実際には、グレイッシュ・ベージュを誰かが略して呼んだものだと思いますが、
要するに、グレイがかった、ベージュということで、
イエローに黒を混ぜ、グレイッシュにした色全体のことを呼んでいます。
これは鞄や靴といった、皮革製品から広がったのではないかと思いますが、
今年になって、普通の布帛や、ニットといった、日常に着るものまで、
このグレージュのものが増えてきました。
通常ですが、
大体、アイテムをそろえるとき、黒系統、または茶系統に統一すると思います。
もちろん、茶も、黒も、ということもあり得ます。
そんなとき、このグレイがかったベージュはとても便利です。
というのも、茶にも、黒にも、どちらにも自由に合わせられるからです。
本当は、黒なら黒、茶なら茶と、カラースキームを統一して、色目を少なくするほうがエレガントです。
しかし、洋服は色だけでコーディネイトを作るわけではありません。
シルエットやバランス、気候による寒さや暑さ、どういった場面かなど、
考慮する点がたくさんあります。
そうなると、鞄や靴、小物など含めて、必ずしも黒だけ、茶だけでコーディネイトすることは難しくなります。
そんなとき、役に立つのがこのグレージュのものです。
グレイッシュなので、当然、グレーとのなじみもいいです。
ダークな黒や茶ではなく、ライトグレーからダークグレーにかけては、とても上品に見えます。
また、地の色はイエロー・ベースなので、
アジア人の肌にもよく似合います。
顔の近くに持っていっても、顔色がよく見える色です。
また、髪の毛をブラウンに染めている場合も、よく合うと思います。
今年あたりから、ニットやコートなど、このグレージュのものが多く出てくるでしょうから、
茶も黒もグレーも好きという方には、もってこいの色だと思います。
例えば、黒のブーツに、ライトグレーのニットとスカート、そしてグレージュのコートに、
アクセサリーはパールなら、華やかで上品、しかもカラースキームもそろっています。
また逆に、茶色のコートにも黒のコートにもあわせたい靴や鞄が欲しいとき、
グレージュを選べば、どちらにもコーディネイト可能です。
1つ注意点は、グレージュと呼ばれる色には、非常に幅があります。
黄色が強いもの、グレーが強いもの、明るいもの、暗いものなど、
名前だけで判断してしまうと、思ったものと違う場合もあります。
ですから、買う場合も、グレージュとついているから安心しないで、
きちんと自分が合わせたい色と合うかどうか確認しましょう。
繊細な色ですので、丁寧に選ばなければなりません。
色選びは楽しい半面、実はとても厳密なものです。
いつも言っているように、
あのブランドと、このブランドのグレージュは違います。
作る人の数ほど、色もあります。
その膨大な色の海から、自分にぴったりのグレージュを見つけるのは、
本当は、そんなに簡単な作業ではありません。
海も、砂浜も決して一色ではないように、服についた色も、すべて違います。
まずは自分が求めているのは、どんな具合の色なのかを突き止める。
そして、ぶれいない気持ちで、リラックスして、色の海からぴったりの色を見つける。
そうすれば、それだけでおしゃれに見えます。
それと、色のハーモニーというものは、心を落ち着かせるものです。
色がぐちゃぐちゃだと、心もぐちゃぐちゃになります。
色がぴたっと決まると、心も揺れることなく、ぴたっと止まります。
それは正しく使ったときの色の力です。
力はよくも、悪くも使えます。
どうせなら、よい方向に使いましょう。
色の魔法で、揺らがない心を手に入れたら、
どんな告白も交渉も可能です。
うまくいくことは、間違いありません。
☆写真:マンセルのカラーチャートのイエローのページ。左2列の真ん中辺が、グレージュと呼ばれている色です。