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2025年9月30日火曜日

デザイナーのメッセージ

ジャンポール・ゴルチエのこれまでの軌跡をダンスでダンスと歌と衣装で表現した
「ファッションフリークショー」の舞台を、
おととしに引き続き、今年も見てきました。

そこで描かれるゴルチエの人生は、
小学生のときのデザイン画はクラスメイトや先生からバカにされるところから始まり、
お金がないなか開催したデビューコレクションは、
ヴォーグの編集長にこきおろされるなど、
成功までの道のりは順風満帆なものではありません。
そこには常に他人からの批判と否定がつきまとうのです。

なぜバカにされるのか、
なぜ否定されるのか、
それはゴルチエがいつでもゴルチエであろうとしたからです。

ほかの誰とも違う
その人らしさを表現しようとするとき、
他人はなかなか認めてはくれません。

そこで人生は、
他人に認められるように自分を変える人生と、
他人に認められずとも自分を貫く人生とに分かれます。

どちらを選ぶかは自分で選べます。
決定権は自分にあります。

そしてファッションとは、
後者を選ぶ道であると、
ゴルチエは訴えます。
その人の美しさをその人らしく表現する、
それがファッションである、
ファッションはその行為に貢献するものであると、
彼は言うのです。

他人を自分の思い通りに変えたい人はたくさんいます。
ネットの海を見渡せば、今日もまたファッションポリスが
「最近の若い人たちはセンスがない!」とわめいています。
しかも匿名で。

後者を選んだ、つまりファッションの道を選んだ人たちは、
匿名のそんな声はスルーすればいいのです。
匿名のその人は、あなたのサービスや商品を買ってくれはしないでしょう。
ましてや、高給で雇ってくれることもないでしょう。
つまり、人生にとってどうでもいい人だということ。
「この人、私にとって何かいいことしてくれるかしら?」
と問いかけて、
答えが「ノー」なら、速攻ブロックです。

その人の美しさを追求する過程も、その帰結も、
理解できない他人のほうが多いのです。
(ゴルチエの場合、それを認めてくれたのが日本の大手アパレル企業でした)

けれども、
その人の美しさを追求した人だけが
最後には賞賛されます。
ゴルチエがそうであったように。
男性にコーンブラとコルセットを身に着けさせた、その功績を
結局は認めざるを得ないのです。
酷評したファッションポリスでさえも。
(その様子もファッションフリークショーでは描かれています)

変な言い方ですが、
他人が望むようなおしゃれな人でなくたって全く問題ありません。
いつだって、価値があるのはその努力の過程、
葛藤したその姿です。

最終的には着ているものを超えたその先に
「格好いい」は存在します。

誰もが年老いたそのときに輝くのは、
自分を信じて格闘した
その軌跡だけだということを、
年老いたゴルチエは教えてくれます。

ついていくべきなのは、
そんなメッセージを発信するデザイナーなのです。

 

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2025年9月16日火曜日

古くても高く売られている服とは

セカンドハンドを扱うリサイクルショップを見ていると、
安く売られているごく最近の服と、
古いにもかかわらず、いまだに高く売られている服がある
ということがわかります。

前者の代表的なものはファストファッションやセレクトショップのオリジナル商品、
あるいは有名人による、いわゆる「コラボ」商品です。

一方、10年以上前のものなのに、いまだに高額で売られているものは、
エルメスやシャネル、
バーバリーのトレンチコート、
フィービー・ファイロのセリーヌ、
エディ・スリマンのサンローラン、
トム・フォードのグッチ、
ミウッチャ・プラダのプラダ、
90年代のゴルチエやヨウジヤマモトなど、
いわゆる「メゾン」と呼ばれる、
自社の中にデザインとパターンを行うチームが社員として所属し、
外注に出さずとも、サンプルチェックまですることができるブランドです。

前者のセカンドハンドは安く売られ、
後者のセカンドハンドは高く売られている。
この違いはどこから生まれるのでしょうか。

大きな違いは、デザインとパターンチームが何を目的に服を作っているか、です。
前者の主な目的は、短期的な利益の追求のための服作りです。
彼らの作る服の命は、最初から短く設計されています。
まるで、春にだけあらわれるモンシロチョウや、
冬にあらわれる冬夜蛾のように。

一方、後者の目的は、デザインが永遠に生き延びることです。
今見ても、1年後でも、10年後でも、
そして最終的には美術館の展示室で何十年ものあいだ、
それを見る人々を魅了するような、
そんな服を目指して作っているのが後者です。

最初の意図が違うのですから、当然、結果も違います。
前者はおのずと短命に、
後者は予言どおり、長く生き続けます。
その結果、セカンドハンドになったとき、
前者はごく新しいものでも安く売られ、
後者は古いにもかかわらず、高価で取引されます。
なぜなら、多くの人が本当に欲しいのは、
ヴィクトリア&アルバート美術館に展示されるような、
白い手袋をはめた手で白い紙に包まれ、大切に保存され、
長い間、それを見る人々を魅了し続ける服だからです。

もちろん、そんな服のすべてが博物館に入るわけではありません。
中には、無名だけれども、長く続く価値を持つ服もあります。

では、それはどこで見分けたらいいでしょうか。
服を見分ける識別力がなかったら、
どのように長く生き続ける服を見つけたらいいのでしょうか。

その一つの方法は、
その服の作り手の言葉を聞くことによって判別できます。

もしもその作り手が、自分が作った服について、
「去年の服はもう古い。流行遅れだから着られない」
という趣旨のことを言うような人ならば、
その人の作る服は、
あらかじめ短命であることを意図して作られていると考えていいでしょう。

長く生き続ける服を作る人は、決してそのようなことは言いません。
私は、長く続くデザインを考えるデザイナーが、
そのようなことを言うのを読んだことも、聞いたこともありません。

そうして近くのセカンドハンドを扱うリサイクルショップへ行って、
そんな短命の服が安価で売られている現場を確認してください。
それらの服が放つ、あの独特の退屈さに、
あなたは耐えられないに違いありません。

毎日着る作業服のような消耗品であるならば、短命な服を選んでも構いません。
しかし、長く大切に着たい服ならば、
長く生き残るように最初から設計された服を選びましょう。

そんな服は長い時間、見る人を魅了し続けます。
そんな服を着た人もまた、他人の視線をくぎ付けにすることもまた、
間違いないことなのです。 

 

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