ファッションといっても、その範囲は膨大です。
帽子、かばん、靴まで、
そしてジュエリーやマフラーまで、カバーしているアイテムは、星の数ほどあります。
ファッションのプロであったとしても、それらすべてを熟知しているわけではありません。
モードが好きなひとは、コンサバが不得意ですし、
一般のアパレルで働いている場合は、アウトドアやスポーツウエアにはうといです。
プロでさえすべて把握するのが難しいわけですから、
プロではない一般の素人の場合、膨大な知識と情報を持つのは不可能です。
最初から無理な話です。
しかし、だからといって、すべてについて無知というのも、
何かを選択する上で、賢い態度とは言えません。
であるならば、何か一つ得意分野があればいいと思うのです。
誰にでも得意料理があるように、
自分はこれだったら得意だ、よく知っているというアイテムを作るといいと思います。
たとえば、靴。
そして靴の中でもスニーカーには詳しいであるとか、
バレエシューズはよく知っているなど、
細かく焦点を絞って、
それについてはある程度の知識と情報を得るようにするという努力をします。
それは帽子の場合もあるでしょう、
アウトドアウエアの場合もあるでしょう。
ジーンズかもしれませんし、ストッキングかもしれません。
またアイテムではないとしても、素材という場合もあり得ます。
リネンのいいメーカーを知っている、
カシミアならどこがいいのか知っているなど、
いろいろ考えられます。
そして、もちろんこれらは自分の好きな分野を選びます。
好きでもないことに、関心を持ち続けるのは難しいからです。
1つ、これという分野を決めたなら、
それについてはよく勉強します。
情報を集めます。
実際に足を運んで、目で見て、手でさわってみます。
そして、ほんとうに気に入ったものがあったら、
実際に買ってみて、着てみます。
そして、そのものだけは、自分がコレクションすることを許します。
靴だけとか、帽子だけとか、
吟味して選択したものを、コレクションするのです。
そうしてコレクションしたものは、あたかも自分にとっての小さな美術館のようになるでしょう。
美しいもの、
何年たってもその価値が失われないもの、
希少品、
コレクターズアイテム、
並べて鑑賞しても、毎日あきないような、
いつまでも見ていたいような、
そんなものたちを集めていけば、そうなります。
そこで問われるのは審美眼です。
どれだけ美しいものを見てきたか、
経験してきたかが、
そのコレクションを見ればわかります。
そして、その審美眼を養うのに必要なことは、地道な訓練のみです。
何回かの失敗もあるでしょうし、
いつまでたっても、納得のいくものに出会えない場合もあるでしょう。
しかし、途中であきらめないで、
根気よく続けていけば、
いつしか審美眼は身に着くはずです。
1つのものを見極める目が持てるようになると、
不思議なことに、それはほかの分野にも応用できるようになります。
麻についてよく勉強し、経験したら、
ウールのよしあしも、何となく勘でわかるようになるでしょう。
スニーカーの構造について熟知したら、
どんなヒール靴が歩きやすいか判断するのが簡単になることでしょう。
そしてその領域に達したならば、
選択というものがぐんと楽になるはずです。
そのお店へはいって、ほんの数分で、必要なもの、美しいものがぱっとわかる能力がつきます。
(これはほんとうです)
その領域に達するまでに必要なのは、
あれもこれもと手を出さないこと、
そしてあきらめないでつづけることです。
美しいものを見つける目の養成は、
短期間ではできません。
しかし、美しいものを見た回数とかけた時間分の実力は、
必ずつくものです。
その努力が裏切られることは、絶対にありません。
それは、外からは見えない実力です。
しかし、そんな実力こそが、ほんとうの宝物ではないでしょうか。
なぜなら、それは誰にも奪えない宝物だからです。
自分の宝箱に、誰にも奪えない宝物をふやしていきましょう。
それは後々、役に立つ日がくるでしょう。
なぜなら、
最終的に自分自身を救ってくれるのは、
その誰にも奪えない宝だからです。