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2013年8月26日月曜日

試着でのチェックポイント

オーダーメイドで服を作るという習慣が遠い昔のものになって以降、
わたしたちは、否応なく、プレタポルテ、つまりフランス語ではprêt-à-porter、
そして英語ではready to wearという、すぐに着られるという意味の既製服を着ることになりました。
そのことにより、服を自分のサイズに合わせるのではなく、
自分のほうから服に近づいていかなければならなくなりました。

既製服を選ぶ場合、まずサイズというものを確認します。
日本だったら、7号、9号、11号というような奇数番号のサイズ、
そのほかヨーロッパの36、38、40、
またアメリカの4、6、8などというものなど、
現在、日本で売られている服のサイズはさまざまです。

日本の場合、サイズには基準があって、
たとえば標準の9号では、バストが83、ウエストが64、ヒップが91などと、
決められています。
しかしそのサイズのまま既製服は作られるのかというと、
そういうわけではなく、メーカーはこれらに肉付けをし、
この基準を下回らないように、バスト寸法にゆるみ分を入れて、
服を作ります。
そのことによって、同じ9号でもメーカーやブランドによってばらつきがあり、
必ずしも同じ寸法で作られているわけではありません。
サイズはあくまで目安でしかありませんし、
あくまで標準と考えられる体型なのであって、
誰もが標準のプロポーションではないので、
つまるところ、試着が必要になります。

昔は、見立てのプロとも言える販売員さんたちが数多くいて、
サイズの合わないものを無理に買わせようとはしませんでした。
しかし、最近の傾向は、そもそも服というものに対する知識が乏しく、
とにかく売ればいいという姿勢があからさまの販売員の方々も多く、
そういった方たちに言われるがままに服を買ってしまうと、
とんだ失敗をすることになりかねません。
そうならないためにも、試着をした際に、一体どこをチェックすべきなのか、
それぞれが覚えておいたほうがいいでしょう。

まず、誰もがチェックするのは袖丈、裾丈などの丈でしょう。
袖が長い、裾が長いなどは、
洋服の知識がなくても、誰でも判断できます。
しかし、それでもたとえばパンツ丈を決める場合は、
それにあわせる靴のヒールを考慮しなくてはなりません。
ヒールがフラットなのか、8センチなのかによって、
美しく見えるパンツ丈は変わってきます。
ですから、試着をする際には、そのパンツにあわせる靴をはいていくか、
または同じ高さのヒールの靴をはくべきで、
決して、試着室に備え付けてある、簡単なミュールですませるべきではありません。
ここまでは、洋服の知識がなくても、少し考えればわかることです。

ここからは、洋服を作る側からは当たり前でありながら、
一般の人たちにはあまり知られていないチェックすべきポイントです。

トップスのサイズは、すべてバストサイズで決められています。
ですから、体躯がいくら細い人であっても、
バストが大きいならば、サイズは大きくなっていきます。
よって、まずチェックするのはバスト回りです。
バストから、横に向かってしわが走っているのなら、
それはサイズが合っていないという証拠です。
洋服は、わざと横に入れたタックやギャザーのデザインでない限り、
横じわはすべて、サイズが合っていないという意味です。
たとえば、ブラウスのバスト近くのボタン位置から、水平にしわが走っていたら、
それは選んではいけないブラウスです。
同様に、斜めじわもサイズが合っていないという証拠です。
ニットなどでも、バスト寸法が足りないと、
脇の下からバストにかけて、斜めにしわが寄ります。
それはバスト寸法が足りないという意味です。
袖丈やパンツ丈、スカートの裾丈などは、お直しが可能ですが、
バスト寸法を大きくすることは不可能です。
ですから、これらは選ぶべきではありません。

また、ボトムのスカートやパンツでも、
腰回りに横じわが出てきたら、
それはヒップの寸法が足りないということ。
特にタイトスカートで横にしわが走り、
知らない間に上へずれ上がっているものは、
完全にヒップが足りていません。
ですから、これらもサイズが合っていないということになります。

ジャケットやコートになってくると、
袖や丈の長さだけではなく、肩の傾斜をチェックする必要が出てきます。
肩傾斜は、メーカーやブランドによってまちまちで、
傾斜がきついものだと、首元が浮きますが、
逆に傾斜が緩すぎるものだと、肩先があまり、
そのあまり分がだぶつきます。
ジャケットやコートの肩傾斜もお直しの対象にはなりませんので、
肩の傾斜があわないジャケットやコートを選んではいけません。

