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2011年10月24日月曜日

リバーシブルって、どうなんでしょう

リバーシブル仕立てというものがあります。
表でも、裏でも着られるよという、一見、何だかに度お得な感じがする仕立てです。
皆さんも、このお得感にひかれて買ってみたことがあるのではないでしょうか。
なんせ、1枚で2枚分楽しめるのですから、こんないいことはありませんね。
ではなぜ世の中の服がリバーシブルだらけにはならないのでしょう。
リバーシブルにすることで、何か重大な欠点が生まれないのでしょうか。

どの洋服も立体的に作られています。
たとえば、冬物のジャケット、コート、スカートの場合、表地に裏地がついています。
この場合、考えれば当たり前のことなのですが、表地のほうが体の外回りにくるわけで、
つまり、その分だけ生地が大きくなっています。
一方、裏地は、より体に近いため、表地よりは生地を若干ですが、小さくします。
表と裏でできている服の場合、表裏、生地は同形ではありません。

また、服には襟がついています。
襟も、表側と裏側がありますね。見えるほうが表、見えないほうが裏です。
ジャケットはもちろんですが、ワイシャツさえも、襟の表と裏では、表の方が数ミリ大きくできています。そして、裏側を表から見えないように作ります。
(これを、洋裁用語では、ひかえる、と言います)

また服には、特に襟の部分など、芯がはってありますが、これも表襟と裏襟では、芯を変えます。そして、あくまで着た時に、襟がひっくりかえらないように、きちんと体に沿うように成形します。
こうして、服は立体的に作られていきます。
裏地は、単なる表地の生地違いではないのです。
またジャケットなどは、縫っていく工程の中で、より立体的になるよう、裏と表を操作して、さまざまな工夫をします。そうして初めて、体に沿った形になっていきます。

リバーシブル仕立ての場合、この表地と裏地の差を無視することになります。
両面で着られるようにするために、両面とも表地扱いです。
また、立体的に作る工程も飛ばします。

例えば、リバーシブルのジャケットを着た場合、袖口や襟から、下側の布が見えるでしょう。
「ひかえる」という工程が入っていないため、当然のことながら、見えてしまうのです。
また、襟はきちんと返るよう、見ごろは体にそうような成形はしてませんから、襟も返りませんし、体にぴったり沿う感じもなくなります。

このように、一見、お得に思えるリバーシブルですが、実は洋服の重要なかなりの部分の要素を備えていない仕立てなのです。

では、どんなものだったら、リバーシブルに向いているでしょうか。
まず第一に、ただの平らなもの。例えば、両面違う柄のマフラー。
これは何の問題もありません。立体ではありませんから。
次に、平面に近い形になる、巻きスカート。
これも、ダメージは少ないほうだと思います。
その次は、襟やそでのないベスト。
身ごろだけなので、かろうじて許されるのではないかと思いますが、それでも裾や袖口の裏側の部分は見えてしまいます。
あと、袖があるものとしては、完全な1枚仕立てのもの。つまり、裏のないものです。
Tシャツを裏返して着ても、縫いしろを除けば、シルエットに問題がないのと同じです。

それ以外のリバーシブルのものに、美しいシルエットは望めません。
リバーシブルの帽子でさえも、リバーシブルにするために、頭回りに入れるテープを除いてあることが多いです。もうそれだけで、頭へのおさまりは悪くなります。

もしリバーシブルのものを買う場合は、これらのことを考慮しましょう。
二兎追うものは一兎をも得ずのことわざのように、
2倍得しようと思ったのに、結局、ほとんど着なかったでは、
余りにもったいないですから。