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2013年4月29日月曜日

得意分野を作る

ファッションといっても、その範囲は膨大です。
帽子、かばん、靴まで、
そしてジュエリーやマフラーまで、カバーしているアイテムは、星の数ほどあります。
ファッションのプロであったとしても、それらすべてを熟知しているわけではありません。
モードが好きなひとは、コンサバが不得意ですし、
一般のアパレルで働いている場合は、アウトドアやスポーツウエアにはうといです。

プロでさえすべて把握するのが難しいわけですから、
プロではない一般の素人の場合、膨大な知識と情報を持つのは不可能です。
最初から無理な話です。
しかし、だからといって、すべてについて無知というのも、
何かを選択する上で、賢い態度とは言えません。

であるならば、何か一つ得意分野があればいいと思うのです。
誰にでも得意料理があるように、
自分はこれだったら得意だ、よく知っているというアイテムを作るといいと思います。

たとえば、靴。
そして靴の中でもスニーカーには詳しいであるとか、
バレエシューズはよく知っているなど、
細かく焦点を絞って、
それについてはある程度の知識と情報を得るようにするという努力をします。

それは帽子の場合もあるでしょう、
アウトドアウエアの場合もあるでしょう。
ジーンズかもしれませんし、ストッキングかもしれません。

またアイテムではないとしても、素材という場合もあり得ます。
リネンのいいメーカーを知っている、
カシミアならどこがいいのか知っているなど、
いろいろ考えられます。

そして、もちろんこれらは自分の好きな分野を選びます。
好きでもないことに、関心を持ち続けるのは難しいからです。

1つ、これという分野を決めたなら、
それについてはよく勉強します。
情報を集めます。
実際に足を運んで、目で見て、手でさわってみます。
そして、ほんとうに気に入ったものがあったら、
実際に買ってみて、着てみます。

そして、そのものだけは、自分がコレクションすることを許します。
靴だけとか、帽子だけとか、

吟味して選択したものを、コレクションするのです。

そうしてコレクションしたものは、あたかも自分にとっての小さな美術館のようになるでしょう。
美しいもの、
何年たってもその価値が失われないもの、
希少品、
コレクターズアイテム、
並べて鑑賞しても、毎日あきないような、
いつまでも見ていたいような、
そんなものたちを集めていけば、そうなります。

そこで問われるのは審美眼です。
どれだけ美しいものを見てきたか、
経験してきたかが、
そのコレクションを見ればわかります。
そして、その審美眼を養うのに必要なことは、地道な訓練のみです。

何回かの失敗もあるでしょうし、
いつまでたっても、納得のいくものに出会えない場合もあるでしょう。
しかし、途中であきらめないで、
根気よく続けていけば、
いつしか審美眼は身に着くはずです。

1つのものを見極める目が持てるようになると、
不思議なことに、それはほかの分野にも応用できるようになります。
麻についてよく勉強し、経験したら、
ウールのよしあしも、何となく勘でわかるようになるでしょう。
スニーカーの構造について熟知したら、
どんなヒール靴が歩きやすいか判断するのが簡単になることでしょう。

そしてその領域に達したならば、
選択というものがぐんと楽になるはずです。
そのお店へはいって、ほんの数分で、必要なもの、美しいものがぱっとわかる能力がつきます。
(これはほんとうです)

その領域に達するまでに必要なのは、
あれもこれもと手を出さないこと、
そしてあきらめないでつづけることです。

美しいものを見つける目の養成は、
短期間ではできません。
しかし、美しいものを見た回数とかけた時間分の実力は、
必ずつくものです。
その努力が裏切られることは、絶対にありません。

それは、外からは見えない実力です。
しかし、そんな実力こそが、ほんとうの宝物ではないでしょうか。
なぜなら、それは誰にも奪えない宝物だからです。

自分の宝箱に、誰にも奪えない宝物をふやしていきましょう。
それは後々、役に立つ日がくるでしょう。
なぜなら、

最終的に自分自身を救ってくれるのは、
その誰にも奪えない宝だからです。









2013年4月22日月曜日

新しいファッションに挑戦する

世界じゅうのおしゃれと呼ばれている人たち、
たとえば、パリ・コレクションやミラノ・コレクションでスナップを撮られる常連さんたちは、
たしかに自分のスタイルというものを持っています。
いわば、自分のスタイルが完成された人たちです。
しかし、一般の私たちは、そこに到達するにはまだまだ時間がかかります。

自分のスタイルを完成させるまでにやるべきことは、
それまで自分がしたことのないファッションにチャレンジすることです。

流行にともなって、いろいろなスタイルが提案されます。
それは今までまったくなかった組み合わせであったり、
新しいアイテムであるときもあります。
それらを利用して、自分が今までやってこなかったスタイルに挑戦するのです。