そしてすべての服でチェックしなければならないのは脇線です。
脇線は垂直に下へ落ちなければなりません。
ブラウスでもスカートでもジャケットでもコートでも、すべてそうです。
もし前へずれていたら、前側が足りないということですし、
後ろへずれていたら、後ろが足りないということです。
ストンとしたドレスなど、横向きをチェックして、脇がまっすぐ下におりているかどうか確認してください。
脇が曲がってしまうと、必ず前、または後ろの裾が上がってしまいます。
つまり、どちらかの寸法が足りないということです。
この前、雑誌のモデルが着ているドレスの前側の裾が5センチほど足りない状態のままのページを見つけて、大変驚きましたが、これは明らかにバスト寸法が足りていないということです。
だから、そのまま着てはいけないし、選んではいけないものです。

また、ドレス、ジャケット、コートなど、どれについても、
パターンが悪いものは、後ろへ抜けていったり、
肩が異常にこったりするということが言えます。
これをチェックするためには、着てみて、2、3回、軽くジャンプするような動作をしてください。
試着室の中では可能だと思いますので、ひざをゆるく曲げたりのばしたりするのです。
そのとき、肩線が前や後ろにずれる服はパターンが悪いです。
着ていると、着物のように後ろへ抜けるか、
着心地が悪くて、途中で脱ぎたくなるような服です。
買ったら、必ず後悔します。

これらすべてチェックしたら、最後はドレープです。
トップスでもボトムでも、流れるような下に落ちるドレープはすべてよいものです。
タックをとった後にできるドレープや、
フレアスカートのような布を多く使うことによるドレープなど、
自然に下に落ちていれば問題ありません。
横に流れるようにできているようなデザインは別ですが、
そうでないもので、不自然にドレープが流れるようでしたら、
それはどこかが合っていない証拠です。
残念ながら、最適なサイズの服ではありません。

以上がひととおりの試着の際のチェックポイントです。
試着でチェックするのは、丈だけでは決してないのです。
特に小さ過ぎるサイズは大きくすることはできないので、
選んではいけません。

ここ10年ぐらい、タイトなシルエットをストレッチ素材で見せてきました。
そのため、ダーツ、タック、ドレープなど、
服としてのテクニックは、あまり使われない傾向にありました。
ストレッチ素材を入れてしまえば、横じわがごまかせます。
しかし、これからは、ストレッチでごまかせない、
ダーツ、タック、ドレープを使った服が多く出てくるでしょう。
また、シルエットも大きくなってくるので、
どのようにドレープが出るのかも、服がきれいに見えるかどうかのポイントになります。

まずは自分の体型の特徴を知る。
それはほとんどの場合、標準ではありません。
実際には、標準の体型の人など、いません。
みな骨格、肉付き、脚や腕の長さが違うのです。
違っているのが当たり前です。
それをあたかも、ほとんどの人が同じであるかのように、
作られた基準のものを着るということが既製服ということです。
ですから、ぴったりの既製服など、ありません。

ぴったりなものなどないのですから、
どこかで妥協は必要です。
だけれども、すべて妥協することはないのです。
絶対にはずせないポイントが誰にとってもあるはずです。
それは自分の長所がよく見えるようになるポイントなのか、
それとも短所が目立たなくなるようなポイントなのか、
それは人それぞれでしょう。
けれども、決して妥協してはいけない一線は、守らなければいけません。
そうしないと、あなたは服に負けます。

服のほうが強いと言ってきます。
あなたは負けなければいけない、
合わせるべきだと、強要されます。
だけれども、それに屈することはありません。
そこで負けたら、美しくありません。

おしゃれであるということは、服との戦いに負けないということです。
負けを強要するような服は、選ばないということなのです。

2013年8月19日月曜日

コーディネイトの新しいバランス

2012年以降、ファッションのトレンドは、完全に新しい流れへと入りました。
トレンドが変わるということは、服のシルエットが変わるということです。
当然のことながら、服のシルエットが変われば、
コーディネイト全体のバランスも変わってきます。
この時期、新しいバランスを作ることが、おしゃれに見えることの条件になってきます。

