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2012年11月26日月曜日

透け感

今年、シルエットが変わってしまったことは、たびたび説明してきましたが、
変わったのはシルエットだけではありません。
最終的にでき上がる印象に、軽さが求められるようになりました。
軽さを表現するにはさまざまな方法があります。
まず1つは抜け感、
次に明るい色を使うこと、
そして、もう1つが、透け感のある素材を使う方法です。

ビッグ・シルエットで、しかも布の分量自体もふえてきた今年から、
軽さを表現するために、多くの透けている素材が使われるようになりました。
それは、
レース、
シフォン、
オーガンジー、
すかし編みのニットなどです。

布が分量がふえると、どうしても印象が重くなってきます。
実際、布自体がふえているのですから、着ているものも重くなるでしょう。
けれども、これからは、それがあたかも軽いかのような印象を与えるように見せることが重要になってきます。
そのために、全体のコーディネイトに何か1つ、透けている素材のものを投入するだけで、印象が軽くなり、今風になります。
それはブラウスでもスカートでもスカーフでも、何でも構いません。
ほんの少しの味付けで、全体の印象を変えることは可能です。

透け感のある素材は、同時にロマンチックも表現できます。
たとえば、トレンチコートもレースで作れば、ロマンチックです。
どんなものでも、ロマンチックにしてしまう力が透け素材にはあります。
軽さ、ロマンチック、どちらもこれからの時代にふさわしいものです。

例えば、透け感は黒一色のコーディネイトを作るときにも力を発揮します。
黒はそれ自体、重く見える色ですが、
ブラウスをオーガンジーにするだけで、軽くすることができます。

透ける素材というものは、肌そのものを見せません。
透けるのではなく、肌そのものを見せたら、もっと軽くなるのではないかと考えるかもしれませんが、
それは違います。
天女を思い出してください。
天女は羽衣があるからこそ、空を飛べるのであって、
裸では空を飛べません。
透けている素材を身につけることによって、軽くなり飛べるのです。
裸では、重すぎるのです。

そしてもう一つ、透けている素材のメリットは、
そこはかとなく色気を感じさせることができることです。
これも、やたらと肌を露出した、あからさまで即物的な色気とは違います。
隠しているからこそ、色気が出ます。
見えそうで見えない、その葛藤がセクシーなのです。
全部見せてしまったら、わかってしまったらだめなのです。

前から何度も書いてますが、ファッションで重要なのは印象です。
ですから、軽さと言っても、実際に体が軽い必要はありません。
いかに軽そうに見せるか、それだけの問題です。
体重が実際に重い方は、この透け感を大いに利用したらいいと思います。
西洋絵画に描かれた女神たちの実際の体重は、重いでしょう。
けれども、透けているドレープの衣装を身につけているからこそ、その体重を感じさせません。
これが、真っ黒で固いウールのコートだったら、本当に重く見えてしまいます。
見た目の軽さが重要です。

今風に見せるために、すべてのワードローブを総入れ替えする必要はありません。
そのときそのときでポイントがあります。
それをうまく取り入れていけば、それらしくなります。
その1つが透けている素材だということです。
来年の春夏あたりから、多くのアイテムが市場に出てくることでしょう。
そうすれば、今よりもっと自分にふさわしいものが選べるようになります。

ロマンチックで、そこはかとない色気、はかなく壊れそうな繊細さ、優しさ、
透けている素材には今まで私たちがあまり重要視していなかった魅力がたくさんあります。
決して、強い女性ではありません。
戦う女性でもありません。
けれども、そこには甘い夢と、癒しの力があります。
忘れてしまった夢を取り戻すように、レースを選んでみましょう。
オーガンジーのブラウスに袖を通してみましょう。

眠り姫が長い眠りから目覚めるように、
その夢は目覚めるかもしれません。
そして、それが夢ではなくて、現実になるのだと、再び確信できるかもしれません。
それは効率でも、実用でもありません。
何の役にも立ちません。
けれども、繊細な弱いものだけが持っている、はかない力をあなどってはいけません。
イマジネーションの力を馬鹿にしてはいけません。
なぜなら、それこそが、あなたを 夢見た場所へ連れて行ってくれるのですから。