たとえば、ここ何年か、ウェッジソールのヒール靴がはやっています。
70年代にもウェッジソールの靴はありましたが、
その後、80年代、90年代にはすたれてしまって、市場には出回っていませんでした。
しかし、今ではありとあらゆる形のウェッジソールの靴があります。
そして、それを利用すれば、今まで高いヒールを敬遠していた人も、
ヒールの靴にチャレンジすることができます。
なぜなら、ウェッジソールのヒールは、たとえ10センチヒールだったとしても、
安定性があり、歩きやすいからです。

そのほか、たとえばスカートははかないと決めていてしまったとします。
理由は、脚の形が悪いと感じているからです。
しかし、昨今の流行している、パンツとスカート、またレギンスとスカートというスタイルを取り入れれば、その悩みは解消します。

スカートの下にパンツをはいたり、レギンスをはくことによって、
脚の形は目立たなくなるからです。
そのことによって、ドレスやスカートを着てみることができます。

そのほかにも、スニーカーの流行や、スポーツ・ウエアの普段着化があります。
思い出してください。
ほんの10年ぐらい前まで、お年寄りは外出の際、スニーカーをはいていませんでした。
みな、きちんとした革靴でした。
けれども、都会への外出の際にも、スニーカーをはくことがおかしくない時代になり、
それを試してみた人たちは、歩きやすい靴を手に入れたのです。
スニーカーをはくのと同時に、ジーンズも取り入れ、
20年前では考えられなかった、お年寄りのスニーカーにジーンズ姿が、
ごく普通に見られるようになりました。

流行にのることで、今までできなかったことができるようになる可能性があるのです。
しかし、そのためには、実際に自分で試してみなければなりません。
見たことがある、
聞いたことがある、
知識として知っている、
これらのどれも、実際に経験したこととは違います。
経験して初めてわかることがあるのです。

一番よくないのは、かたくなになって、チャレンジしないこと。
やってもみていないのに、だめだと決めつけてしまうことです。
とりあえずやってみて、やはり違うと思えばやめればいいだけのこと。
新しい服を着てみる行為は、新しい山に登るより、ずっと簡単なはずです。
さほど大それたことではないのです。

柔軟な心がなければ、おしゃれにはなれません。

かたくなであることは、おしゃれから一番遠い態度です。

自分のスタイルを確立するには、何年もかかります。
20代、30代では無理でしょう。
それは経験値が少ないからです。
そして、自分自身のことをよく理解していないからです。

ふと選んだその色が、
何気なく見つめていた、そのドレスが、
新しい自分に出会うきっかけになるかもしれません。
コートに袖を通してみる、
ハイヒールにそっと足を入れて、一歩踏み出す、
その経験で、隠されていた自分の一面に気づくこともあるでしょう。
それをやってみる勇気がある人が、おしゃれな人なのです。

やってもいないことに対して、文句を言っても始まりません。
やっていないことに対する判断は、まちがっています。

服を着るという行為は経験です。
知識でも、情報でもありません。
 人生は経験の連続で出来上がっています。


まずはチャレンジしてみましょう。
そして自分の心の動きを観察しましょう。
ハートが違うというのなら、やめにしましょう。
ハートが喜ぶなら、そのスタイルをぜひ取り入れてみてください。
なぜなら、ハートが喜ぶその服は、
きっと、あなたの世界を広げるための1枚に違いありませんから。

2013年4月8日月曜日

自分にとって最強の白シャツを探せ

白シャツは、いつの時代も必ずある、洋服の中で基本中の基本のアイテムです。
誰もが必ず着たことのあるアイテムでもあると言えるでしょう。

ここ数年、タイトなシルエットの流行のせいで、白シャツのバリエーションが非常に少ない時期が続きました。
ダーツの入ったタイトなシルエットで、素材は必ずストレッチ。
丈も短めで、袖幅も狭く、誰にでも似合うシルエットではありませんでした。
その間に、白シャツをあきらめてしまった方も多いと思います。

しかし、ここにきて、やっと白シャツのバリエーションが戻ってきました。
つまり、タイトなだけの白シャツではなくなってきたのです。
今までは、シャツが着る人を選んできましたが、
やっと、こちらが選べる状況になりました。
それならば、自分にとって最強の白シャツを探すことができます。

では、何をチェックして、自分にとって最強の白シャツを探せばよいでしょうか。
チェック・ポイントはたくさんあります。

まず、一番はシルエットです。
今の流行が何であるかに関係なく、その人の体型や好みにぴったりのシルエットがあります。
それはダーツのあるタイトなものなのか、ダーツなしのリラックス・フィットなのか、ビッグ・シルエットなのか、それを第一に考えます。
それは、自分が白シャツでどういう雰囲気を作りたいか、どういう気分になりたいかによります。
また、丈の長さも短め、長め、どちらがいいのか決めておきます。