トレンドが変わる時期は、もちろん過去にもありました。
最近では、90年代後半から2000年に入るころ、
それまでのだぶだぶしたシルエットから、
急激にタイトなシルエットになっていった時期です。
おしゃれに敏感な人たちは、流行をいち早くかぎ分け、
ぶかぶかなパンツを捨て、スキニー・ジーンズをはき、
ストレッチの入ったぴったりしたTシャツをトップに持ってきました。
それは今まで見たことがないシルエットで、
大きな服にそろそろうんざりしていた人たちには、
衝撃的なほど、新鮮にうつったのでした。
それと同じ現象が、今、起きています。

今回は、ぴったりタイトが長く続いたせいで、
その反動で、全体のバランスが大きくなります。

服の新しさというのは、ものとしての新しさの問題だけではないのです。
体と布の間にできる空気の分量がどれだけ新しいものなのか、
そちらのほうがより重要です。
そして、明らかに全体のシルエットが変化してしまった今、
古いトレンドを引きずった、ものとして新しい服を買っても、
それは、新しいとは言えません。
問題なのは、その服で、どれだけ新しいバランスのコーディネイトできるか、
ということなのです。

これからは、2000年にはおしゃれに見えたコーディネイトのバランスは、
もうすでにおしゃれには見えません。
あのときはどんなにそれが格好良かったとしても、
今はもうそうではありません。
それがファッションであり、流行です。

コーディネイト・ブックのコーディネイトは、
発売されたときにもっともおしゃれなのであって、
それが永遠に続くわけではありません。
コーディネイトにおいても、シルエットとバランスは、ゆるやかに変化していくからです。

さて、これから約10年は続くであろう新しいバランスは、
体にぴったりフィットしたものでないことは明らかです。
ビッグであることは確かなのですが、
かといって、80年代のビッグ・シルエットとも違います。
80年代のビッグ・シルエットは、マスキュリンの要素が強いものでしたが、
次の10年、強調されるのはフェミニティです。
ですから、必ずしも、ビッグ・シルエットのコートやジャケットに、
マニッシュな靴をあわせるわけではありません。
細いピンヒールは、まだ健在です。


また、50年代から60年代、ディオールに代表される時代のシルエットにも、近いものがあります。
けれども、やはりそれとまったく同じというわけではありません。
あの時代の清楚で、きっちりしたイメージと、
これからのもっとおおらかで、混沌としたイメージでは、
生まれてくるデザインも違うでしょうし、全体のバランスもほんの少しですが、
違ってきます。

これはまだ私もはっきりつかめているわけではありませんが、
たぶん、何か逸脱した要素があると思います。
そして、それは「役に立つ」からは、ほど遠くなります。
ドレープやフレアなど、無駄な要素が多くなります。
トレーナーにフレアスカート、ハイヒールのそのバランスは、
どう考えても、走るのには適しません。
機能と効率、経済性とは逆の方向です。
そしてそれらは、わたしたちが長いこと、価値を認めてこなかったものです。

ここで豊かさは復活します。
そうでなければ、それは嘘です。
機能的でもない、効率も悪い、経済の発展に寄与しない、
その豊かさが、再び見出されるときです。
それを私たちは、無意識にキャッチして、
バランスで表現します。

行き場のない世界で、
絶望の果てに見つけたのは、
長いこと忘れ去られ、見捨てられた、
本当の豊かさです。

本当におしゃれな人とは、それをいち早くキャッチする人たちです。
眠っている人たちを目覚めさせるため、
先駆者は、新しい価値を提示します。
新しいバランスが定着するには、これから何年かかかるでしょう。
しかし、必ずそれは定着するのです。

これから始まる新しい時代のために、
新しいバランスを見つけてください。
自分の心に引っかかる、新しいバランスのコーディネイトを見つけたら、
早速、試してみてください。
その一歩こそが、新しい時代を作ります。


2013年8月5日月曜日

パーカー

パーカーは、もっとも多くの人に浸透したスポーツ・ウエアであると同時に、
スポーツ・ウエアの枠をこえて、もっとも進化したアイテムであると言えます。
それはポロシャツの比ではありません。
老若男女、幅広く、誰でも、どんなシチュエーションでも着られる、すぐれたアイテムでしょう。

