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2011年12月19日月曜日

トレンチコート



ちょっと時期的にどうかなと思ったのですが、そろそろバーゲンの季節ですし、
購入をお考えの方も多いのではないかと思い、今日はトレンチコートについてです。

すっかり定番のトレンチコートなのですが、実は結構難しいアイテムでもあります。
というのも、なかなか自分にぴったりのトレンチコートを見つけるのは難しいのです。
それには理由が2つあります。
1つは、定番と言われながらも、かなり流行に影響されるアイテムであること、
そしてもう一つは、バリエーションの豊かさ、です。

同じ定番でも、Pコートとは違って、トレンチコートのシルエットは、かなり流行があるなと思います。
ここ数年は、例えば子供用サイズのトレンチを着ることが流行ったりしているように、かなり小さめが人気です。けれども、90年代はそうではありませんでした。もっとずっとシルエットは大きかったのです。ですからそのときに買ったトレンチコートは今着ると何かおかしいのではないかと思います。丈も長く、全体の分量が多く、もしかしたら、肩パッドが入っているかもしれません。これでは今の流行とかけ離れすぎて、古いなという感じが否めません。

そしてもう1つの理由のバリエーションの豊かさですが、実は、これがなかなか似合うコートが見つからない原因の最大の理由ではないかと思います。
トレンチコートの特徴は、付属のパーツの多さです。
トレンチコートのトレンチとは、塹壕です。第一次世界大戦を暑かった戦争映画などを見ると、よく出てきますが、人が1人通れるくらいの壕を、雨が降る中、このコートを着て移動していきます。そのために考案されたコートです。
肩には肩章、背中にはベンチレーション、前肩当て布、ベルト、フラップポケット、袖口のストラップ、そして後ろのセンターベンツなど、付属がやたらと多いのです。
また通常、あわせはダブル、袖はラグラン袖ですが、最近は、シングルで、袖もセットインスリーブのものもあります。
そして、この細かいパーツそれぞれが、それぞれのブランドやメーカーによって、形や大きさが違うのです。大きい襟のところもあれば、小さいものもある、またウエストから下もフレアになっているものもあれば、タイトなものもあるなど、付属や細部のバリエーションが広がりすぎていて、一定のスタイルがありません。
また素材も通常は、綿ギャバジンですが、今ではもちろんウールのものもありますし、もっと裏なしの軽いポリエステルタフタや、取り外しのライナーがついたものなど、着る時期やシチュエーションも様々です。
ですから、定番と言えども、自分にぴったりのものを探すには、襟の大きさ、袖の細さ、丈、すその広がり方の具合、シングル前か、ダブル前か、肩章つきかなしか、素材はどうするかなど、考えなければならない点がたくさんあるのです。

これを決めるにはどうしたらいいか。
それは、残念ながら、数多く試着してみるほかありません。
数多くとはどれくらいかというと、最低でも10枚は着てみないとわからないでしょう。

また、もう一つ残念なのは、有名ブランドだからといって、だれにでも似合うわけでもないということです。
私が大学生のころ、友達がイギリスに旅行へ行った折に、バーバリーのトレンチコートを買ってきました。今も相当お高いので、当時はもっと高かったと思います。しかも学生ですから、かなり奮発した買い物でしょう。
しかし、彼女がそれを着ていても、何だか格好良くないのです。
1つは自分のサイズより大きめのものを買ってしまったこと(華奢な人だったので、ぴったりのレディースサイズがなかったのかもしれません)、そして、余りに新しすぎて、コートがごわごわして、体になじんでいなく、何だか借りてきたもののようだったからです。
ですから、トレンチコートを選ぶときには、ブランドに惑わされてはなりません。

また流行があるということも忘れないでください。
今一番新しい形は、一番早く腐ります。
トレンチコートは長く着るべきアイテムですから、すぐ鮮度がなくなって、だめになってしまうようなものはお勧めできません。

ブランドにも、流行にも惑わされないで、自分自身にぴったりのコートを、根気よく試着していって、見つけましょう。
試着する際は、下に着るものや靴にも注意してください。パンツなのか、スカートなのか、ヒールのある靴かない靴かによっても、似合ってくるものは違ってきます。

トレンチコートは、戦うためのコートです。
いわば、戦闘服です。
いい加減に選んだものを着ていたならば、敵にやられてしまいます。
で、だれと戦うかですって?
たぶん、それは、世間の目を気にして、自分のハートとは違う行動をしてしまいがちな、もう一人の自分でしょう。

☆写真は、「シャレード」の中のオードリー・ヘップバーンのトレンチコート。
かなりパーツが省略されています。また素材も軽そうです。
オードリーは「ティファニーで朝食を」のラストシーンも変形トレンチコート。そちらも、やはり肩章などはなし。パーツを少なくすることで、ミリタリー色が弱まります。