そこで、その人に合っていないシルエットについて、1つ指摘しておきます。
洋服の場合、横じわは、その人の体型に合っていないという証拠です。
シャツを着てみて、バストの上にくるボタンの位置から、脇に向かって横じわが出た場合、
そのシャツは、その人の体型に合っていません。
それは、バスト寸法が足りていないというしるしです。
サイズは、バスト寸法によって決定されています。
やせているか、太っているかではありません。
バストが大きい方は、やせていても、大きいサイズになります。

もし今現在、気に入っているシャツでもブラウスでもあったら、
その身幅の寸法をはかっておいて、大体どれぐらいが好きなのか把握しておくといいでしょう。
身幅をはかる位置は、脇の袖が縫い付けられている、一番身幅が大きくなっているラインです。

次に、襟の形、ポケットの有無など、背中のタックの有無など、デザインの細部について考えます。
襟の形は大き目がいいのか、小さめがいいのか、
角がとがっているタイプか、丸いタイプ か、ボタンダウンか。
ポケットは左右にあるタイプか、片方か、またはなしか。
背中にタックはあったほうがいいのか、ないのか。
また、最近は、裾の脇側にボタンがついていて、カシュクールのように着られるタイプのシャツもあります。
カシュクールとして着たいのか、それはいらないのかも考えます。

次に、色について考えます。
白シャツといっても、色には幅があります。
オフ白と呼ばれる、少し黄色が入った白から、いわゆるお父さんが着るワイシャツのような、青っぽい白まで。
よく、白シャツが似合わないとおっしゃっている方がいますが、それはたぶん、色の問題だと思います。
青い白が似合う場合と、クリーム色に近い白が似合う場合とがあります。
自分はどちらなのか、わからない場合は、色をあててみて、他人に見てもらいながら決めましょう。

そして、最後に素材です。
これは、洋服の知識があまりない人にとって、わかりづらいポイントではないかと思います。
白シャツとひとことで言っても、素材にかなりの幅があります。
コットン、コットンとリネン、コットンとポリエステル、シルク、レーヨン、リヨセルなど、まずは生地を構成する素材による違い、
そして、オックスフォード、綾織り、サテン、ボイルなど、おり方による違いです。
また、仕上がりが、ノー・アイロンのタイプや、逆に洗いをかけたラフなものなどにもわかれます。

いつも書いていることですが、
年齢が上がるほど、いい素材のものを身に付けたほうがよいです。
若い場合は、肌が若いので、どんなに安い素材でも、生き生き見えますが、
そうでなくなった場合、いい素材感が、皮膚のおとろえをカバーしてくれます。

いい素材とは何かというと、独特のつやや、ぬめりを持った素材です。
こればかりは、実際に見てみないことにはわかりません。
よくわからないという方は、買わなくてもよいので、高級シャツを扱うショップで、
そっとシャツにさわってみて、生地の輝き方を目で確かめてみてください。
普通のウールとカシミアとでは全く違うように、高級なコットンは、輝きやしなやかさが違います。
その違いは、必ずしも値段だけでは判断できないので、実物を見て覚えるしかありません。
または、有名な生地会社、たとえばイタリア製の生地仕様などという表記は、ある程度、参考になると思います。

これら全部をチェックするには、白シャツを試着する以外、方法はありません。
まず着てみてシルエット、
襟の大きさ、
袖の長さ、
肩幅、
袖幅、
身ごろの長さ、
第一ボタンをはずしたときの開き具合、
裾のカット、
バストから落ちる布の流れのチェック、
バック・スタイル、
素材の質感など、
すべてチェックする必要があります。

あくまでも、探すのは自分にとっての最強の白シャツです。
他人にとってではありません。
販売員さんの、「とってもお似合いですよ」などという声は、無視していいのです。
聞くべきなのは、自分の心の声だけです。

シャツを着てみて、湧き上がってくる感じが心地いいものなのかどうなのか、
何かひっかかる点はないか、
違和感はないか、
いたたまれない感じにはならないか、
ちょっとでも気になる点があったら、それは、自分にとっての最強ではありません。

自分が最強でいられるための、最強の白シャツを探すこと。
それは、そんなに簡単ではありません。
そして、何が最強なのかは、自分にしかわかりません。
流行も、他人の目も、値段も、ブランドも、すべて関係ありません。

