たとえば、オートクチュールのコレクションで発表されたばかりの多くのスタイルは、
誰が見ても文句なく、シックで、スタイリッシュで、完璧です。
その理由は、もちろんデザインが優れているからなのですが、
優れているのはデザインのみでなく、そのスタイリングも同じように完璧です。
通常、デザイナーは服をデザインしますが、
それをスタイルとして完成させるための、
靴、バッグ、その他小物についてはそれぞれデザイナーがいて、
ショーにおいては、それらばらばらのアイテムをまとめてスタイリングする人がいます。
彼らは、いわばあらかじめ1つのテーマに向かって設計されたパーツを、
正確に配置する係です。
これらのパーツは必ず方向性を持ってデザインされていますから、
どれをどう並べても、それなりのスタイルが完成するようになっています。
そしてそれこそが、私たちに「おしゃれ」であると感じさせる点です。
それらはすべて1つのテーマにそって、
色、素材、シルエット、モチーフ、柄が決定されています。
もしそこからはみ出すものがあったら、
最終的にはじかれます。
合わない色、合わない柄は、もうこの時点ではありません。
つまり、おしゃれに見えるためには、1つの方向性なりテーマにそって、
スタイリングを組み立てることが重要なのです。
ほとんどの人は、
いくつかのブランドの、
もうすでに持っている古いアイテムと新しく付け足したアイテムを、
ばらばらの時期に購入したものを使って、
1つのスタイルを完成させようと試みます。
これは、あらかじめ1つの設計図のためにデザインされたパーツを組み合わせるよりも、
はるかに難しい作業です。
もうすでに立派なお城ができるようにすべてのパーツがそろったレゴを組み立てるよりも、
形も色もメーカーも違う、統一規格のないブロックでお城を作るほうが、
はるかに難しいのと同じことです。
それでもなお、スタイリングが1つのテーマにそっているということは、
おしゃれに見せるためのポイントです。
私たちは、あるものの中で、何とかそのテーマを1つにそろえていかなくてはなりません。
そのために使うテクニックが、
この1つのスタイリングの中でネットワーク作りをするというものです。
それは色でも、形でも、モチーフでも、ディテールでも、素材でも、
何でも構いません。
何の工夫もしなければ、
ただ乱雑に集めてきた、意味のつながりのないパーツにすぎない、
それぞれのアイテムをつなぐために、
そこに1つのテーマを入れ込み、
ネットワークとしてつなげることで、
統一感を出します。
例えば、モチーフならモチーフを1つ決めます。
水玉と決めたなら、
頭の先からつま先までのあいだに、水玉モチーフのものをちりばめます。
首元のスカーフ、靴下など、同じ水玉でつなげます。
つなげると言うからには、
それはワンポイントではありません。
最低2か所は同じもので統一します。
たとえば、オートクチュールでしたら、
コートと帽子と靴の素材を同一のもので作ったりします。
そのほかにアクセサリーとしてパールを選ぶのなら、
パールのネックレス、パールの指輪、
パールの飾りのついたバッグをそこへ持ってきます。
オートクチュールのように完璧にはいきませんが、
私たちはこのテクニックを真似ることはできます。
そしてこれをするために私たちがやるべきなのは、
建設的なワードローブ構築です。
気まぐれ、一目ぼれ、衝動買いを繰り返したのでは、
これを作ることはできません。
自分が星の形が好きだとしたら、
星型のピアス、星型のスタッズがついたバッグ、
星の柄のスカーフを探して歩きます。
ターコイズブルーが好きだとしたら、
ターコイズのネックレス、ターコイズブルーのカシミアのストール、
ターコイズブルーのバッグを探します。
そうして少しずつ、自分のワードローブを完成させます。
これができるだけで、
スタイリングは驚くほど洗練されて見えます。
私たちは他人の目に統一感のある印象を与えるだけで、
おしゃれであると認識されます。
私たちが何となくおしゃれに見える、
その何となくは、こういうことの積み重ねによってでき上がります。
欲望のまま集めてきたものでは、こうはいきません。
もともと、1つのものを収集する癖のある人は、
もうすでにできているかもしれません。
しかしそうでないならば、自分のワードローブを見直し、
これから何を買い足せばいいのか考えましょう。
同じものによる統一感は、それを見る相手に、
安心や信頼できる感じを与えます。
おしゃれであると同時に信頼できる人、
そしてそのことによって印象深い人になります。
2回目に会ったときに、
あなたが初回にしていたのと同じ星のモチーフをつけていたなら、
信頼はより深まるでしょう。
恒星のように、動かないというその行為は、
相手の心に深くくさびを打ち込みます。
輝く星であり続けるためにも、
ぜひとも連続し、統一した、ネットワークを作ってください。
その鳥のブローチが、
そのバラの形のピアスが、
あなたを次の世界へつなげていきます。
なぜなら相手はそれを忘れることができないから。
忘れることができないということは、
つながっているということです。