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2012年2月27日月曜日

プリント・オン・プリント



もうパリやミラノでは、2012年の秋冬もののコレクションが始まっています。
それらコレクションをざっと見ていて気付いたのが、プリントものの多さです。
この傾向はしばらく続くでしょう。

今日、お伝えするのは、プリントとプリント(チェックやストライプを含む)、つまり柄と柄をあわせるコーディネートの仕方です。
これはかなり難易度の高いやり方なので、おしゃれ初心者はやめておいたほうが無難です。
失敗する率がかなり高いです。
私もファッションレッスンでは今まで取り上げてきませんでした。
しかし、こう柄物がたくさん出てきてしまっては、うまくできないとしても、
やり方を知っているというのはよいことだと思いますので、説明しますね。

おしゃれだなと見せる、その方法は簡単です。
それはAの柄とBの柄で、色のつながりを作ることです。
つまり、Aの柄の一色と、Bの柄の一色をぴったり同じ色に一致させるのです。
理屈はこれだけです。
では何が難しいのかというと、同じ一色を持っている柄を集めるのが難しいのです。
AというデザイナーとBというデザイナーは同じブルーを選ばないのです。
メーカー、ブランドが違ってしまえば、まったく同じ色ということは、黒や白を除いては、本当にまれです。
ただ、黒は同じ可能性が高い色なので、黒でつなぐという方法は最もやりやすいと思います。
けれども、これが白だと、プリントの地の色という感じなので、余りつながり感がありません。ですから、白でつなぐ方法はお勧めできません。

色を合わせる一番簡単な方法は、同ブランドの同シーズンに出た柄物を合わせる方法です。
デザイナーは、同一シーズンに出すプリントをそれぞれ組み合わせが可能なようにデザインしていることが多いので(もちろん合わない可能性もあります)、それを同時に買えばよいのです。
特に色について苦手な方は、こうするといいでしょう。

しかし、その前に何より必要なのは、そうやって同時にいろいろ買ってふやす方法ではなく、
常にシステマティックに、全体の構成を意識しながらワードローブを構築していくことなのです。
自分が買う色がちゃんと決まっていて、常にそれに沿ってお買いものしていれば、
まったく合わないプリントをたくさん集めてしまうということは、ありません。
ぱっと見て気にいったというだけでどんどん柄ものを買い足していっても、
結局それらは、ほかのどれともコーディネイトできない、不要なものとなってしまうでしょう。
おしゃれに見せるということはふやすことでなく、どれだけ削るか、そして工夫したか、なのです。
そうやってちゃんとワードローブをそろえることができたら、プリント・オン・プリントに挑戦してみるとよいでしょう。
中でもやりやすいのは、ストライプやギンガムチェックなど色数が少ない柄と花柄などを合わせる方法です。これでしたら、ちゃんと自分のワードローブを構築できた人は、できると思います。ぜひチャレンジしてみてください。

さて、難易度の高い柄と柄のあわせですが、最後に朗報です。
私たち日本人は、長いこと着ものを着てきました。
そのコーディネートのキモは、まさにどの柄とどの柄を組み合わせるか、という点です。
私たちは、長い年月をかけて、その組み合わせの技術を発達させてきたのです。
まだまだその伝統に私たちはふれることができます。
そんな着ものの伝統を思い出すのも、プリント・オン・プリントを成功させる1つの方法です。
そのヒントは遠くではなく、ものすごく近くにあります。
わからなくなったら、着物の柄合わせについて観察してみるのもいいと思います。

☆写真は柄とギンガムチェック。柄の中の一色が、ギンガムチェックの色と同じです。
厳密に言うと、まったく同じではありませんが、これぐらいは許される範囲です。

2012年2月20日月曜日

洋服のための歩き方



さて、ファッションセンスのよさや、完璧なメイクなど、外国の方々からほめられることがいろいろあるわたしたち日本人女性ですが、とても評判が悪いのが、その歩き方です。
特にヒールの高い靴をはいたときの歩き方は、姿勢が悪い、ひざが曲がっている、前のめりであごを突き出して歩いているなど、さんざん言われています。
でもこれらの批判も本当なのだから、仕方ありません。

ウォーキングの講座もたくさん開催されているし、本もあります。
一直線上を歩きましょう、つま先から着地しましょう、ひざはこすれるぐらいくっつけて歩きましょうなど、アドバイスもたくさんあるし、頭ではそれがわかっているのですが、なかなか直りません。