一枚一枚、着てみて、
その都度、自分の心を確認して、
すべて大丈夫と思えるまで、あきらめないで、根気よく探してください。
きっとその白いシャツは、どこかで待っているはずです。
目を閉じて、
自分にとっての最強の白シャツを着ている自分の姿が見えたなら、
それは本当に存在しているということです。






2013年4月1日月曜日

コーディネイトにはポイントを

庭のデザインを考えるとき、フォーカル・ポイントと呼ばれる、庭全体の中でどこか1つ目立つように、ポイントを作るという考え方があります。
この考え方は、服をコーディネイトする上でも使えます。

持っている服の枚数が多ければ多いほど、シンプルなものが多くなるというよりも、
どこかデザインされたもの、ほかとは違うもの、というふうに、
目新しいものを追加していくという傾向があるようです。
もちろん、中には、同じ白シャツばかり何枚もという、
好きなものばかり枚数が多いという方もいらっしゃいますが、
どちらかというと、それは少数派で、
何かしらデザインされたものを多数持っているという方が多いです。

そうなると、それらを使って全体のコーディネイトを考えることになります。
しかし、たとえば、ジャケット、シャツ、パンツまたはスカート、どれもがデザインものだと、
それらを同時に着たら、デザイン過剰で、
お互いのデザイン同士がけんかして、それぞれいいところが生かせなくなります。

もっともごちゃごちゃしているのは多色使いで、デザインもののアイテムをどんどん足していくコーディネイトで、そうなればなるほど、子供っぽくなります。
色の過剰も子供っぽいですが、デザインの過剰もシックではありません。

そうならないために、コーディネイトを考えるとき、
そのアイテムの中でどれが主役なのかを考えて1つに絞ります。
こったツイードのノ―カラージャケットが主役なのか、
リバティプリントのフリルのついたブラウスが主役なのか、
ロマンチックなボリュームのロングスカートが主役なのか、
総レースのカーディガンが主役なのか、


まずそれを決めます。
そして、それが決まったら、ほかのものは脇役なわけですから、
脇に徹してもらいます。
主役を食ってはいけません。
つまり、目立たないよう、シンプルなものにするのです。
目立たないというのは、ほかの人の印象に残らないようなデザインのものという意味です。

何も主役は、服だけとは限りません。
スワロフスキーの豪華なネックレスの場合もありますし、
作家ものの帽子かもしれません。
靴、小物、バッグの可能性もあります。

もちろん、主役は2人の可能性もあります。
こったツィードのジャケットとおそろいのスカートでスーツなら、
ジャケットとスカートが主役です。
また、さし色としてそろえた、同じ色のベルトと靴があるなら、その2点が主役になるでしょう。
しかし、3人以上だったら、多すぎです。

このように、コーディネイト全体の中でポイントとなるものをしぼると、
全体がシックになります。
庭で考えてもらうとわかりやすいと思いますが、
いろいろな色の、たくさんの種類が狭い面積にたくさん植えてある庭は、にぎやかではありますが、
おしゃれには見えません。
色を削って、フォーカル・ポイントが決まっている庭のほうが、エレガントで、洗練された雰囲気になります。
これと同じことが、服の場合も起こるのです。

デザインものを上からどんどん盛るスタイリングは、逆に印象がぼやけて、
がちゃがちゃうるさい服を着ている人だった、ぐらいの感じになるでしょう。


最後に究極にシックで洗練されたスタイリングをご紹介します。
それは、着ている服のどこにもポイントを置かない方法です。
すべてほとんどデザインされていない、
基本的なアイテムだけでコーディネイトを作ります。
白シャツにジーンズ、
Vネックのカシミアセーターにウールフラノのパンツ、
ミニマルなデザインのリトルブラックドレスだけ、など。
そういう服装の人と出会ったならば、
相手は何を着ていたか、ほとんど記憶していません。
そういえば、ジーンズだったような、
そういえば、黒いドレスだったような、
そんな程度です。
限りなく、服のイメージはあいまいになります。
そして、強烈に残るのは、その人自身の印象です。
その人の身のこなし、声、香り、笑顔、
それだけです。

何を着ていたか覚えてはいないけど、
その人自身は、確かにエレガントでおしゃれな人だった。
その記憶が、香りと一緒にずっと残っている。
その時間の、その人の存在だけが鮮明に思いだせる。
そんな人物は、究極のおしゃれな人でしょう。

できれば、私たちも、そんな境地を目指したいものです。
そのために必要なのは、おしゃれの知識だけではなく、
もっと幅広い教養と、寛容な心と、広い視野と、
磨かれた魂の、その痕跡です。

※注 靴、バッグ、ベルトをさし色として同じ色でそろえるのはありです。しかし、その場合も、3つとも派手な目立つデザインにするのはやめておきましょう。バッグだけとか、靴だけデザインものというふうにしたほうがよいです。