さて、ここまで読んでいただいて、みなさんの中には、
何だか、聞いたことのない話ばかりだわ、と思われた方も多いのではないかと思います。
私も書きながら、こんなこと書いてある文章なんて、読んだことないなと自分で思いました。
で、なぜこういう考えにいたったかを、少し書いておきたいと思います。
私が最初にロンドンに行ったのは、20代のときでした。
初めての外国でしたし、ファッションの専門学校を卒業していた身としては、
よく雑誌のおしゃれスナップに出ているような人がぞろぞろいるに違いないと思いこんでいました。
しかし、初めてのロンドンでの感想は、
おしゃれスナップに出てた人なんて、どこにもいない・・・でした。
また、私が最初に行った90年代半ばは、ブランド物のバッグを持つ人など、ロンドンでは皆無でした。
そればかりでなく、上から下まで新しい流行の服でかためている人など、全く見当たらないのでした。
そのとき、何かがおかしいと思いました。
その次の年もイギリスに行きました。
そのときはロンドンだけでなく、地方も回りましたが、
ロンドン以上に、おしゃれスナップに出てたような人などいません。
ただ、よく見ると、おしゃれでないかといえば、そうではないのです。
みなそれぞれ自分なりのおしゃれをしています。
だけど、それは上から下まで新しい流行のもので飾られた、ぎらぎらするような感じとは違うのです。
もっと控えめで、だけれども、印象に残る。
だんだん目がなれてくると、そういうおしゃれな人たちが目につくようになりました。
その後、パリにも行きましたが、やはりロンドンと状況はさほど変わりませんでした。
はっと目を引くおしゃれな人は、ブランド物のバッグを持ってるわけでもないし、
全身、流行の服に身をつつんでいるわけではありませんでした。
つまり、私が雑誌で見ていたおしゃれスナップに出てくる人は、ごくごく一部のファッション関係者で、
普通の人たちは、もっと違う方法でおしゃれをしていたのです。
だけれども、日本でただ雑誌を見ているだけだった私は、そのことを知りませんでした。
そして、雑誌に出てくるような人たちこそが、おしゃれな人だと信じ込んでいたのです。
だけど、実際は違うのでした。
(つづく)