私もこの問題について、何かもっと深い理由があるのではないかとずっと考えていました。
アドバイスを聞いたり、1日だけウォーキングのレッスンを受けたぐらいでは直せない何かが。ただ、この謎はずっと謎のままで、ずっと保留の問題として常に私の中にありました。
ところが先日、ユーチューブでコレクションの様子を写したビデオをみている際に、はっとひらめいたのです。

歩くという動作は、移動するために行います。前へ1歩、または後ろへ1歩、進めば、それで事足ります。そこに、どういうスタイルで、ということは問われません。
わたしたち日本人は、ずっと着ものに草履というスタイルで、この「歩く」という動作を行ってきました。
着もので歩くときに気をつけることとは何でしょう。
がに股にならないで内股で、すそが開かないように1歩の幅は狭く、そして、最後に、なるべく上下に動かないこと、です。

コレクションで高いヒールをはいて歩いていくモデルたちは、どちらかというと、スキップをするように、軽く上下に動きながら前へと移動していきます。
そして、姿勢もどちらかというと、前のめりではなく、後ろへ反り気味です。
小さくスキップをするように、上へ足をけり上げて、着地するまでの距離を長くとることによって、ヒールの靴であっても、つま先から着地することが可能になります。
上へと蹴りあがるので、歩くたびに頭はぴょこぴょこと上下に動きます。
つまり、これが洋服の歩き方なのです。

これに対して日本人は、とにかく上下に体が動くことを嫌います。
歩くときに、頭がぴょこぴょこ上下運動してはいけないのです。
だから、歩くとき、足はなるべく地面から離れず、すり足となります。
すり足ですので、どちらかというと、ずるずると移動していきます。
こうすることによって、着もの姿は美しく保たれます。
これは、着ものを着る者にとっては、正しく美しい歩き方なのです。

わたしたち日本人のほとんどは、まだこの着もののための歩き方で歩いています。
それは、ヒールのない靴のときはさほど目立ちませんが、
ヒールのある靴をはいたとたん、バランスがとれずおかしくなってしまいます。

西洋の代表的な踊りはバレエです。
トウシューズをはいて、地面に足をつける面積を少なくし、上へ高くジャンプします。
その動き方の基本は垂直方向です。
それに対して、日本の踊りはどうでしょう。
決して高く飛んだりなどしません。なるべく地面から足を放しません。
水平方向への移動が常に基本です。
日本舞踊の踊り手がトウシューズをはいてもうまく歩けないように、
私たちの着もののための歩き方では、ヒールの靴でうまく歩くことができないのです。
これはいい悪いの問題ではなく、文化の違いです。
洋服も着ものも着るわたしたち日本人は、バレエの歩き方と日本舞踊の歩き方、両方を習得しなければならないようなものです。
これがどんなに困難かは、誰でも納得できるでしょう。
何百年と培ってきた文化のDNAが流れているのですから、そんな1日のレッスンで、まったく違う文化の歩き方を習得するなんてことが、できるわけありません。

じゃあどうするかといったら、やっぱり練習しかありません。
しかも、これは全く違う歩き方なのだと、念頭に置かなければなりません。
最近はヒールの靴でのウォーキングの講座もたくさんあるので、そういうものに参加してみるのもいいでしょう。
本で読んだ説明だけではバレエを踊れないように、実際に自分で動いてみないことには、ヒールの靴での正しい歩き方は習得できません。

だけど、ここで絶対に間違わないでください。
もう洋服しか着ないのだから、着ものの文化なんか捨ててしまって、着もの歩きなんざ、やめてしまおうなんて、思わないでください。
わたしたちは西洋人ではありません。

自分以外の誰かになろうとして積み上げた努力の塔は、いずれ崩壊します。
そこで積み上げた美しさはにせものだからです。
わたしたちに必要なのは、誰か自分以外の者になろうとする必死な努力ではなく、
ほかの文化さえ自分の中に取り込む、余裕と寛容さなのです。

☆写真は映画「ピストルオペラ」の山口小夜子さま(もちろん右の人!)
洋服ときもの、両方を習得した稀有な見本。みんなで見習いましょう。
映画のほか、古いCMなんかでもそのお姿を拝見できます。

2012年2月13日月曜日

トートバッグ



去年あたりから、トート型と言われるバッグが、モード界で流行し出しました。
しかも、かなり大型の。
ちなみに、トートバッグというのは本来、氷を運ぶための布のかばんであると、昔、LL.Beanのカタログで読みました。
きっかけは、たぶん、セリーヌがcavas(この場合、買い物袋という意味)という革製の大型のカバンを出したことではないかと思うのですが、今年に入ったら、この流れは一般にも広がってくると思います。

