たとえば、補正下着の説明で、誇らしげに「立体裁断です」などと書いてあります。
立体裁断についてよく知らない場合、何だかそれが、たいそうすばらしいことのように感じられます。
では、立体裁断とはどういうものなのでしょうか。
立体裁断と対になる言葉として、平面裁断というものがあります。
これは言葉どおり、平面上で裁断、つまり、建築の地図のように、洋服のパターンを机に置いた紙で作成し、それをトワルといって、シーチングという生なり色の生地に写し、1度組み立ててみて修正していくやり方です。
裁断というのは、カットということで、パターンのことをカッティングなどと表現することもあります。
立体とは、そのカットを、紙の上ではなく、ボディ(洋裁で使う人体模型)の上に直接シーチングをのせて作っていく方法です。
平面裁断の場合は、原型という人の体のプロトタイプの型を使い、その原型の上にゆるみなどを計算してのせていきながら形を作りますが、立体裁断の場合は、計算はせず、パターンを作る人の感覚で、これぐらいでどうだろうかと決めながら造形していきます。
こうやって書くと、いかにも、立体裁断のほうが人体にフィットしていそうだと感じるかもしれませんが、日本の企業のやり方は、1度立体裁断で作ったパターンを、必ず平面で修正していきますので、感覚だけでパターンができるというわけではありません。
また同様に、平面裁断の場合も、組み立ててみたものを、やはりボディの上で修正していきますので、最終的には、その両者とも、さほど変わりがないものになります。
日本の既製服の多くは、細かいサイズ設定がなされていて、たとえばバストのゆるみは何センチ以上、アームホールの大きさは何センチなどと決められています。ですので、自由に立体裁断でパターンを作ったとしても、最終的には、そのプロトタイプに合うように、修正をかけられます。
ですから、立体裁断と書いてあるからいいパターンだとか、平面だからだめだとか、そんなことはないのです。実は、問題はもっと違うところにあるというのが、日本のパターンです。
日本のパターンについては、次回に続きます。