ページ

2015年9月16日水曜日

ファッション・ミニマリスト

美術においてミニマリズムとは、
装飾や色彩などを最小限にし、説明することを排除、
シンプルな形、色のみで表現するスタイルのことです。

ファッションにおいても、このミニマリズムをならって、
デザインのミニマルを追求し、
装飾的な要素を省き、単色、もしくは2色程度で表現するデザイナーは過去にも、
ヘルムート・ラングやジル・サンダーなどがいました。

しかし、ここ最近出現し始めたファッション・ミニマリストとは、
デザイン、色彩のみならず、
その全体量、またライフスタイル全体を通してミニマルを追求する人々です。

彼らの特徴は、まず多くを持たないこと。
生活に必要な最小限の衣服、靴、バッグなどを厳選し、
それのみでスタイルを構築すること。
またその際に、単に量を減らすのではなく、
極力シンプルで、装飾のなされていないデザインを選び、
色数を絞ることです。
しかも同時にそれが、ファッショナブルに見えるよう工夫をこらします。
ファッショナブルかつ量的に最小限、デザイン的にシンプル。
それらが達成されて、初めて彼らはファッション・ミニマリストとなります。

なぜ彼らがこのような方法をとるのか。
理由はそれぞれありましょうが、大きく言えるのは、
着るもの、着ることに人生を邪魔されたくないためです。

多く持てば持つほど、手間と管理が煩雑になり、
多色になればなるほど、装飾的な要素がふえるほど、スタイリングの難易度は上がります。
そのことにより奪われるのはエネルギーと時間です。
彼らは、人の持っているエネルギーと時間を着るもの、着ることに奪われたくはないと考えます。

単に枚数を減らし、シンプルなものを身につけるのならば、
問題はそれほど難しくはありません。
けれども、それをファッションにまで昇華させるとなると、
ただ減らす以外の何かが要求されます。

それぞれの体型やライフスタイルは違いますから、
すべてのミニマリストが同じ衣服をそろえればいいというわけではありません。
減らす、そぎ落とすという作業が要求するのは、
その人がどう生きたいかという態度、
そして人生の目的です。
彼らのスタイルがファッショナブルに見えるのは、まさにそのためです。
人生を貫くスタイルがあるならば、
おのずと選ぶ服、靴、バッグは決まってくるでしょう。

誰かの視点でもなく、
何かのメンバーでもなく、
一人で熟考し、
試行錯誤を繰り返し、
たどりついた結論がスタイルに結び付きます。
それはある人にとっては、タートルネックのニットにタイトスカートかもしれないし、
またある人にとっては、 白いシャツにジーンズかもしれません。

多くのデザイナーが、実はミニマリストです。
白いシャツにジーンズの人、
シルクのシャツにゆったりしたパンツとスタンスミスの人、
同じシルエットのスーツの人など、
彼らをじっくり観察すると、いつあらわれても、とっかえひっかえスタイルを変えてくる
という人は少数派です。
なぜか。
彼らは、着ることに余計なエネルギーと時間を使いたくないからです。
彼らがエネルギーと時間を注ぎ込みたいのは、着ることではなく作ること。
誰かにそのバラエティや多量さを見せびらかすことではなく、
クリエイティビティを発揮するのが人生の目的だからです。

ファッション・ミニマリストになりたいのなら、
まず大事なのは、着ることが人生の目的ではないと知ることです。
服を着るために人生があるのでは、ありません。
人生の目的を遂行するためにファッションは存在します。
手段と目的を取り違えてはいけません。

人生の目的は何なのか。
その答えは、他人が与えてくれるものではありません。
それぞれ一人一人が考え、行動し、導き出されたものでしか、
そこにはたどりつけません。

しかし、そこにたどりついたのなら、ファッション・ミニマリストになるのは簡単です。
人生の目的がわかったなら、
それに必要な衣装も決まってきます。

物語には、まず主人公のテーマがあり、
その他の登場人物がいて、
シーンが決まり、
それに伴って、衣装が決定されます。
あくまでも最初に決まるのは、主人公のテーマです。
その主人公がテーマを生きるために邪魔なものは選ばれません。

そしてその主人公の性格がミニマリストならば、
最小限の衣服を選ぶでしょう。
「性格とは運命である」と言ったのは、ヘラクレイトスです。
人生の目的のためにミニマリストを選択するという性格が、
その人の運命を作ります。
スタイルが確立された人は、ファッショナブルです。

ミニマリストかつおしゃれに見えるためには、
人生の目的のために、自分のスタイルを確立することです。
最初は多くの人に理解されないかもしれません。
結果が出てきたころには、批判の矢面にさらされることもあるでしょう。
しかし、それが通り過ぎたころに、
誰もが感じるようになります。
その人はおしゃれであると。

最後の目的は何なのか。
決してそこから目をはなさず、ひたすら目指すのなら、
誰が何を言おうが、どうでもいいことです。
嫉妬しているだけの外野や観客は、到底そこまでやってきません。

人生の目的を見据え、
時間とエネルギーを注ぐ、ゆるぎないその姿を
人々は記憶にとどめるでしょう。
ファッションにわずらわされないファッショナブルな人たち、
それがファッション・ミニマリストです。


★ こちらのブログ及びメールにて個人的なファッションのご相談、ご質問は受け付けておりません。