これはずいぶん前から始まっている、カジュアルなアイテムのモード化の流れの1つです。
特徴は、素材がグレードアップされていること(今回の場合は帆布でなく革)、そして、ハイブランドが発表することです。
トートバッグは長いこと、カジュアルな場でのみ通用する、どちらかというと、実用的なバッグでしたが、今回のセリーヌのcavasをきっかけに、社交界へデビューという感じでしょうか。
昔、ジーンズでのホテルへの入館は禁止されていましたが、シャネルが発表すれば、それがOKになったように、今回もトートバッグは、どんな場でも通用する、一人前のアイテムに昇格しました。

さて、このトートバッグ、一番大きな特徴は、その大きさです。
デザインや細部は、どのブランドも大差ありません。
デザインに差がない分、大きさと色がポイントとなります。
今回、流行っているトートの特徴は、大型であること、そしてアクセサリーのように使えるカラーバリエーションではないかと思います。
こんなバッグを持つときは、それを1つの色のマス(かたまり)と考えます。
もちろん好きな色のものを持てばいいのですが、
自分がさし色として選んだものと同じものを使うと、よりおしゃれ感を出すことができます。
また、バッグの持ち方ですが、この大きな色のマスを肩から下げれば、
自然とそこに目はいきます。全体の重心が高く見えたり、自分が見られたくないなと思っている部分をカバーすることができます。(もちろん、バッグを体から放してしまったら、その効果はそこで終わりですが)
着ている服を1色、またはグラデーションに抑えて、靴とトートの色をそろえると、これはもう、目を見張るようなおしゃれです。
今回、流行っている大型のトートはこんな使い方がいいのではないかと思います。

トートバッグには、奇抜なデザインも、しゃれた金具のパーツもありません。
だから、それを持っていることによって、他人から、
「あら、すてきなバッグね」と言われることも少ないでしょう。
でも、それは全く問題ありません。
トートバッグを持つことによって生まれるチャンスは、
バッグをほめられることではなく、
それを選んだあなたのセンスをほめられるかもしれないということです。
そして、そのことのほうがずっと価値のあることです。
目指しているのは、ほめられるバッグを持つことでなく、ほめられるあなたになることです。

☆写真は京都の職人さんが作っているクリームカンパニーのグローブトート。29色から選べます。こういうメーカーから、自分のポイントカラーにぴったりの色を探すのがおすすめです。

2012年2月6日月曜日

若いみんなへ



先日、なんと16歳の方からメール、いただきました!
じゅ、じゅうろくさい??
そんな方が読んでるの??
大人の女性向けに書いてるつもりだったのでびっくりです!!
というわけで、今日は若い人たち向けに書きたいと思います。
「若い」に該当しないわ、と思う方は、若くなったつもりでどうぞ!

で、何ですって?
「おしゃれになるためには、どうしたらいいですか」ですって?
いい質問だわ。
まさに10代から考えておくのにふさわしい質問ね。
じゃ、答えるね。

まず、若いってことは大体において、いいことよね。
なんかさ、まだ未来に夢持てるじゃない?
(まあ、大人だって、もちろん夢があるんだけどね)
で、そんな若者がおしゃれになりたかったら、どうしたらいいかっていうと、
やっぱり、学ぶしかないわ。
まず何より先に学んでほしいのが色のこと。
わたし、大人の女性の皆さんにいろいろ教えてて思うんだけど、
色のセンスって、後から身につけるのが一番難しいみたいなんだ。
「これとこれは合わないよ」って、今ごろ言われても、みんなよくわからないみたいなのね。
だから、まず色について学んでほしいのよ。
で、どうすればいいかっていうと、素敵な色彩をたくさん見てほしいわけ。
一番いいのは美術、しかも本物を見てほしいんだけど、これはいろいろ住んでる場所とか、お金とか、問題あるじゃない?
だから必ずしも美術じゃなくていいと思うのね。
日本には、世界に誇れるアニメっていうのがあるんだから、その中から自分がいいなと思う色を集めてみてもいいし、今はネットにアクセスするのが簡単だから、
好きなイラストレーターを見つけて、色について考えてみるのもいいと思う。
自然の中にも素敵な色彩がいっぱいあるし、花屋さんもいいよね。
それで、必ずやってほしいのが、自分がどの色が好きかっていうのを見つけてほしいのよ。
一枚一枚絵を見るたびに、ぼけっとしてないで、自分はどの色がいいか、どの色は嫌いか、ちゃんと見極めてほしいわけ。
最初は、どの色が自分が好きな色かさえ、よくわからないと思うよ。
でも数こなしていくうちにだんだんわかってくる。
これは、どれだけ数こなしたかにかかってくるから、スポーツの練習と同じだね。
初めはゆっくりでいいんだけど、だんだん回数こなしたら、瞬時に自分の好きな色かどうか、見分けられるようになるまで続けてみてね。
時間をかけないで、直観でさっと選べるようにね。
それは後で洋服を選ぶときにきっと役立つよ。
おしゃれに見えるかどうかの半分は色だからね。

