子供のころよくはいたショート・パンツ。
あのころ、大人でショート・パンツをはくというのは、
テニスプレーヤーぐらいのものでした。
それ以外、しかも街ではくなどということは、ちょっと考えられませんでした。
コレクションでデザイナーがショート・パンツを提案したことは、
過去何度かあったと思いますが、流行るまでには至りませんでした。
デザイナーが仕掛けても、必ずしも多くの人がそれを受け入れるとは限らないのです。
ところが、最近、ショート・パンツは大人が街で着られることができるアイテムとして、すっかり定着しました。
いい年の大人、それはたぶん30過ぎたぐらいの大人がショート・パンツをはくようになったのは、
たぶん、ケイト・モスの影響が大きいと思います。
彼女のスナップを見ていくと、2003年ごろから、ロック・フェス会場でのショート・パンツ姿があらわれます。
そして、ケイト・モスは今でもショート・パンツをはいてあらわれます。
その結果、ショート・パンツは大人のものとして認められました。
ショート・パンツは、丈という意味ではミニ・スカートと同じですが、
下着が見えそうなミニとは、やはり意味が違います。
階段をのぼるとき、後ろが気になるかどうか、
電車の座席に座ったとき、前の人の視線が行き場に困るかどうか、
その心配がないということは、やはり大きな差なのです。
着こなしにさえ気をつければ、
ショート・パンツはパンツの丈だけの問題として、
大人でも十分はくことができます。
そして、秋冬こそ、大人がショート・パンツをはくのに最もふさわしい季節です。
小学生の女子のように、ショート・パンツをはいて、
ひざ下ソックスをはいただけのスタイルと差をつけるためには、
この冷たい気温がちょうどいいのです。
ショート・パンツをはくことによって、
下半身は、パンツ、靴、それをつなぐものに分割されます。
その分割のバリエーションはいろいろです。
好きなものを選べます。
たとえば、
ニーハイブーツとカラータイツ、
サイハイブーツとストッキング、
バレエシューズと靴と同色のタイツ、
ブーティーと黒いシアーなストッキングなど、
靴とストッキングやタイツを、自分の好きな形とバランスで作ることができます。
ここで大人が気をつけるべきなのはただ1つ。
素肌感はぎりぎりまで減らすこと。
素のままの脚をさらせばさらすほど、
おしゃれからは遠くなります。
見る人が気になるような生の脚は、すべてを幻滅にさせ、
その人の人格すら疑わせます。
なぜなら、ショート・パンツから出た、素のままの脚は違う目的を持っているからです。
(あえてそれがなにかは言いませんが)
ショート・パンツ自体は、大人にふさわしい素材のものを選びましょう。
表革やスエード、
凝ったツイードやラメ入りのウール、
繊細なレース、またはシルバーやゴールドのメタリックなど、
小学生が決してはかないような素材を選びます。
もし、カットオフしたショート丈のジーンズを選ぶのであれば、
その他のアイテムは豪華なものにしましょう。
全体のコーディネイトの中の「はずしアイテム」として、
ショート丈のジーンズを用いればいいです。
子供が着るようなアイテムを大人が着るときこそ、
腕の見せどころです。
自分にとって最適なボトムから靴までのバランスを見つけてください。
ブーツやタイツをはくことができる季節だからこそできるおしゃれが、
そこにはあります。
そして、素の脚を見せないというそのかせによって、
努力と工夫のし甲斐が出てくるのです。
誰でもが、一度は自分が持ち得なかったまっすぐで長い脚に憧れたことがあるでしょう。
そして、多くの人が脚にコンプレックスを持っているに違いありません。
しかし、そのコンプレックスがあるからこそ、人は努力するのです。
知恵をしぼるのです。
楽であるだけというのは、いいことばかりではありません。
そして、コンプレックスも、悪いことばかりではありません。
コンプレックスがあったからこそ、手に入れられるものがあります。
そしてそれこそが、絶対、誰にも奪われない、
そして誰にも傷つけられない、
あなただけの宝物です。