女性がふえたということは、
そのことの証明です。

2013年7月16日火曜日

真夏の重装備

真夏の重装備といっても、日焼け対策ではありません。
この暑い季節、なにを足していけばおしゃれになっていくのかの話です。

暑くなるにつれ、着るもの自体はどんどん枚数が減っていきます。
それは日本ほど暑くないと思われる西洋でも同じです。
気温が高いので、冬のように、どんどん上に重ねていくには限度があります。

減らしていくことにより、服装はシンプルになっていきます。
トップス1枚とボトム1枚、またはワンピースといった具合に。
では、そこで終わりにするのが洋服なのかというと、
どうやらそうではなさそうです。

海外のファッション雑誌のサイトや、ストリートスナップのブログを見ていると、
日本に住む人々のごく一般的な真夏の装いとは何か違うと思えます。
彼らの真夏の装いをよく観察すると、
少なくなった服のかわりに、アクセサリー類がどんどん上乗せされているのがわかります。
上からいくと、
帽子、サングラス、イヤリング、ネックレス、ブレス(バングル)、腕時計、指輪などが、
フル装備されているのです。

真夏は真冬と違って、コートで重装備することができません。
しかし、それでは薄い布地だけを身につけることになり、
何か心もとなくなります。
それを補うかのごとく、身につけていくのが、これらのアクセサリーのようです。
そして、それをすることによって初めて、真夏の装いは完成します。
それは、薄い生地の服だけを身に付け、肌の露出がふえて頼りなくなった、
からだと気持ちを強化し、保護するのに役立ちます。

たぶん、この点についての、つまり何をもって装いというものが完成するかという点について、
日本には正確な情報が入ってきていないのでしょう。
日本でこれら全部を身につけていたら、過剰な感じに見えるかもしれません。
それはたぶん、まだまだアクセサリー使いという点において、
洗練されていないということで、これらすべてを身につけても、
過剰さを感じさせることなく、シックに見せるテクニックはあるはずです。

また、だんだんと大人になるにつれ、
重要視されるのも、このアクセサリー使いです。
夏の衣服は、実際のところ、よしあしが見分けにくいものが多いです。
2万円のTシャツと2千円のTシャツの差は、素人ではわからないでしょう。
実際、値段と生地のクオリティは一致しないので、
ある程度以上の高額なTシャツについては、見分けるすべはありません。
そうなったとき、上質な感じを演出することができるのはアクセサリーのみとなり、
その重要性が増すのです。
フェイクやメッキではない、本物のゴールドやプラチナ、
手の込んだ細工のジュエリーなどは、大人だからこそ手に入れることができるものですし、
大人でないと似合わないものです。
そして、それらを重ねていくことによって、子供とは違うTシャツやワンピースの装いが完成します。
それなしで、違いを生み出すのは、逆にかなり難しい技術となります。

日本では、まだこのアクセサリーを重ねていく技術が洗練されていません。
雑誌にある、撮影のための、その場限りのスタイリングも、
実際の装いのためには参考になりません。
また、本物のアクセサリーやジュエリーを集めるのも、一朝一夕ではいきません。
ましてや、それが自分のために作られたものと思えるものを集めるには、
何年もかかります。

簡単ではありません。
しかし、チャレンジする価値はあります。
真夏の平均気温がどんどん高くなる日本では、
ある一定以上の気温になると、一気におしゃれから遠ざかる装いに傾きます。
それはもちろん仕方のないことです。
おしゃれより暑さ対策が重要な時期は、もちろんあります。
それでもなお、たとえば高級なレストランを予約して食事に行くときや、
コンサートや観劇、リゾート地のホテルへ宿泊するときなど、
ワンピースにサンダル、バッグだけで装いを完成させないで、
今まで身につけていなかった、何かを付け足してみてください。
ひとつ付け足したら、またもう一つというふうに、
どんどん付け足していきます。
そして、試行錯誤する中で、自分なりのぴったりのバランスを見つけていきます。
自分らしく、しっくり感じることができるかどうかをチェックするのです。

それらは明らかに不必要なものです。
機能的でもありません。
役にも立ちません。
ときには邪魔にさえなります。
それでもきっと、
それらはあなたの体を守り、心を支えるのです。
こころもとない、ひらひらした薄いシフォンのドレスのすそを、
海風がひるがえしたとしても、
腕に光る、そのシルバーのバングルが、
それでも大丈夫だと思わせてくれるのです。
知らない誰かから、心ない言葉を投げかけられたり、嘲笑されたとしても、
胸に光る、そのターコイズのペンダントが、
それらの言葉を跳ね返すのです。
だから、それらは真夏の重装備なのです。