あとさ、若いときは、洋服にお金かけちゃだめよ。
もしブランド物のバッグ買うんだったら、そのお金をもっと違うことに使ってほしい。
旅行に行くとかさ、なんか講座を受けに行くとかさ、ライブに行くでもいいし、
高い服なんて、買わないでほしいんだよね。
そら、私が文化に行ってたときも、コム・デ・ギャルソンだの、ヴィヴィアンだの、着てた人いたよ。そうやったら、手っ取り早くおしゃれに見えるっていうのはわかるよ。
だけどね、それやったら、自分の力にならないのよ。
少ないお金でどうやっておしゃれに見えるか考えることが、おしゃれ力を育てるのよ。
なんでもお金で解決したらだめ!
受験勉強と同じだわ。
いくらお金かけて家庭教師つけたって、自分がやらなきゃ自分の実力にはならないでしょう。
それと同じこと。
少ないお金でどうやったらおしゃれに見えるか、その工夫をいつもしてね。
自分でやったことこそ実力になるんだよ。

あと、いろいろなスタイルに挑戦してみてほしいな。
まだまだ自分のスタイルを決める必要はないよ。
それに着てみなきゃわからないことがたくさんあるから、なんか着てみたい、って思ったら、
誰がなんと言おうとチャレンジしてみて。
若いときに変な格好したって、それは全然恥ずかしいことじゃないよ。
(それをいい年の大人がやったらイタイけどね)

あと、シルエットなんだけど、この際、シルエットはどうでもいいや。
だって、シルエットってものすごく変わるのよ。
今、自分はこのシルエットが似合うって決めちゃっても、
10年後、同じ体型なんてことありえなくない?
もしそうだったら、マジやばくない?いろんな意味で。
まだまだ育つみんなは、あんまりシルエットにこだわらなくてよし。
細い子は細いから着られる服を着ておいて、そうでない子はもっと大人になったらスタイルがよくなっていく自分を楽しみにしててね。

あと、最後、着こなしだよね。
残念ながら、最近、着こなしのいいお手本って、ないんだよね。
芸能人っていうのも、ちょっと違うし。
結局、いいのはふる~い映画なのね。
50年も60年も前の映画しか、お手本にならないんだよね。
たとえば、オードリー・ヘップバーンぐらいなら知ってると思うけど(知らないかなあ?)
それぐらい古い女優さんの映画じゃないと、着こなしのお手本になる映画って、全然ないとは言わないけど、すご~く少ないのが現状なんだよね。
やっぱり日本は洋服の歴史が短いから、そこら辺は西洋に、しかも古いところに学ぶしかないわけ。
まあ、ビデオ屋さんに行けばたくさんあると思うから、昔の女優さんで気にいった人見つけて、見てほしいな。
だれかお気に入りのスタイルの人が1人は見つかるはずだよね。

こんな感じかなあ。
やっぱり、何でもそうだけど、努力したら努力しただけの結果が出るものだよ。
若いときは、失敗しながらいろいろチャレンジして、
身につけていくの。
失敗しないとうまくならないよ。
他人の目なんて、気にしないで。
馬鹿みたいにお金使ったりしなかったら、大人は文句言わないと思うから。
自分で、自分に力をつけていこうね。
いいものをたくさん見て、お店でいっぱい試着して、友達と服交換して、意見を言い合って、たくさん触れて。
これだったら、自分に自信が持てる、格好いい感じがするってなるまであきらめないで。
それを全部自分でやってみて。

これを続けていくと、すごいことになるよ。
自分の中の宝石が輝き出すの。
それはね、世界に1つしかない宝物なの。
そしてね、誰にも奪うことができないの。
世界中のみんながその輝きにうっとりするよ。
そして、それが輝き続けている限り、人生はうまくいくんだ。

じゃね、健闘を祈る!

☆こういう映画見てね!