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2011年10月17日月曜日

後ろ姿にご用心

ファッションレッスンにおいて、私はよく、他人はあまりどんなボトムをはいているか、さほど注意深くは見ていない、だから、ワードローブ数では、ボトムはトップスの数より少なくて大丈夫、と説明しています。
しかし、まったく見てないわけではありません。
確かに見ています。見ているのですが、それはデザインを見ているわけではないのです。
ものすごく印象的な柄のスカートや、尋常でない丈のスカート、またはあり得ないまた上の長さのパンツなど、あまり見たことがないようなデザインのボトムの場合は別ですが、そうでない場合、一般の女性は、デザインに目はいきません。
もちろんデザインやファッションに興味のある方、もしくはそれが仕事の方はデザインをチェックします。けれども、普通の女性が興味を持つのは、デザインではないのです。
では、何を見ているかというと、
まず、第一に、下着のラインが出ていないかどうか、
それから、スカートから下着が見えそうか、見えそうでないか、
スリップが出ているか、出ていないか、
タイトスカートのヒップラインがきつきつなのか、ゆるゆるなのか、
ウエストとの上のお肉が段になって乗っているか、乗っていないか、
ファスナーがちゃんとしまっているか、
スリットから見えるストッキングが伝線しているか、していないか、
お尻の肉がたるんでいるか、たるんでいないか、
などなどです。

そして、それらの点を発見すると、すぐに頭の中で分析を始めます。
どうして、こんなに下着の線が出てるの?
だいたい、そのパンツ、サイズが間違ってるんじゃないかしら?
ファスナーがちゃんとしまらないってことは、太りすぎね。
そのタイトスカートはこの人に無理だと思うわ。
そんなにスカートの下からパンツが見えるのが気になるなら、そんな短いスカート、はかなきゃいいのに。
スリットの縫いどまりが、切れちゃってるのに、何で気がつかないの?
この人、3人ぐらいの子持ちかなあ。
こんなミニスカートはくなんて、せいぜい20代までよね、でもこの人、どう見たって40過ぎてない?
どうしてガードルはかないの!
などなど、要らぬ妄想で頭の中がいっぱいになります。
この妄想は見知らぬ人を見た場合も、自動的に始まってしまいます。
知っている人だったら、気になって気になって仕方ありません。
言うべきか、言わないほうがいいのか、余計な悩みも生まれます。

これはなぜなのか、私にもわかりません。
生存競争に勝つためのライバル心を刺激されるためなのか、
それとも、単に好奇心のせいなのか、定かではありません。
しかし、どういうわけか、そこにスイッチが入ってしまうと、とまらなくなるようです。
そして、デザインなど、どうでもよくなってしまいます。
それよりも、そのヒップと服の関係のほうが気になって仕方ないのです。

この視点は、男性の視点とは異なります。
同じ女性を見ても、男性と女性とでは、持つ感想は違うのです。

自分が関心を持って見てしまうということは、自分も同じように見られているということです。
大いに自分の後ろ姿に注意しなくてはなりません。

もちろん、他人に見てもらっても構いません。
だけれども、旦那様はあてになりません。
彼らの、「うん、大丈夫、大丈夫、早く出ようよ」なんて言葉は、
この世で一番信頼できません。
上にも書いたように、男性の視点は違うところへ誘われてしまうからです。
お母さんやお姉さん、妹さんでも構いません。
彼女たちも、かなり厳しく言ってくれるでしょう。

しかし、だれよりも厳しいのは自分自身です。
あなたが、誰かほかの女性の後ろ姿をチェックするときの視線でもって、
自分の後ろ姿をチェックするのが一番いいのです。
どれだけ、自分の後ろ姿を客観視できるかの問題です。

どこかへお出かけするときは、ぜひ自分の後ろ姿を鏡でチェックしてください。
この世で一番厳しいあなたが、一番厳しく自分をチェックできたら、
安心してお出かけできます。
そうやって、家を出たら、今度はほとんどの女性がこう思うでしょう。
「あの人、後ろ姿完璧ね、どうしたらああなるのかしら?教えてほしいわ」と。
それは辛辣な批判ではなく、羨望のまなざしに変わります。