モードの世界においても、パーカーはたびたび登場するアイテムですし、
最近は、デザイン、素材ともかなり進化したものが出てきました。
ここまできたなら、これまでそのカジュアルさゆえにパーカーを敬遠していた方たちも、
難なくワードローブに取り入れることができるだろうと思います。

もうすでに何度も書いていますが、
カジュアルなアイテムを大人が取り入れるには、いくつかの方法があります。

たとえば、スポーツ・ウエアのブランドが作る、
従来からある、ごくふつうのデザインのパーカーは、
まさにスポーツをする際に適したものです。
デザインや素材はスポーツ用に考えられています。
こういったものは、まさにスポーツや、それに近いことをする際に着用するか、
または、日常においても、ごくカジュアルな場面での着用がふさわしいでしょう。
ご近所への買い物といった際には、なんら問題ないと思います。

一方、普段着ではなく、少しおしゃれをしたい場合には、
デザインにこるか、素材を上等なものにするか、していけばよいでしょう。

パーカーのデザインも、最近はかなりバラエティが出てきました。
ポンチョ風の袖口が広くなったタイプや、
ファスナーではなくボタン使いのもの、
あきがライダーズ風のもの、
裾をドローストリングスにしたものなど、
オーソドックスなパーカーにひとひねり加えたものが数多くあります。
プラダ・スポーツなどの、ハイブランドのスポーツよりのウエアの中にも、
デザイン性に優れたものがあります。
こういったものは、スポーツのためというよりも、
完全におしゃれのためのものですので、
カジュアルすぎるのを嫌う場合には、
このように何かしらデザインされているパーカーを選ぶとよいと思います。

もう一つは、上質な素材を使ったパーカーです。
代表的なものは、カシミアニットのパーカーでしょう。
パーカーをニット地で作ること自体、おしゃれなわけですが、
それをカシミアにすることによって、大人にふさわしいアイテムにパーカーが変身します。
そのほかにも、素材メーカーとして有名なファリエロ・サルティの生地を使ったものなども、
おしゃれ度は高いです。
これら、高級素材を使用したパーカーは、
形がごくオーソドックスなものであったとしても、
その素材感により、もはや単なるスポーツ・ウエアではなくなります。
そして、そういったものこそが、大人が着るにふさわしいパーカーなのです。

これらをコーディネイトする際に注意すべきなのは、
全体のフェミニンとマスキュリンのバランスです。
パーカーは、決して女性的なアイテムではありません。
それをそのままジーンズにあわせるのでしたら、
インナーはフェミニンな要素の強いものにする必要がありますが、
ワンピースの上に羽織る場合は、甘さの中に適度な辛さがプラスされ、
全体のバランスがちょうどよくなります。

パーカーという、一見、なんの変哲もない、ごくごく平凡なデザインのものを、
おしゃれに着こなすことができたら、それこそが、本当におしゃれであるということです。
全体のボリュームのバランス、
色の組み合わせ、
素材、
デザイン、
アクセサリーや小物との兼ね合いなど、
平凡なアイテムであればあるほど、きっちり詰めて構成していけば、
そのほうが、ごちゃごちゃしたデザイン性のあるものをたくさん着こむよりも、
すっきりおしゃれに見えます。

買う前に、まず色を決めて、素材と形を吟味しましょう。
簡単なものであればあるほど、簡単には買わないこと。
シンプルなデザインであればあるほど、こだわりを持って選ぶこと。
その繰り返しが、おしゃれ上級者への道です。

自分の感覚にぴたっとはまった、
シンプルなデザインのアイテムがワードローブにそろえばそろうほど、
無駄な買い物をする必要がなくなります。
遊ぶのはそのあとで十分、間に合います。

まずは自分の感覚を信じること。
おかしいと思ったら、疑ってみること。
人の意見に惑わされて、失敗する、その前に、
再び自分の中心、すなわちハートへ戻ってみてください。
ハートがどきどきするのなら、
それがときめきのどきどきなのか、
不安のどきどきなのか、よく見定めて、
最後は自分自身で決めましょう。

その感覚は、たぶん、合っています。
もうそろそろ、見えないものを察知する能力も養われたはず。
そうすれば、一目見た瞬間に、膨大な情報がダウンロードされます。
そして、それはいつだって、正しいものなのです。
初めに違和感を感じたならば、一切、拒否しましょう。
パーカー1枚から、それができるようになったなら、
あなたはもう近づいています。
すべてを見通せる目を持つ自分に。