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2014年9月22日月曜日

リバイバル

2013年を過ぎたあたりから、
各年代のリバイバルが盛んになりました。
主に60年代、
70年代、
80年代、
90年代がリバイバルしています。

ファッションに限らず、芸術全般は、過去のスタイルを取り入れて発展していきます。
絵画におけるラファエル前派は、ラファエル以前の絵画のリバイバル、
ゴシック ・リバイバルは、ゴシック建築の復興運動です。
ともに19世紀に起きた運動ですが、
社会が行き詰ると、アーチストたちは、
過去のアーカイヴに目を向けるようになります。
つまりそれは、あたかも過去のほうが優れていたかのように見えるからです。

今がよければ、過去を振り返る必要はありません。
過去に何かを求めざるを得ない状況があるからこそ、
私たちは古さではなく、新しい発見をアーカイブに求めます。
そう考えると、21世紀に入ってまだ10年足らずではありますが、
ファッションは行き詰っています。
そして、この行き詰まりから脱出するまでは、
さまざまな年代のリバイバルが繰り返されることになるでしょう。

実際のところ、
リバイバルと言えども、
その年代そのままのスタイルの再現ではありません。
それは繰り返しではありますが、
同じ軌道をめぐっているのではなく、
未来に向かってらせん状に発展していきます。
ですから、70年代リバイバルだからといって、
70年代に着たそのものを、そのままのスタイルで再現すれば、
それが今風になるかといえば、そうではありません。

ではどうすればよいのか。
私たちが何を見て、これは70年代だ、80年代だと言うのかといえば、
それはシルエットとスタイリングです。
その他、色と素材もありますが、
主なものはシルエットとスタイリングになります。
繰り返されているのは、
70年代のシルエットであり、70年代風のスタイリングです。
ですから、リバイバルがあらわれて、
それを取り入れたいのだとしたら、
70年代の服をそのまま着るのではなく、
シルエット、またはスタイリングを取り入れればよいのです。

70年代だとしたら、
シャツの上にニットのベスト、ボックスプリーツのスカートにハイソックス、ローファーの学生風スタイル。
または、ヒッピー風のフリンジがついた革のジャケットにマキシ丈のドレスやスカート、
それらに底に厚みのあるブーツやサボの組み合わせ。
80年代だったら、
とにかく何もかもがビッグ・シルエット。
自分にぴったりのサイズのものよりワンサイズ上のものを選び、
シルエットを大きくした分、アクセサリーは大きく、靴はごつく、フラットに。
黒くごついメンズライクの靴に黒いソックスをあわせるのも80年代のスタイルです。
それらは新しいコレクションを見てもわかりますが、
古い映画のファッションを参考にすることもできます。
60年代だったら、「シェルブールの雨傘」や「おしゃれ泥棒」、
70年代だったら、「追憶」や「アニー・ホール」、
80年代だったら、「マドンナのスーザンを探して」や「プリティ・イン・ピンク」がお勧めです。

これらの雰囲気を出すためには、何もすべて新しくする必要はありません。
今まで持っていたものを新しく組み合わせ直してみるだけでも、
十分に雰囲気を出すことは可能です。
たとえば、タイトスカートにヒールのパンプスをあわせていたものを、
スニーカーとソックスに変えてみる、
スウェットシャツにロングスカートをあわせてみるなど、
それまではしなかった、しかしほかの年代ではしていた組み合わせをしてみるだけでも、
十分に雰囲気は出せます。

また、何か買い足すにしても、
たとえば、80年代風にしたいのだったら、
黒いソックスを買い足す、
スウェットシャツは大き目のものを選び、ビッグシルエットを作るなど、
今まで買っていたアイテムの色を変えたり、
サイズを大きくしたりすることで対応することができます。

注意すべきなのは、
70年代リバイバルだからといって、
70年代のものを古着で全部そろえたりしないようにすることです。
実際やってみればわかりますが、
そんなことをしてみても、今の気分にはなりません。
必ずどこかしら進化しなければ、それは今ではありません。

進化したのは何でしょうか。
進化したのは、素材であり、技術であり、洗練の度合いであり、そして何よりも自由度です。
60年代よりも70年代に、
70年代よりも80年代に、
80年代よりも90年代に大きく変わったもの、
それは女性の自由の範囲です。
70年代、ジーンズで大学に通うだけで非難されました。
しかし、今では高級ホテルにさえ、ジーンズでチェックインできます。
スニーカーは、大人のはくものではありませんでしたが、
今では、大人がこぞってスニーカーを選びます。
ファッションの中の不平等や差別の解消と、
女性の自由の拡大は相関関係にあるのです。
ですから、決して過去に戻ってはいけません。

デザイン・ソースとして、アーカイブを参照しつつ、
その自由は決して手放さない。
70年代の若者が、そのスタイルでは行けなかったところへ、
今の私たちは行くことができます。

ジーンズにダイヤモンドをあわせることも、
ドレスにスニーカーにあわせることも、
今の私たちには可能です。
それは大きな進化であり、進歩です。

過去の豊富なアーカイブを自由な心で再現する。
もはやここには禁止事項はありません。
なぜならそれは戦いによって勝ち取ってきたものだからです。
決してそのことは忘れないように。
今こうして自由でいられるのも、
タブーを覆し、非難する声にも負けなかった、
先駆者がいてくれたおかげなのです。



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