重装備なしでどこかへ出かけて、疲れて家に帰ってくるよりも、
いつも大丈夫だと思える装備を備えて、お出かけしましょう。
そのほうが、きっと夏の思い出も楽しいものとなるに違いありません。






2013年7月8日月曜日

仕立てのいい服

仕立てのよさというものは、素材のよさと並び、
価値のある、品質のよい服の条件の1つです。
大人であるならば、
この、仕立てのよさというものを買うときの目安に加えてほしいと思います。

では、仕立てのよさとは、なにをもってそう言うのでしょうか。
簡単に言ってしまえば、手がかかっていればいるほど、
仕立てのよい服と言えます。
より多い工程、細かな手仕事などが、それに当たります。

まず、わかりやすいのが、裏の始末の方法です。
たとえば、シャツの場合、
仕立てのいいものは、縫いしろの始末が、すべて折り伏せ縫いという、
布の端をすべて中へくるむ仕様で作られています。
それに反して、手をかけていないシャツの裏側は、
ロックミシンで端をかがっただけです。
折り伏せにするという、手間のかかる工程を省くことによって、
縫製の工賃は安くなります。
もちろん、その仕立てのよさは値段に反映されますので、
折り伏せですべて縫いしろが始末されているようなシャツは、
価格が高くなります。

次はジャケットやコートの裏です。
ジャケットやコートの場合、総裏といって、
裏にすべて裏地がはられている場合は、
仕立てのよしあしの差はありません。
あるとしたら、その裏地部分に内ポケットが作られているかどうか、
またはたとえばコートの袖部分のみ、違う裏地が使われているかなどです。
確かにそれらは、丁寧な仕立てです。

差が出やすいのは、裏なしや半裏、また背抜きと呼ばれる、背中のみに裏がついたジャケットやコートの場合です。
こういった、裏地がはられていないジャケットやコートの裏側で、
もっとも丁寧な仕立ては、縫いしろをパイピングでくるむ、
パイピング仕立てと呼ばれるものです。
すべての縫いしろを、サテンのバイアステープなどで、丁寧にくるまれているものは、
仕立てのいいジャケット、コートと言えます。
逆に、安い仕立てのものは、縫いしろにロックミシンをかけたのみか、
または、そのロックミシンを内側に折り込んでいるのみの仕立てです。
パイピング仕立てと、これらロックミシンによる始末では、
工程の数がまったく違うため、工賃に大きな差が出ます。
もちろん、手間のかかるパイピング仕立てのほうが工賃は高いです。

そのほか、仕立てのいい服の特徴として、手縫いによるステッチがあります。
たとえば、コートの襟の8ミリほど内側を、ぐるりと星止めと呼ばれる、
小さなステッチを入れる仕様などは、
手仕事でしかできませんので、工賃の高い仕様です。
同様に、手縫いによるステッチも、1つ工程が多い仕様ですので、
丁寧な仕立てです。

シャツを人前で脱ぐ機会は、ほとんどないと思いますが、
(え、ある?)
ジャケットやコートなどは、誰かの前で脱いだり、
またレストランへ訪れた際など、人の手に預けたりする機会があります。
そのときに、この仕立てのよさが、裏側を見た人たちに伝わります。
レストランやホテルでは、それを見て、私たちを値踏みします。
もちろん、それだけではなく、
自分自身にとっても、丁寧な仕立てのジャケットやコートを着るという行為は、
とても気分のよいものだと思います。

ある程度、大人になったならば、
もちろんそれがいつなのかというのは各人にお任せしますが、
こういった仕立てのいい服というものを、
ぜひともワードローブに加えていただきたいと思います。
そして、まだどういうものが仕立てのいい服かわからない方は、
ぜひとも勇気を出して、ハイブランドの店舗で、
コートの1着でも試着してみてください。
(もちろんアウトレットでOKです)
それなりの値段のものは、それなりの手がかけられているものです。

自分が毎日着るシャツやジャケットやコートが、
どんなふうに作られるのか、少し想像してみてください。
それは確かに工業製品でしょうが、
人間の手でないと、できないのです。
現代の技術をもってしても、すべての工程を機械で作られた服は、
ほとんどありません。
丁寧な仕立てのジャケットやコートなどは特に、
人の丁寧な、時間のかかる、地道な仕事がないとできないのです。

もしそんな服を手に入れたら、
1年で捨ててしまおうなどとは思わないはず。
たいせつに扱って、長く付き合おうと思うでしょう。

仕立てのいい服とは、長い付き合いの友達のようなもの。
一緒にいると安心で、勇気が出てくる。
決して裏切ることはなく、いつもサポートしてくれる。
そして、その存在によって自分に自信が持てるようになるような、
そんな存在なのです。